終戦
新聖暦973年雨月・前の7日
南海島上空に浮かぶ飛空円盤の内部では いつもの風景とは違っていた。
メイドのメアたちは 忙しく走り回り、いつもより入念に清掃を行っている。
あちらこちらにアロマポットを設置し香りに工夫を凝らす。
通路の壁は 木目調のしっくりしたものに塗り替えられ、どこかの高級旅館風にリニューアル。
オタク趣味のサラが持ち込んだフィギュアwwは片付けられ高級品ぽい調度品に差し替えられていた。
・・・・・・サラとしては何か言いたそうだったが、
サラ自身も たいへん忙しく放送用魔導ビデオカメラを担ぎ、撮影準備をしているようだ。
円盤内では 誰もかれもが忙しく動いていたのである。(ミレイユだけは艦橋でティータイムをしていたけどww)
なぜ!? こんなに忙しいのか!! それは・・・・
・・・・今日は歴史的に重要な日!! ヴィジャナル王国との講和会議が開かれる予定だったからである。
そして、その講和会議の場として選ばれたのは 南海島の上空で浮かぶ飛空円盤。
ヴィジャナル王国使節団を招き入れるため メアたちは大忙しに働いていたのであった。
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飛空円盤後部の格納庫ハッチが開き、ビーコンの光が点滅する。
そのビーコンの光に導かれるように、雲のかなたから姿を現した飛空船・ハヤブサが ゆっくりと格納庫へと入ってくる。
このハヤブサには、ヴィジャナル王国側の使節を、この地へ運ぶために、聖女帝国が派遣したものであった。
広々とした格納庫は万国旗で飾られ ノボリの旗がたなびき・・なにか祭りと勘違いしそうだが、
とりあえず歓迎ムードをつくっている。
警告音とともに赤色灯が点滅する中、蒸気を吐き出しながらゆっくりと着艦するハヤブサ。
そして・・・・ハヤブサからタラップがせりだし、重厚な扉が開かれると中に何人かの人影が見えた。
ヴィジャナル王国使節団の方々である。
数発の礼砲が鳴り響くと同時に歓迎音楽が演奏され始めた。
壮麗な儀礼服に身を包んだメアたちが 一斉に敬礼をする。
このような歓迎ムードに対して、ヴィジャナル王国使節団の面々は少し戸惑っているようであった。
一人のメアが手に持った端末を操作すると・・・
・・・・丸めて横置きに置いていた赤い絨毯が自動的にコロコロと転がり、使節団の足元まで レッドカーペットの道をつくりあげた。
これはサラの趣味によってつくられたカラクリ仕掛けである!!
ヴィジャナル王国にはレッドカーペットの習慣はなかったのだが・・・・自前で説明されていたので問題はなかった。
しかし、ふわふわとして、さわり心地の良さそうなカーペットに土足で踏みこむのを躊躇しつつも・・・・、
・・・・意を決して、片足を前に出してみる!!
すると、不思議な魔力が体全体を覆う。
なんだこれは!? 戸惑う使節団の人々。
なんと! 体が僅かに浮遊し前へと進みだすではないか!!!
このレッドカーペットは歩く歩道を組み込んだ画期的な魔導システムだったのだ!!
立ったままの姿勢で、レッドカーペットの上をゆっくりと前に進む。
「お~ なんと!!」
驚きのヴィジャナル王国使節団!!
思わず声を上げてしまいそうになり 口を手で塞ぐ者が多数いた。
特に、使節団代表でもあるヴィジャナル王国宰相カリストは 顔が真っ青になり 足をすくませていた。
これほどの・・技術を持つ国と戦ってしまっていたのか!!!
この不思議な動く赤いカーペットだけではない!!
この地にまで乗ってきたハヤブサという名の飛空船。
あれほどの高速で高高度を飛ぶ飛空船など見たことがない!!
ヴィジャナル王国の飛空艦では歯がたたないだろう!!
ましてや・・この広々とした格納庫に、そのハヤブサの同型機がずらりと並んでいる。
これだけでも 凄まじい戦力である。
その上、この格納庫の構造がすごい。
これだけ広い面積があるにもかかわらず、柱がない!
天井を支える柱がないのだ!!!
ヴィジャナル王国で同じものをつくれば・・・・・構造的に天井が落下してくるにちがいない!
おそらくは 聖女帝国の持つ高度な技術なのだろう。
・・・なんと! 恐ろしいことか~
おもわず 宰相カリストは身震いするのだった。
また、同じく随伴してきた使節団の人たちも驚きの顔をしている。
おそらく同じ感想だったのだろう!!
その様子を見て勝ち誇ったようにドヤ顔になってしまっているパウネリア侍女大臣。
この技術はセルーカ王国ではなく 聖女帝国のものなのだが・・・
彼女は、わずかに口がゆるみ、他人に聞こえないような小さい囁きをした。
「憎きヴィジャナル王国の者たちよ!! 恐れ! ひれ伏し泣き叫ぶがよい!! 」
パウネリア侍女大臣はセルーカ王国唯一の大臣wwという肩書により ヴィジャナル王国使節団との最初の接触となる。
とりあえずは笑顔で 宰相カリストとの握手をすることになっていた。
ほんの少し前まで敵国の憎き宰相の顔が 近づいてくる。
殴りたい!! と心で思う。
宰相カリストは 目前の女性が放つ冷たい目線を感じたのだが・・・
・・・・それよりも、なにやら格納庫奥に違和感を感じ、そちらに目線を向けた。
---- 宰相は見た!! ----
あれは・・・・いったい!
なんと!! 格納庫奥で何かが浮いている!?
宰相カリストは 目をこらしてよく見てみると・・・逆さまに浮いているメイドの姿だったのだ。
他の使節団の人達も気づいて・・驚いて見ている。
何人かの者はちょっと喜んでいるようだ。
逆さまに浮いているためスカートが はだけパンツが丸出し姿!!
サービスなのか!? 誰のためのサービスなのか!?
そのメイドの顔がユリティーナ姫に似ていることに宰相カリストは気づいた。
国を裏切り セルーカ王国で将軍となり我が国の軍団を破った・・・・あの裏切り者め!!
しかし・・・・髪が青く・・・猫耳がついてる!?
別人!? それとも妹なのか!?
いや!! まてよ!? これはセルーカ王国からの何かのメッセージか!? 罠かもしれん!!
油断をしてはならない!!
とりあえず・・・宰相カリストは見なかったことにしたww
驚きは使節団側だけではない!!
この逆さ吊りメイドことサラの所業を見たパウネリア侍女大臣は おもっきり白目になった!!
サ・・ラ・・・様はいったい何をしたいの!?
講和会議の妨害なの!?
たしかに、殴りたいとは思ったが エロいことをしたいという破天荒な思考は・・・・
・・・・サラ様ならやりかねない!!
パウネリア侍女大臣は・・・・・
宰相カリストと同じく見なかったことにしたww
両者は、見てはいけないものを避けるかのように互いに軽く挨拶をおこない、
不自然に目線をあちら方向へと向ける。
そして 妙な雰囲気はあるものの、あえて無視して・・・何事もなかったように、
パウネリア侍女大臣は 使節団を講和会議場へと案内したのであった。
格納庫内で逆さまにひっくりかえり 身動きが取れなくなっていたサラは何をしていたかというと・・・
歴史的瞬間を映像記録として残そうとしていたのである。
サラは講和使節団の様子を より良い位置から魔導カメラで撮影しようと、ミレイユのように空中浮遊を発動し浮かびあがろうとしたら・・、
魔導技能不足のためひっくりかえり 空中で逆さ吊りになったあげくに パンツ丸見え状態で身動きが取れなくなった。
(空中浮遊を自由自在に扱えるのはミレイユぐらいである!!)
「おねーさまは 簡単に浮遊してたのに!!」
その後・・・・ユリティーナ姫に えらく怒られるサラであった。
顔が大変似ているため使節団の目には・・・ユリティーナ姫だと勘違いされたのではないかと恐れたためである。
幸い、逆さ吊り少女について宰相カリストから尋ねられることはなかったが・・・ばっちり目撃されたのは 間違いない!!
講和会議場は、3D映像投影魔具をつかって、心地良い森林風景を映し出されていた。
その森林の中の開けた場所に巨大な円卓テーブルが設置されている。
暖かい日光のこもれび日が この巨大な円卓全体を照らし、神々しさを感じてしまうほどである。
心を穏やかにさせ講和会議をうまく進行させる配慮で このような演出をしたのであった。
本物そっくりのリアルな3D映像であるため、使節団はこの会場を野外だと思い込んでしまうだろう。
セルーカ王国側代表であるエルノスティ国王は 装飾で飾られた椅子に深々と座っている。
その後ろで・・・・真紅の流血パンダ隊のエトゥ隊長が睨みを効かせていた。
絶世の男の娘であるエルノスティ国王には、威圧力がたらないので 威圧担当としてエトゥ隊長が必要だったのであった。
ちなみに・・・パンダの着ぐるみはしておらず ちゃんとした軍服を着ている。
パウネリア侍女大臣にうながされ、講和会議場に入るヴィジャナル王国側使節団の面々。
飛空円盤内のはずなのに 目の前には大自然が横たわっている。
かなり驚いているようだ。
エルノスティ国王はニヤリと笑い、宰相カリストを始めとした使節団の人達に着席を促すのだった。
光り輝くこぼれ日の中、雰囲気的に洗脳させつつ講和会議が開かれたのである。
ちなみに・・・この講和会議には ミレイユ聖女帝国の関係者は出席していない。
もしも・・・ミレイユやサラが出席したら、顔が似ていることからユリティーナ姫の親族だとバレてしまう・・・
・・・・ヴィジャナル王国側としては よい心情を持たないだろう。
今しばらくは・・・セルーカ王国以外との国に接触せず、謎と神秘の国という演出をすることにする。
とはいえど・・・・
・・・征討将軍としてユリティーナ姫も出席していたため、
ヴィジャナル王国側では、気まずい雰囲気が流れてしまったが・・・
戦闘停止、講和を求める側として、文句を出すわけにはいかなかった。
ユリティーナ姫というある種の威圧カードをだすセルーカ王国陣営。
しかし、ヴィジャナル王国側としては これと言った外交カードがない!!
エルノスティ国王は無言であり発言はしないが・・・
そのかわりにユリティーナ姫は ヴィジャナル王国によって実行された犯罪の数々を列挙していく。
額に汗が出る宰相カリストだが反論をする!
飛空船によるヴィジャナル本土での略奪行為は戦争行為などではなく ただの盗賊行為だと・・
しかし・・セル―カ王国は知らぬ存ぜぬでしらを切る。
その飛空船の所属を勝手にセルーカ王国だと思われるのは心外である。
セルーカ王国は略奪はしていない!!
エルノスティ国王が乗船してたとはいえ、実行したのは聖女帝国であってセルーカ王国ではないからこそ言える詭弁であった。
会議全体の主導権をセルーカ王国側にとられてしまったものの・・・
セルーカ側からの過酷な要求はなかった。
この点において、使節団の人たちは安堵するのである。
両国の同意により戦闘停止が決定された。 終戦である!!!
この講和会議によって平和が到来したのであった。
ヴィジャナル王国使節団の人たちも肩の荷が下りたのか、会議場付近の自然を眺めリラックスしている。
勝ち誇ったようにエルノスティ国王は 宰相カリストに握手を求めた。
苦々しくもあるが・・・平和の到来により笑顔で対応する宰相カリスト。
両国とも領土は要求しない。
ましては賠償金も請求しない。
対外的には痛みわけということになっている。
これなら・・・ヴィジャナル王国側の人達も納得するだろう!!
しかし 実体として・・ヴィジャナル王国は暴動で混乱し・・・資金は底をつきかけていた。
大敗北といってもいい状態である。
それに引きかえ、聖女・セルーカ王国の国庫には豊富な金銀財宝が・・・・山と積まれていた。
ヴィジャナル王国本土で傍若無人と言えるほどの略奪をしまくっていたからだ。
しかし・・・復興資金やら国の立て直しが必要であるため これらの財宝も、すぐに消費されるであろうが・・・
講和会議の後・・・
宰相のカリストは セルーカ王国と同盟を結んだ聖女帝国について、しつこく質問されたが、
セルーカ王国関係者は 一切、その質問に答えなかった。
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終戦が決定されてから やっと戻ってくるセルーカ王国の貴族や官僚・・・・
「いまさら のこのこ帰ってきたのか!!」
エルノスティ国王の一喝によって、貴族や官僚の帰属をほとんど認めなかった。
僅かながら、能力の高い者だけは特別枠として採用したが ほかの者は放逐したのであった。
セルーカ―王国を支える新官僚は採用試験によって登用することに決めた。
国内の警備はエトゥ隊長が率いるパンダ精鋭部隊、又はユリティーナ姫やラウリ騎士団に任せることになった。
ユリティーナ姫の道徳性と真面目な性格のため 引き続き征討将軍の役職に就くことが決定されている
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ) 終戦・・・ミレイユの飲む南海島の紅茶は美味しい




