2-5.質問
別荘から少し離れた場所で僕らは花火を始めた。
よくある花火セットを4人で自由に分けて、自由に火をつけて、自由にはしゃぐ夜。
大人もいない。
夏の暑さも感じない。
虫除けスプレーが僕らを虫から守り、世界で僕らだけが自由に思えた。
炎色反応の話を茂木がしているが、誰も聞いていない。
花火の美しさを語るのに、化学の知識が必要だろうか、と僕は思った。
高嶺さんの美しさや、加代子さんの可愛さをDNAレベルで解説する必要はないはずだ。
茂木よ、そんな野暮なことを言うからモテないのだ!
僕は茂木に、花火を向けて近づいた。
「おいっ!危ないだろ!」
危ない事は重々承知である。
たぶん、昔の僕ならこんな事は絶対にしなかった。
なぜだろう、なぜか僕はそんな事をして、笑っていた。
笑っていると、今度は加代子さんが僕に花火を向けてくる。あっ危ない!
「皆さん、人に向けてはいけませんよ」
僕らを制する高嶺さん。
って、高嶺さんまで僕に花火を向けている!
危ないじゃないか!
そんな可笑しさに、僕らは幸せを感じていた。
こんな夏を過ごせるなんて、僕は思ってもいなかった。
「ハカセ、ちょっと」
加代子さんが僕を呼ぶ。
何故か知らぬ間に、高嶺さんと茂木のいる場所から少し離れた。
2人の手持ちの花火がシュババと音を立てている。
「私たち、付き合ってるのかな?」
僕はひどく動揺した。
さっきまで、加代子さんが一輪の花であると考えていた僕だが、なぜか、すぐに答えが出て来ない。
何故だろう、誰かとお付き合いするのが初めてだからなのか。
いや、違う。
なぜか僕は、遠くにいる高嶺さんと茂木を見て、
茂木に嫉妬していた。
茂木ごときが、高嶺さんとキャッキャウフフしているのだ!
許せるものか!
とにかく、目の前の加代子さんに、何か言わなければ・・・加代子さん!?
暗がりの中、花火の明かりで加代子さんの表情が見える。
泣いている。
僕はその涙の意味がよく分からない。
まだ何も言ってないのに、どうして泣くんだろう、加代子さん。
僕はどうすれば良いんだろう、何の声をかけてあげれば良いのであろう。
「どうして、泣いているの?」
僕は聞いてみる。
「質問を質問で返さないでよ」
何も答えられない僕の目の前に、茂木が飛ばしたロケット花火が近づいてくる。
「悪い悪いー!そっちで何やってんだよー!」
僕は茂木に助けられた。
僕は加代子さんを置いて、茂木の方へ向かう。
もう、何も考えたくなかった。
そこからは、気が気ではないまま、何も覚えていない。
無言の部屋で茂木と一夜を過ごし、朝方に合流した坂山さんの車に乗った。
加代子さんは僕の手を握っていない。
気が付けば、家に着いていた。




