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異世界美容外科医 ~美しくなりたい彼女たちと、俺のクリニック経営~  作者: シャロン=ミ


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45話 新時代の幕開け――美しくありたいと願うすべての人へ

「第三審査【治療技術】、ならびに第四審査【術後管理】——いずれもAIZAWA側の圧倒的勝利と判定する!」


監察官長の朗々とした声が響き渡ると、大聖堂前の広場を揺るがすほどの拍手が巻き起こった。


精密な『Z形成術』と適切な術後ケア計画の提示により、第三・第四審査もAIZAWA陣営の圧勝に終わった。 五つの検証項目のうち、すでに四つを連勝。ギルド側がどれほど弁明しようとも、覆しようのない差が刻みつけられていた。


「これより……最終審理、第五審査に入る」


監察官長が静かに会場を見渡す。 第五審査の項目は——【治療結果】。


単に手術が成功したか否かではない。その治療によって「患者がどのように生きられるようになったか」という、医療の真価そのものを問う最終審査であった。


審査員席から、一人の高位監察官が雄介に向かって問いを投げかけた。


「相澤殿。貴殿の施術により、患者の瘢痕拘縮が著しく改善されたことは明白である。……だが、ひとつ問いたい」


監察官は真剣な面持ちで、広場の中央に立つ青年を見つめた。


「貴殿の行っている『美容形成』とは、命の危機に瀕した者を救う緊急の医療ではない。歪みを整え、見た目を美しく仕上げる……それは道楽や贅沢の域を出ぬものではないのか? 果たして、それを『命を救う尊い医療』と同列に語って良いものかどうか」


「美しさ」も医療なのか——。 会場に緊張が走る。これこそが、治癒術師ギルドをはじめとする既存の権威が、AIZAWAを「邪法」「軽薄な街医者」と見下してきた根本的な理由でもあった。


その時、審問壇の上に立つ青年が、自ら一歩前へ踏み出した。


「監察官様! 僕に……僕に言わせてください!」


青年はまっすぐな目で審査員たちを見上げた。その顔は、先ほどまでの引きつれが嘘のように滑らかで、ハッキリとした表情を浮かべている。


「以前の僕は……自分の顔が恐ろしくて、鏡を見ることすら嫌でした。外を歩けば哀れみや気味悪がられる視線に晒され、食事も満足にできず、部屋に閉じこもって死んだように生きていたんです」


青年は胸に手を当て、感極まったように声を振るわせた。


「ですが相澤先生とAIZAWAの皆さんは、ただ傷の痛みを消すだけじゃなかった……! 僕がもう一度、人前で胸を張って笑えるようにしてくれたんです! 奪われていた『人間らしい心』を取り戻してくれたんです!」


青年の魂の叫びが、広場の隅々にまで届く。


雄介は青年へ優しく頷くと、監察官たちに向き直った。


「命が助かれば……それで治療は終わりですか?」


雄介の声は静かだったが、計り知れない重みが籠もっていた。


「生き延びることはできても、食事ができず、人前で笑えず、自分の顔を見るたびに絶望し、誰にも会えずに生きる……。それを『治った』と言えるのでしょうか。俺は違うと思います」


雄介は広場を埋め尽くす大観衆、そして過去に傷や肌の悩みを抱えてクリニックを訪れた患者たちを見渡した。


「病気やケガを治すのは勿論です。ですが、その先にある『患者がもう一度、自分らしく胸を張って生きられるところまで支える』……それもまた、医療の果たすべき大切な役割です。心と生活の質を救うこと……それこそが、俺たちの行う美容形成医療の理念です」


静寂が支配した。 貴族も、市民も、医師たちも、誰もが雄介の言葉を噛みしめていた。


「……見事な答えだ」


監察官長が重く頷いた。



審問壇の中央に、審査員たちが集まる。 王立医療監察官、貴族院代表のオルランド公爵、魔導工学者の代表、そして患者代表の審議が交わされた。


やがて、全員が席に戻り、監察官長が静かに立ち上がった。


「審議結果を発表する!」


広場中の視線が集まり、息をのむ音が重なる。


「第一から第五までの全審査において、AIZAWA skin beautyの示す医療技術は、従来の治癒術を遥かに凌駕する安全性、再現性、ならびに患者の生活改善効果を実証した」


魔導工学者の代表が進み出て、公的に言及する。


「彼らの技術は、決して魔法を否定するものではない。むしろ、正確な解剖学と生理学によって『魔法を正しく制御し、真の力を引き出す』極めて先進的な体系であると認める」


「魔法vs科学」ではない。「魔法×医学」の融合。 異世界の最高峰の知性たちが、雄介の持ち込んだ現代医学の真理を、正式に『正統なる技術』と認めた瞬間だった。


監察官長が羊皮紙を高く掲げ、朗々と判決を言い渡した。


「よって、判決を下す! 王立医療監察院は、AIZAWA skin beautyに対するすべての営業停止命令を——即座に撤回する!」


「おおおっ……!」


「さらに! 同院の施術を違法な邪法とは認めず、解剖学、生理学、衛生学、外科技術、そして治癒魔法を高度に融合させた……新たな正規医療体系とする!」


監察官長は息を吸い込み、堂々とその名を叫んだ。


「その正式名称を——『美容形成医療』と定義し、王都公認の専門機関として『AIZAWA skin beauty』を正式認可する!!」


「うおおおぉぉぉぉぉっっ!!!」


その瞬間、地鳴りのような歓声と大拍手が爆発した! 観客席の貴族たちが立ち上がり、市民たちが拳を突き上げて歓声を送る。オルランド公爵やエノレア、レティシアら、これまで雄介を信じてきた患者たちが感無量の面持ちで拍手を送っていた。


ただの「怪しい街医者」だった相澤雄介が、王都の歴史上初めて『美容形成医療』という新たな学問を打ち立てた瞬間であった。



歓声が鳴り響く中、監察官長が再び声を張った。


「……なお、本審問にあたり、名誉の回復を行わねばならぬ者が一人いる」


監察官の視線が、雄介の隣で呆然と立ち尽くしていた少女へ向けられた。


「リーナ・エルシア前へ」


「ひ……っ、はい!」


肩を跳ねさせ、おそるおそる一歩前へ出たリーナに、監察官長は温かな眼差しを向けた。


「三年前、治癒術師ギルドにより下された貴殿への『無能術師』および『不適格者』の認定について——王立監察院の権限をもって、本日付で正式に【完全撤回】する」


「え……?」


リーナが目を見開く。


「貴殿の行使する『生気湧出』は、既存の粗雑な治癒術とは一線を画す、組織の定着と再生を微小領域で促す極めて稀少かつ高度な『独立治療魔法』であると認定された。AIZAWA skin beautyにおける術後再生医療への多大な貢献を、王立医療監察院は高く評価する」


「あ……ぁ……」


公の舞台で告げられた、三年越しの名誉回復。 「出来損ない」「役に立たない」と罵られ、暗闇の中に捨てられた少女の努力と才能が、今、最高の形で世界に証明されたのだ。


ボロボロと、大きな涙がリーナの頬を伝い落ちる。


少女は震える手で目元を拭い、隣に立つ雄介を見上げた。 雄介は誇らしげに、優しく微笑んでいる。


「……先生」


涙声で、リーナは必死に言葉を絞り出した。


「私……私、本当に……出来損ないじゃ、なかったんですね……っ!」


「最初からそう言ってるだろ」


雄介は静かに笑い、そっとリーナの銀髪の頭を撫でた。


「君の魔法があったから、あの患者さんは笑えたんだ。胸を張れ、リーナ。君は立派な『再生医療の専門家』だ」


「はい……っ! はい……っ!!」


泣きじゃくるリーナを、アリアとミーナが優しく抱きしめる。39話から始まった少女の苦難と成長は、ここに最高の結末を迎えたのだった。



「ふ……ふざけるな! 認めん! 認めんぞぉぉぉっ!!」


感涙に包まれる審問会場に、見苦しい叫び声が響き渡った。


見れば、髪を振り乱したバルトロメウスが、壇上で狂ったように喚き散らしていた。


「こんなものは茶番だ! イカサマだ! 千年続いた我ら治癒術師ギルドの治癒術こそが、神に選ばれた唯一絶対の医療なのだ! どこ馬の骨とも知れん男の邪法など、認められるかぁっ!」


「……バルトロメウス室長」


監察官長が冷ややかな視線を向ける。


「往悪(往往たる悪行)の見苦しさはそこまでにしなさい。……貴殿の発言とこれまでの所業についても、審議が行われていたのだ」


監察官の合図とともに、王立騎士団が踏み込んできた。 さらに、監察官の手元には大量の不審な書類と証拠物品が提示される。


「リーナ・エルシア殿に対する不当な迫害と脅迫。偽の被験者を手配した公務執拗妨害。AIZAWAに対する不法な営業妨害……。さらには、過去に起きた『クララ患者改変未遂事件』における違法薬品の流出関与、および治癒不可能な患者に対する不適切な治癒魔法の強制と、診療記録の改竄……!」


監察官長が、氷のように冷たい声で宣告する。


「貴殿の手口は、すべて白日の下に晒された。患者の命と健康など最初からどうでもよく……ただギルドの権威と己の既得権益を守るためだけに医療を利用していたな」


「な……っ! 証拠など……そんなもの……!」


顔を真っ青にして激しく動揺するバルトロメウス。騎士たちに両腕を拘束され、膝をつかされる。


バルトロメウスは、血走った目で雄介を睨みつけ、怨嗟の声を上げた。


「相澤ぁぁぁっ! 貴様が……! 貴様さえ現れなければ、私はギルドの頂点に立てたのだ! 貴様が私のすべてを奪ったんだぁぁっ!!」


見苦しく他人に責任を転嫁する男に対し、雄介は静かに歩み寄った。


そして、哀れみすら込めた冷徹な眼差しで、静かに言い放った。


「俺が現れたから負けたんじゃない」


雄介の言葉が、バルトロメウスの胸を刺す。


「あんたが……最初から『患者』を見ていなかったから、負けたんだ」


「が……ッ!?」


医療者としての根本を否定する、完璧な一撃。 バルトロメウスは言葉を失い、がくりと頭を垂れた。


「第一施術室長バルトロメウスを、医療法違反および数々の罪状により拘束する! 連行せよ!」


「放せ! 放せぇぇぇっ!」


見苦しく暴れるバルトロメウスは、大観衆の冷ややかな視線と罵声の中、騎士たちによって引きずられていった。


権威に胡座をかき、患者を置き去りにした旧時代の医療——その象徴の完全なる失脚であった。

次回で2期は一旦終了です!完結では無いです!


ブクマありがとうございます!とても嬉しいです!

ぜひブクマした方は⭐︎評価もお願いします!

また、ここまで見てくださなた方はブクマと星評価お願いします!

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