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通報回数が経験値!? 全身黒タイツ(目出し帽)にならないと戦えない俺、不審者通報が多すぎて配信のアカウントが止まりそう  作者: 折若ちい


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第18話 第三階層、あるいは「看板」という名の重圧

第二階層のシュレッダー魔人を粉砕し、俺たちはさらなる高み――第三階層へと足を踏み入れた。

 階段を上りきった先で俺たちを待っていたのは、廊下の壁一面を埋め尽くす、巨大な『選挙ポスター』の群れだった。


「……うわ、何だここ。顔、顔、顔……。視線の圧が強すぎて、歩いてるだけでメンタル削られるんだけど」


第三階層『選挙戦の荒野(公約の蜃気楼)』。

 かつての会議室エリアは消失し、そこには延々と続く「ポスター掲示板」の迷路が広がっていた。ポスターの中の人物たちは、全員が異様に白い歯を見せて笑っているが、その瞳は血走っており、こちらが動くたびに視線が追従してくる。


「阿久津、油断しないで。この階層からは『大衆の意志』が魔力となって襲ってきますわ。ほら、来ます!」


凛子がレイピアを構えた瞬間、ポスターの中から無数の「手」が飛び出してきた。

 それは握手を求めるような形をしながら、俺たちの手足に絡みつき、地面へと引きずり込もうとする。


「『……イッピョウ……イッピョウ、クダサイ……』」

「『……キタク……シテクダサイ……』」


現れたのは、第三階層の雑魚敵『有権者・ゾンビ』と、それを統率する『拡声器・ハーピー』だ。

 ハーピーたちは選挙カーのような翼を持ち、上空から「お願い」という名の超音波攻撃を仕掛けてくる。


「うるせぇぇ! 俺の一票は高いんだよ! 出すもん……いや、票は出さねぇ! 命を出せぇ!!」


俺は黄金のバールを旋回させ、足元に群がるゾンビの手をなぎ払った。

 しかし、斬っても斬っても、壁のポスターから新しい手が次々と生えてくる。


「不審者、上です!『聖騎士の審判ジャッジメント・ライト』!」


凛子が空中のハーピーを光の矢で撃ち落とす。

 だが、その衝撃で剥がれたポスターの裏から、さらなる魔物が現れた。

 それは巨大な「ダルマ」の姿をした魔物、『必勝・ゴーレム』。片目だけが真っ黒に塗られ、もう片方の白い目で俺たちを睨みつけながら、巨大な拳を振り下ろしてきた。


「どわっ!? 物理攻撃まで政治的かよ! 白金さん、あいつの右目を見てくれ! まだ色が塗られてない!」


「……わかりました。あそこが弱点ですね! 私が注意を引きます、貴方はそのバールで『開眼』させてあげなさい!」


「開眼というか、カツアゲだけどな!」


凛子が華麗なステップでゴーレムの周囲を舞い、鋭い突きを繰り出す。

 ゴーレムが彼女の光に目を奪われた隙に、俺はスキル『不法侵入(壁走り)』でポスター掲示板を駆け上がった。


「有権者の怒り、思い知れぇぇ!!」


俺は空中でバールを大きく振りかぶり、ゴーレムの白い左目めがけて突き立てた。


《アビリティ『カツアゲ』発動!》

【獲得アイテム:白い手袋(幸運+5)、特大の必勝ハチマキ、落選の通知】


バールがめり込んだ瞬間、ゴーレムの体は「万歳三唱」のポーズをとったまま石化し、そのまま粉々に砕け散った。


『【速報】不審者、永田町でダルマを破壊』

『凛子ちゃんの連携、もう息ピッタリじゃねーかww』

『「落選の通知」がドロップ品とか、嫌がらせのレベルが高い』

『阿久津、そのハチマキ巻けよ。似合うぞ』


「巻かねーよ! 暑苦しいだろ!」


俺はハチマキをポケットに突っ込み、階層の奥へと急いだ。

 この第三階層の空気は、吸っているだけで「何かを約束しなければならない」ような強迫観念に襲われる。


「白金さん、大丈夫か? さっきから少し顔色が悪いけど」


「……平気です。ただ、この場所に満ちている『期待』と『失望』の残滓が、私のスキルと反発しているだけですわ。……私たちは、人々を守るために戦っているはずなのに、なぜこの場所はこんなに淀んでいるのかしら」


凛子の声に、いつもの鋭さが欠けている。

 正義感が強すぎる彼女にとって、この「選挙という名の欲望の渦」は毒に近いのかもしれない。


「……まぁ、難しく考えるなよ。俺を見てみろよ、目出し帽だぞ? 誰も俺に期待なんてしてないし、俺も誰かに期待なんてしてない。だから、この程度の重圧プレッシャーなんて、俺にとっては『いつも通り』だ」


「……貴方って、本当に救いようのない不審者ですわね。でも、今はその厚顔無恥さに助けられましたわ」


凛子が少しだけ口角を上げ、再びレイピアを構えた。


「行きましょう、阿久津。三階のボスは、あの『巨大な拡声器の塔』の向こう側にいますわ!」


「おう! 出すもん出させて、さっさと四階へ行こうぜ!」


不審者の無責任さと、聖騎士の責任感。

 最悪の組み合わせが、最高のスピードで永田町の三階層を突破していく。

 俺たちの影が、無数のポスターの視線を切り裂きながら、奥へと消えていった。

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