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通報回数が経験値!? 全身黒タイツ(目出し帽)にならないと戦えない俺、不審者通報が多すぎて配信のアカウントが止まりそう  作者: 折若ちい


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第16話 第一階層、あるいは「接待」という名の袋叩き

「いいですか、不審者。ここから先は一歩たりとも私より前に出ないでください。貴方のその、犯罪の匂いしかしない背中を見ているだけで、私の正義の天秤が狂いそうですわ」


第一階層『ロビー活動の密林』。

 かつての広大な玄関ホールは、いまや異様な植物が繁茂するジャングルへと変貌していた。ただし、生い茂っているのは葉ではなく、シュレッダーにかけられた「機密文書」のような紙の蔦。そして、あちこちに不自然なほど豪華な「応接セット」が配置され、毒々しい色の高級ワインが噴水のように湧き出している。


「そんなこと言ったって、白金さん。このダンジョン、俺たち二人じゃないと扉が開かない仕組みなんだろ? ほら、あそこの『入室管理ゲート』を見てくれよ」


俺が成金バールで指し示した先には、禍々しい角が生えた自動改札機のようなゲートがあった。

 そこには無機質なフォントでこう書かれている。


【検門:清廉なる誓約と、泥にまみれた強欲を同時に差し出せ】


「……つまり、私が『誓約』を、貴方が『強欲』を同時にかざせということですね。反吐が出ますわ」


「俺を強欲の擬人化みたいに言うなよ! 俺はただ、平穏な不審者ライフを送りたいだけだ!」


俺たちが渋々ゲートに手をかけると、ガコン、と重々しい音がして道が開けた。

 それと同時に、ジャングルの奥からガサガサと複数の人影が飛び出してきた。


「『セッタイ……セッタイ、シテクダサイ……』」

「『コチラ、ツキアイノアル……ゼネコン、デス……』」


現れたのは、第一階層の雑魚敵『忖度そんたく・グール』、そしてその上位種である『談合だんごう・オーク』だ。

 オークたちは作業着をパツパツに着込み、手には武器ではなく「鉄筋」や「図面ケース」を持っているが、その眼光は殺意に満ちている。


「リスナー諸君、見てくれ! これが日本の建設業界の闇(の、成れの果て)だ! 行くぞ、白金さん! 俺が崩して、あんたが刺す!」


「命令しないでください! ……でも、合理的ですわね!『ホーリー・レイ』!」


白金凛子がレイピアを突き出すと、白銀の衝撃波がオークたちの足を止めた。

 その隙に俺は、スキル『不法侵入スライディング』で敵の懐へ潜り込む。


「出すもん……出せやぁぁ!!」


黄金のバールが、談合オークの持つ「金の入ったアタッシュケース」に直撃した。


《アビリティ『カツアゲ』発動!》

【獲得アイテム:裏金(魔石)、鋼鉄のヘルメット、談合の証拠書類】


「おっしゃ、ドロップ品ゲット! 白金さん、次だ!」


「……貴方、本当に『カツアゲ』なんて不名誉な名前のスキルを堂々と叫ぶのね。ですが、その威力だけは認めざるを得ませんわ。はあああ!」


凛子の剣閃が舞い、俺のバールが唸る。

 一見、完璧なコンビネーションに見えるが、俺の配信画面は阿鼻叫喚だった。


『【速報】不審者と聖騎士、汚職オークをボコボコにする』

『阿久津が「出すもん出せ」って言うたびにオークが怯えてて草』

『これ、どっちが魔物かわからんな……』

『凛子ちゃんの「ホーリー・レイ」が、阿久津のバールに反射して攻撃範囲広がってる!?』


そう、黄金の成金バールは、聖なる光を反射・増幅させる性質を持っていたらしい。

 俺がバールを振るたびに、凛子の放つ光がミラーボールのように議事堂内を乱反射し、魔物たちを次々と蒸発させていく。


「なっ……私の神聖な光が、貴方の不浄なバールで屈折している!? なんてこと、私の技に『不審な輝き』が混じってしまうではありませんか!」


「贅沢言うなよ! 威力は三倍くらいになってるぞ! ほら、あそこのボスの部屋が開いた!」


第一階層の奥。

 そこには、巨大な札束の山に座る中ボス『ロビー活動の主・キングロビイスト』が待ち構えていた。

 そいつは四本の腕を持ち、それぞれに「金ペン」「契約書」「ワインボトル」「高級な葉巻」を持っている。


「『……ワレニ……ナニヲ……クレル……?』」


「あげるもんかよ! 逆に、お前のその『金ペン』をよこせ! それ、めっちゃ高く売れそうじゃねえか!」


「阿久津、欲望を隠しなさい! ……行きますわよ、奥義『ジャスティス・パニッシュメント』!」


「俺も合わせるぜ! 秘技……『成金・全力カツアゲ』!!」


白銀の光と、黄金の物理衝撃が同時にキングロビイストに炸裂した。

 爆音と共に魔物が霧散し、第一階層を覆っていたジャングルがサラサラと砂になって崩れ落ちる。


《第一階層:攻略完了》

《次の階層へ進みます:第二階層『二階:秘書たちの回廊(沈黙の壁)』》


「……はぁ、はぁ……。どうにか、一階はクリアか」


俺はバールを杖代わりにして、膝をついた。

 横では白金凛子が、乱れたポニーテールを整えながら、顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。


「阿久津煉。今の連携……絶対に、誰にも言わないでくださいね。特に警察の同僚たちには。私が不審者のバールを利用して攻撃したなんて知られたら、私のキャリアが……私の正義のプライドが死んでしまいますわ」


「わかってるって。俺だって、聖騎士と協力したなんてバレたら、不審者仲間いないけどに顔向けできないからな」


俺がスマホを見ると、同接は四十万人を超え、スパチャの金額はもはや俺の理解できる桁を超えていた。


『【神回】不審者と聖騎士、意外と相性良くて草』

『「正義」と「悪意」の合体技、かっこよすぎだろw』

『阿久津、凛子ちゃんにデレるなよ。お前は最後まで不審者でいろ』


「……よし、二階へ行くぞ。白金さん、足、引っ張るなよ」


「それはこちらのセリフですわ! 貴方が捕まるのは、この十階層をクリアしてからです。それまでは……私が守って(監視して)あげますわ!」


永田町・魔議場、攻略はまだ始まったばかり。

 俺たちは、より深い闇が待ち受ける二階への階段を駆け上がった。

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