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通報回数が経験値!? 全身黒タイツ(目出し帽)にならないと戦えない俺、不審者通報が多すぎて配信のアカウントが止まりそう  作者: 折若ちい


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第22話 第六階層、あるいは「数」という名の暴力

第五階層の喧騒が嘘のように消え、静寂に包まれた階段を上りきった先に待っていたのは、重厚なオーク材の扉だった。そこには金のプレートで『第一特設委員会室』と刻まれている。


「……ここから先は六階層。白金さん、さっきのヤジとは毛色が違う。もっとこう、『冷徹な圧』を感じるぜ」


俺が扉に手をかけると、システムメッセージが視界に割り込んできた。


《第六階層:『委員会室(強行採決の処刑場)』へ潜入しました》

《特殊ルール:『数の論理』が適用されます。敵対勢力の数が自分たちを上回る間、被ダメージが300%増加します》


「ダメージ三倍!? なんだその無茶苦茶なルールは! ここは二名限定なんだから、三人以上で来られたら詰みじゃねえか!」


「それが『数の暴力』……政治における最もシンプルで残酷な力ですわ。阿久津、気を引き締めなさい。ここから先は、理屈も不審さも通用しない、純粋な戦力差の押し付けが始まります!」


扉が独りでに開く。

 中は、雛壇のようにせり上がった机が並ぶ巨大な半円形の会議場だった。そして、そこには真っ黒なスーツに身を包んだ、顔のない人形――『挙手きょしゅ・トルーパー』が、千人近い数で座っていた。


「『……イギ、ナシ。……イギ、ナシ。……イギ、ナシ』」


千人の声が重なり、一つの巨大な意志となる。

 中央の委員長席に座っていたのは、三メートル近い巨体を誇る鎧武者、ボス『強行の執行官・ギロチン・アジャスター』。奴が手にした巨大なハンマー(ガベル)を机に叩きつけた。


――ガツン!!


「『……サイケツを、開始スル。反対派は……抹殺ダ』」


「反対派って、俺たちのことかよ! 俺はただの不審者であって、野党じゃねえ!」


「彼らにとって、従わない者はすべて『反対派』なのです! 来ますわ!」


ギロチン・アジャスターがハンマーを振り上げると、千人のトルーパーが一斉に立ち上がり、右手を挙げた。その手には鋭いナイフが握られている。


《警告:挙手による『採決』が始まりました。防御力が90%低下します》


「うわっ、身体が紙みたいに脆くなってる! 白金さん、これ正面から当たったら即死だぞ!」


「わかっています!『聖域の旋風ホーリー・トルネード』! 阿久津、私が道を切り開きます。貴方はそのバールで、あの委員長席のハンマーを……採決の道具を奪い取りなさい!」


「了解だ! 出すもん……全部出させてやるよ!」


凛子が嵐のように敵陣へ突っ込む。白銀の軌跡が、挙手するトルーパーたちの腕を次々と叩き落としていく。だが、敵の数が減らない。倒しても倒しても、壁から新しいトルーパーが「補充」されてくる。


『【絶望】阿久津ニキ、ついに「数」に屈するか!?』

『被ダメ3倍で防御9割カットとか、クソゲーすぎて笑えるww』

『凛子ちゃんの結界が削られてる……! 阿久津、早く行け!』


俺はスキル『不法侵入(空中ステップ)』を発動した。

 トルーパーたちの肩を足場にし、議場内を縦横無尽に飛び回る。

 ギロチン・アジャスターが俺を捉え、巨大なハンマーを振り下ろす。


「『……否決……スベテ、否決ダァァ!!』」


「否決されるのは、お前のその理不尽なルールだよ!」


俺は空中で身体を捻り、ハンマーの柄に黄金のバールを引っ掛けた。


《条件:圧倒的多数への反逆。スキル『ジャイアント・キリング』が一時開放》


「これでおしまいだ! 『強行カツアゲ』!!」


俺は全体重を乗せ、テコの原理でバールをへし曲げるように引いた。


バキィィィン!!


黄金の光が炸裂し、ボスの持つ巨大なハンマーが砕け散る。

 同時に、千人のトルーパーたちが糸の切れた人形のようにその場に倒れ伏した。


《第六階層:攻略完了》

【獲得アイテム:委員長のハンマー(欠片)、絶対多数の証、強行採決の議事録】


「……はぁ、はぁ。……どうだ、数さえいれば勝てると思うなよ」


俺は砕けた床にバールを突き立て、荒い息を吐く。

 横では、凛子がボロボロになったマントを翻しながら、俺の元へ歩み寄ってきた。


「……見事でしたわ、阿久津。貴方のその『空気を読まない蛮勇』、今日ほど頼もしく感じたことはありません。……少しだけ、認めてあげますわ。貴方は単なる不審者ではなく……『世界で最も不審な、私のパートナー』だと」


「……白金さん。それ、もう完全に告白だろ。配信、同接60万いってるぞ」


「――ッ!? 忘れてください! 今のは、今のは攻略による脳内麻薬のせいですわ! 死になさい!」


凛子のレイピアが、俺の目出し帽の横をかすめる。

 だが、その刃に以前のような殺意はない。

 

 俺は、カツアゲした『絶対多数の証』を握りしめ、七階への階段を見上げた。

 


「さあ、行こうぜ白金さん。日本の闇の、さらに奥へ」


「……ええ。最後まで、貴方の背中を見守ってあげますわ。……逃がさないためにもね」


永田町の闇をこじ開ける黄金のバールは、いよいよその核心へと迫っていく。

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