内乱のヴィジャナル王国
現在、ヴィジャナル王国は内乱状態に突入していた。
王室直轄の領地では、住民たちの不満はさほどなかったのだが、
中央政府の目が届きにくい地方の中小領主には悪徳の者が多く、絶えず住民の不満があったのである。
メリュカ伯爵の領地は特にひどく、悪政と腐敗のるつぼと化していたのだが・・・
とある盗賊団の襲撃事件を契機として ついに住民たちの不満が爆発!! そして、暴動にまで発展してしまったのである。
この暴動は伯爵領だけでは収まらず 周辺地域へと拡大していき、各地の不満分子たちが集結、王国に反旗を翻す一大反乱勢力にまで成長した。
この反乱勢力を 彼らは南部独立軍と呼称したのである。
だが、南部独立軍と称しても 所詮は烏合の衆、統率もなく勝手に略奪をする輩ばかりだったのだが・・・
ここに、その反乱勢力をたばねる人物が出現した!!
烏合の衆だった暴徒たちを統率し反乱軍としての組織を整えた者の名は・・・・リュミィル。
召喚を得意とする魔導師であり この南部独立軍の大将。
そして 最前線で味方兵士にたえず鼓舞する強き戦士!!
リュミィルによって召喚された大型トラックなみの巨大なバジリスク、いわば、羽の無いドラゴンのような生物にまたがり
鎮圧のため来襲したヴィジャナル王国軍をかき乱すように蹴散らす!!
人馬一体いや 人バシリスク一体となって疾風のごとく敵陣をかけめぐり、
紅い髪をたなびかせながら敵兵を吹き飛ばしていくその姿から・・・
紅い髪のバジリスクと呼ばれていた。
(通常の3倍とかではないですw)
まさに・・・味方兵士、全員から尊敬と羨望の的とされ 南部独立軍の象徴というべき存在であったのである。
リュミィルはかつて、とある公爵家のメイドとして働いていたこともあり、
領主、貴族という階級になんらかの不満があったのかもしれない。
魔力がないからと言って公爵の姫君を地下牢に閉じ込めてしまったということへの怒りが
彼女を南部独立軍に加担した理由だったのか!?
リュミィルは本名であり・・・・・あだ名はミルヤ!
かつて・・・幼いミレイユの世話係をしていた人物。
門外不出のホムンクルス魔術書をミレイユに渡した人物。
そして・・・古代魔法術を先祖代々受け継ぎ、強力な召喚生物を呼び出せる魔導師!!
その人物こそ リュミィルだったのである。
今や! ヴィジャナル王国南部地域を中心に一大勢力を率いるほどになってしまっていた。
しかし! ここに・・・この南部独立軍の拡大と内乱状態に対して武力を使わず 平和的解決をこころみようとする者たちがいた。
第三王子であるラファーエルによって創設された組織、女神フレイエミア教団である!
愛と平和と戦争反対を標榜するこの教団は、南部独立軍との戦闘ではなく 話し合いで収めるべきだと主張した。
しかし、あまりにも教徒の数が少なすぎて(正式会員は二人)の個人宗教勢力であるため、
この主張は受け入れられなかった・・・・
・・・・・・・理想論すぎて本気にされないww
しかし!! 状況は変化した!!
最近では、紅茶海での戦いで 女神フレイエミア脳に洗脳された元捕虜たちが帰国し
続々と女神フレイエミア教団へ入信し始めたため、それなりに信者数が増えてはいたのである。
個人宗教勢力から弱小宗教勢力にレベルアップしましたww
といっても・・・・教徒の大部分が一般民衆であるため、さほどの政治勢力ではないが、
王都宮殿の周辺部で戦争反対のプラカードを持った教徒たちが うろうろ歩かれると、たいへんうっとおしい!!
王都警護隊で排除してもいいが・・・フレイエミア教団の創設者がラファーエル王子であるため排除するのをためらわれた。
もちろん王都だけではなく南部独立軍側にも教徒たちは出向き戦争反対を訴える。
ヴィジャナル王国南部の町エリュコ。
ここはリュミィル率いる南部独立軍の根拠地。
リュミィルの召喚した多数の巨大バジリスクが町を覆いつくす とんでもない町になっていた。
ヴィジャナル王国軍からしてみれば、ハリネズミのように防御態勢を固めている町にしか見えない。
そんなバジリスク町!?に 教団創設者であるラファーエル王子と いつもの側近!ホールン伯、
そして多数の教徒たちが集結した。
目的は、戦争反対アピールである!!!
町を覆いつくす多数のバジリスクは、あたかも駐車違反の自動車のごとく道端で駐車!?している。
しかし、彼ら!?バジリスクたちは 目をつむりおとなしく、寝そべってるようで無害そうであった。
ちょっと かわいく見えたりもする!!
それらバシリスクの隙間を、すり抜けながら、教徒たちは戦争反対のプラカードを持ってエリュコの町を練り歩く・・・・
・・・・のだが、バシリスクは見かけても反乱軍の人達を見かけない!!
ちなみに・・・ヴィジャナル王国側としては 南部独立軍と呼称せず反乱軍と呼ぶのである。
「反乱勢力の本拠地のはずなのだが・・・反乱軍どころか住民もいない!」
ラファーエル王子は町を間違えたのではないかと不安になった。
「ラファーエル王子! 間違いありません。このエリュコの町で正しいのです」
「しかし・・・・バジリスクしかいない!!」
「も・・・もしや、わが国に反旗を翻したのは人ではなく・・・バジリスクだったのでは!」
「な・・・・なん・だ・と!!」
ホールン伯の問いに対して、バシリスクが反乱を起こしたのではないかとちょっと本気に考えてしまったラファーエル王子。
「そんなわけあるか~」
とりあえずつっこみをかえす!!
しかし この会話を聞いた教徒たちは なにを血迷ったかバシリスクに対して 戦争反対のプラカードを見せ始めた。
「戦争はんた~い」
駐車違反のように道端にただずむバシリスクに なにやら叫ぶ教徒たち。
目を閉じたバシリスクは わずかに目を開け、なにやら騒ぐ教徒たちに対して
うっとおしく思ったのか!?・・・・大きな口を開け咆哮をあげた。
グォ~~~~~ン
すると・・・町にいる無数のバシリスクたちが それに呼応するように一斉に咆哮をあげ 凄まじい音が町全体を揺るがす!!
その恐ろしさに 身を縮め我先にと町の外へ逃げ散っていく教徒たち!!!
信者たちが信望する愛と平和は バジリスクの咆哮(もしかしたらたんなるあくび だったのかも!?)に あっけなく敗北したのであった。
もちろん ラファーエル王子やホールン伯も おもっきり逃げた。
爬虫類!?に人間世界の常識は通用しない!!!
というか・・・人間を食べないだけましである。
エリュコの町から離れた丘で 信者たちは集結していた。
命からがら逃げたせいで、地面にへたばったり寝込んだり・・・
その様子を見たラファーエル王子は、落胆し空を仰ぎ見る。
「我らの愛と平和は、バジリスクに通用しなかった!! それは我らの信念がたりないのではないか!?」
ラファーエル王子は 自らの愚かさと浅はかさを悟った。
そして・・・・考える!!
我らには何かが足りない! そう! その何かとはなんだろうか!?
もしや・・・信念がたりないのでは!?
信念!!!
ラファーエル王子は、その信念を手に入れるため、教徒たちをつれて山に入り修行をすることを決めた。
山岳地帯を走り、滝に打たれ、自然と対話し・・・自らの信念パワーの強化に努める。
なんとなく・・・山岳宗教化する女神フレイエミア教であった。
その後、エリュコの町に あれほど大量にいたバシリスクが突如として消え去った。
バシリスクに関しては、元々が召喚生物であったため、元の世界に帰っていったのかもしれない。
だが!! 消えたのはバシリスクだけではなかった。
ラファーエル王子が不思議がったように エリュコの町の住民、そして南部独立軍も消え去っていた。
エリュコの町は現在、無人の町となっている。
いや! ラファーエル王子が訪れていた時点で すでに無人だったのかもしれない!
村人が突然消えたというよくある都市伝説のように、反乱軍はこの地上から消え失せたのである。
短期間であるとはいえヴィジャナル王国を震撼させた内乱は、南部独立軍の蒸発という よく分からない結末によってあっけなく終わった。
ただし ヴィジャナル王国軍としては 一度も反乱軍に勝てず、勝ち逃げした南部独立軍を苦々しく思ったことは間違いない。
南部独立軍の者達はどこへ消えていったのか!?
少数の目撃者によれば・・・多数の船がエリュコの港から出帆し、南へと向かったということである。
リュミィルに率いられた反乱勢力は おそらく紅茶海を渡り南方の大陸に向かったということなのか!?
たしかに、このまま戦闘がつづけば、多数のヴィジャナル王国軍に囲まれ、遠からず食糧が底をつく。
ジリ貧による大敗北を予想したリュミィルは、南部独立軍が健在のうちに、この大陸から脱出し新天地を求めたのかもしれない。
語る者がいない以上、知る由もなかった。
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ラファーエル王子は単身でエリュコの町に乗り込み 紅い髪のバジリスクの異名をもつ反乱軍指導者と直談判した。
そして・・・彼らをなだめ、さとし、説得し、
ついに! 反乱軍をこの大陸から退去してもらうことを承諾させた。
こうして、ラファーエル王子の活躍により ヴィジャナル王国を震撼させた内乱は終わったのであった。
もちろん このような事実はないのだが・・・
・・・・・荒唐無稽な噂話として 多くの話が巷にあふれることとなる。
ラファーエル王子は敵の指導者とカードゲームで勝負を挑み そして、勝利して彼らをこの大陸から追い出した。
ラファーエル王子は敵の指導者に愛を囁き あれあれなこれこれをして退去させた。
テニス勝負をした。
大喜利勝負をした。
百物語で怖がらせた。
などなど・・
ただし!!
この噂を広がってるころ ラファーエル王子とおまけのホールン伯は山岳地帯で修行中のため 噂は耳にはいっていない。
ラファーエル王子は噂のことを知るすべもなく 噂だけが独り歩きをして 国中に広がったのであった。
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謎の平和的解決!?によって 南部独立軍は海のかなたへと去り、その功績によって 女神フレイエミア教団の名声は上った。
今や!! 一般庶民でさえ、女神フレイエミア教団という存在を認識させ 一大ブームを巻き起こしている。
巷では、勝手に(無許可で)女神フレイエミアの名が付いた菓子、饅頭、薬類などが 売られていたり・・・
街角では 子供たちが女神フレイエミアごっごという謎の遊びなどがはやっていた。
だが!! ブームを巻き起こしている割には 信者はあまり増えなかったのである。
ラファーエル王子が率先して 山岳地帯で修行などをおこない山岳宗教化してしまったため
入信を避ける人たちが多かったのだろうか!?
しかし!!
ヴィジャナル王国にとっては 政治的には かなり比重の大きい宗教組織となってしまった。
教団創立者が第三王子であるラファーエル王子・・・・そして、平和裏に反乱軍を国外に追い出したという功績!!
国王であるメルンスルトは この女神フレイエミア教団を無視できない状態になっていた。
ラファーエル王子は セル―カ王国との和平を望んでいる。
山籠もり修行をしているラファーエル王子からも たびたび手紙が送られてきていた。
愛と平和とか書きつられてるため 国王はまったく読む気もなかったが、主張してる意見だけは理解していた。
というか・・・もはやヴィジャナル王国には戦争継続は無理なのである。
飛空艦隊の旗艦が拿捕されたあげく大半は撃沈。陸軍兵力も合わせて6万近くが失われた。
それだけではない!
国王メルンスルトは自室の窓から目撃したのだ!!
おそらくあれは敵の兵器・・・
・・・・桁違いの破壊力。
まさに、恐怖そのもの!
たった一発で あの巨大で壮麗な宝物倉を吹き飛ばしたのだ!!
おそらく聖女帝国が本気になれば王都が危ない!!、
それに・・・あのような破壊行為、略奪を王都チャイアだけではなく
ヴィジャナル王国中でおこなわれ 莫大な資金が失われつつあるという・・・・
深刻な問題である。
「ラファーエル王子によって 内乱だけは収まったが 現在、国内は混乱している。
負け戦のために戦力の大打撃、資金難・・・そして!! あのナバ―ラル伯さえ囚われてしまったのだ!!
講和しかない! 講和の準備だ!」
御膳会議にてヴィジャナル王国国王であるメルンスルトは 王座から立ち上がり宣言した。
「お待ちください。 あのような小国に敗戦したなどと 対外的に我が国が 軽んじられる原因となります」
大蔵相のエリクス伯は反対を表明した。
「セルーカは小国かもしれないが 情報によれば 聖女帝国と名乗る国が後ろ盾となっている。
西方大陸に派遣した陸軍3万、飛空艦隊のほとんどが失われたのだ。
聖女帝国はかなり危険な相手だ。 もうこれ以上の損害を出すわけにはいかない」
エリクス伯の意見に反論する宰相のカリスト。
「しかし・・・です!! 我らヴィジャナル王国の軍事力はこの大陸で最強であり、敗北などありえないのです」
「すまないなぁ エリクス伯!! これ以上の戦闘は 著しい戦力低下となり、わが国の存立の危機となる」
国王の御言葉によって、エリクス伯は椅子に座り込んでしまった。
-------------------- To Be Continued 第二話で退場したミルヤの伏線的な登場!!




