坂道
後期のオリエンテーションも終わり、日常は講義で埋め尽くされていた。前期と後期での違いはいくつかあった。前期の講義形態が縁覚授業が大半を占めていたのに対し、後期の授業形態は殆どが対面授業となり片手で数える程度となっていた。また、前期は講義後の出席状況の把握を兼ねた確認テストで済んでいたものが後期からは名刺サイズよりも少し大きいくらいの用紙に感想を書いて提出する授業も増えてきていた。友人ができるかどうかの心配から解放されたばかりなのに、”感想”という言葉に私は頭を抱えていた。
卒業要件単位数を満たすため、同じ学科の学生とは履修している授業が被るもので、オリエンテーション後も澄麗ちゃんとは毎日講義の間の空き時間に会話したり、教室移動の際に一緒に行動するようになっていた。澄麗ちゃんは私のと同じ韓国人アーティストグループが好きだったようで、このオフラインでのコンサートが再開されたら一緒に行こうと提案してくれる程に仲が深まっており、毎日学校から駅までの時間を一緒に過ごすようになっていた。ただ、せっかく仲良くなった友人に「感想をどう書いたらいいのか分からない」なんて相談したら距離をとられてしまうのではないだろうかとか、せっかくできた友人を失ってしまうのではないだろうかといった不安に駆られて相談できずにいた。
大学へのアクセスは駅から徒歩20分から30分といったところで、その道中はずっと坂であり往路は上り坂で、おしゃれよりも楽さを優先したスニーカーを選ぶことが多い。この道を半年ほど前はローファーで歩いていたと思うと過去の自分を称賛したくなる。それほどにこの坂道は辛い。ここに学校に行きたいという気持ちがなければ猶更なもので、今は澄麗ちゃんが居てくれるから楽しく感じれている大学生活も前期の間はこの坂道を上りながら泣き出したくなる感情を必死にしまい込んでひたすら足を動かしていただけだった為、澄麗ちゃんという存在によって変わった今を大切にしていきたいと思う半面、澄麗ちゃんを縛ってしまっていないだろうかとも思っていた。他愛のない話をしながら今日も駅に向かう。この時間が日常からなくなってしまわないように。




