1-3.御二方
「今日は一段と元気がないな?」
目の前の茂木がテーブルのカードを指差す。
僕と茂木、そして暇だからとついてきた七星の3人でカードショップにいる。
僕と茂木がテーブルを挟んでカードバトルを行い、その中心で七星が腕を組みながら、ルールなど知らないくせに出されたカードに対してリアクションを取っている。
「確かに。どうしたのよアンタ」七星が僕を突っつく。
お付き合いが終わったのに、馴れ馴れしい奴め!でもちょっと嬉しい。
僕はちょっと胸が痛い。藍田加代子という名前が、僕の知る加代子さんなら、どうすれば良いか分からない。
「今日、来なかった、転校生、僕の中学の同級生かもしれないんだ」
「へぇー。ってなんでアンタが元気無くなるのよ。女の子だから緊張してるの?」
ニヤニヤ笑いながら七星が返す。
「そんな簡単な事じゃないんだ」
何かを察した茂木が話題を変える。
「もうひとりの転校生も、不思議な感じだよな〜」
絵留くんの話だった。
「だよね〜。言葉遣いも綺麗だし、不思議クンって感じ」
七星が喋る。不思議ちゃんが何を言うのだ、と僕は思う。
時間をテキトーに潰し、店を出ると、絵留くんと美和子さんに出会った。
「こんにちは、御三方」
絵留くんの丁寧な言葉遣いは不自然さしか感じられない。
「七星ちゃん、まだコイツらと、“こんなとこ”で遊んでるわけ?ちょっとヤバくない?」
美和子さんは七星に喧嘩腰だ。
「え?ダメなの?」
七星は理解していないようだ。
やはり、僕や茂木のような人種と七星とでは、違いがある。美和子さんの言いたい事も分かるが、わざわざ口に出す必要は無いように思える。
「え、だってキモいじゃん」半笑いで美和子さんが語る。何をこんなに苛立っているのだろうか。
「何がキモいの?」
七星が素直に質問する。黙る僕と茂木。絵留くんは表情を変えずに2人の口論を見ている。
「そんなのも分かんないの?やっぱ七星って頭オカシイよね」
「喧嘩は止しましょう。御二方。俗に言う、非常に気まずい空気ですね」
絵留くんが急に制止に入る。
「そ、そうだよ!ねぇ!みんなで仲良くしよう!」
思いもしなかった言葉が僕の口から発せられた。
「七星ちゃんを無理に誘ったのは俺なんだー!ごめんごめんー!」
茂木も急に声高にフォローを入れる。
少しの間を開け、美和子さんが喋る。
「だよねー!ごめんごめん!!!そういうノリなだけだよね?七星?」
「そうだよー!みんなを驚かせたらダメだよミーコ!」
絵留くん以外は顔をくしゃくしゃにして笑った。
その後、それぞれの家の方向に向かって帰る。僕と七星は2人になる。
「な、なんで美和子さんと仲が悪いの?」
「ミーコはトウマが好きだからね」
それで七星が嫌われるのか?僕には意味が分からない。女心は複雑だ。
「なんで美和子さんと絵留くんが一緒にいたんだろう?」
「知らなーい。トウマから絵留に乗り換えたんじゃない?」
そのまま自宅前に着いた。
「また明日」
七星は斜め前の加津代食堂に入っていく。
やはり、七星が帰宅する前から、加津代食堂の2階の明かりがついている。
僕は知らないふりをして、自宅に戻る。




