2-4.一輪
高嶺家別荘、そのベランダにてバーベキュー。
というより焼肉。排煙ダクトが強力で、煙をみるみるうちに吸い込むのでバベキュー感は無いと思う。
僕の隣に茂木が座り、網を隔てて向かい側には加代子さんと高嶺さん。
坂山さんが急用でとんぼ帰りした中、僕ら4人は取り残されたまま、バーベキューを始めた。
おそろしく会話が少ない。
それが恐ろしい。
肉の味や、好きな食べ物など、
どうでもいい会話ばかりだ。
それにしても、肉を丁寧に頬張る高嶺さんは可愛い。
やはり、可愛い。
いやいや、隣の加代子さんも負けていない。違うベクトルの可愛さがある。
ああ、僕はそんな加代子さんとキスをしたのか。
正直僕はそれで頭が一杯だった。
未遂におわったが、キスのその先だって、やろうと思えば出来るのである。
僕はインターネットでその先の事を調べ上げ、準備は出来ているつもりだ。
隣の茂木を見る。雑に肉を頬張る茂木。
ふっふっふ。。。
茂木よ。。。
お前が一段とガキに見えるぜ。。。
「実は、花火も用意してました」
高嶺さんが話題を変える。
「すてき」
加代子さんが答える。
夏休みに、男女で花火!!!
僕の人生は、アニメ鑑賞とカードのデッキ構築で浪費していた時代を抜け、今、表舞台に立っている!!!
それに、お、おにゃのことキスもしたのだ!
「花火楽しみだなー!」
僕も応える。
「夏休みも中盤だけど、最高の思い出が出来た!」
茂木が語る。まだ花火をやっていないぞ。
そうか、夏休み中盤。
あれ、来週には七星が研修を終えて帰ってくるではないか。
僕は加代子さんとのキスを経て、もはや自信がついていた。
タイムリープなど、ラブアシストなど、要らないのかもしれない。
七星とは恋仲にはなれないし、高嶺さんは未だよく分からないし、そうなれば、僕に好意を持つ加代子さんしかいない。
幼馴染の可愛い子とゴールインの人生も悪くないじゃないか、僕。
高嶺の花より、身近に咲く綺麗な一輪の花に、何故僕は気づかなかったんだ!
焼肉だってそうだ!
高いお肉もいいけど、安い肉をたくさん食べるのもアリじゃないか!
僕は肉食獣だ!!!!
一通り、焼肉を終えて、だらだらしよう、という事になった。
僕と茂木、加代子さんと高嶺さんは別々の部屋で、ちょっとだけ休む事になった。
気が付けば16時。
隣の部屋ではガールズトークが繰り広げられているかもしれないが、僕と茂木はカードゲームで盛り上がっていた。
「なぁ、加代子ちゃんの事、どう思ってるんだよ」
茂木が語り始めた。
「なんだよ急に」
僕は手札のカードを眺める。
「いい事教えてやるよ」
「なんだよ」
「お前ら、両想いだぞ」
そ、そうだった、茂木には、対人関係が見える力があるのだ。
「ふ、ふ〜ん」
確信が確証に変わり、僕は慌てていた。
これはつまり、アレもアレ出来るではないか!
「茂木は誰が好きなんだよ」
僕は聞いてみる。
「教えねーよ」
切り札を出して来た。
僕はゲームに負ける。
「なんだよー」
茂木のことだから、高嶺さんが好きに違いない。だからこそわざわざ、僕と加代子さんが両想いである事を伝えてきたのだ。
もう、好きにしたまえ茂木くん!
僕は安い肉を楽しむ!
君は手に入らない肉を求め続けるのだ!




