文明開化の夜明けは遠い
月の煌めきが深夜の海を照らし出し、波の音さえも聞こえない静寂な世界。
GM-キシの10体は飛空船の上甲板で微動だにせずに静かに睨みあっている。
そうです!! はるか沖合とはいえ、海にプカプカ浮く海坊主凧の目と
キシたちの無機質な目が 互いに睨みあっていたのである。
海坊主凧は恐怖していた。
こいつらはやばい! 人間! いや生物としての感情を持たないほどの凶悪な目だ!!
ここで目をそらすとやられる!! 海坊主凧の額!?に汗が流れた。
海坊主凧は、キシたちと睨みあいながら後ずさり
そして、静かに地平線のかなたへと撤退していくのだった。
そんな静寂な世界!?と違いサラは船内の研究室でテレビを見ながら、とある作業をしていた。
ちなみに、この異世界では、テレビ電波は飛び交っていないので、船内のメアたちが、
サラのためだけのテレビ放送をしている。
現在放送しているのは、朝から晩まで歌合戦!! ときたま乱闘騒ぎをおこすというハプニングつき。
そんなテレビ放送を見つつ、
黒焦げ魔石の黒こげになった表面を 慎重に削っていく。
ズリ~ズリ~
不気味な音である!!
発泡スチロールのこすれるような音! 実に不快な音!!
ズリ~ズリ~
これは・・・・
昼間のオーク騒動と ミレイユの大泣きの成果により
手に入れたヤマタノオロチの黒こげになった細長い魔石。
黒焦げ部分を削り、磨いているところである。
「僕には感じます!! この黒い物体に、かなりの魔力を感じることを・・」
ズリ~ズリ~
魔石を削っていく~
そして、徐々に黒いすすをとりのぞき、魔石の実態が明らかになった!!
「なんだこりゃゃゃぁぁぁ」
サラの叫びが研究室に鳴り響く。
も・・もしかすると・・・
「わぁ~~! 」
再び、狂喜の掛け声!
サラは、恐る恐る触る。匂う。
「なんと~~~ うぎぅぅぅぁぁ」
「奇跡だ!!!!!」
深夜にもかかわらず、サラの喜びの歓喜が研究室を覆う。
ちなみに ミレイユは泣きつかれて、自室でぐっすり寝てました。
「こわいよ~ 地下はこわいよ~」
ときおり寝言を吐きながら、ベットをゴロゴロと・・転がり・・・・
ゴロゴロ ドスン!!!
ベットから落ちるのであった!!!
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次の日の朝。
太陽の日差しで海面を照りかえし、青い空が地平線まで続く。
海辺のパラソルで、寝椅子で寝転がりながら
兎肉料理を食べるミレイユ。
ご機嫌がよいらしく笑顔である。
昨日のことをすっかり忘れたのか!? それとも、おいしい兎肉のせいか!?
すっかり元気になったようで安心である。
サラも気持ちよく、兎肉を食べる。
あまり食べると太るのだが・・・
・・・・そのあたりは 気にしてるのか、ほどほどの量で食べるのをあきらめていた。
そして、朝食が一通り終わり、コーヒータイム。
サラは昨晩調査したヤマタノオロチから取れた魔石の驚くべき結果をミレイユに見せることにした。
パラソル下のテーブルに サラはドヤ顔をしながら、ある物体を置く。
ドスン!!
「サラちゃん なにこれ? 不思議な形をしてるね!!」
そこには・・・
徳利が置かれていた。
「前世の記憶によれば、これは とっくりと言いましてね。 お酒を入れる器です」
「たしかに、強い魔力を感じるけど 何か使えるの?」
「お酒をつくれる!!」
「サラちゃん! お酒は20歳から・・・」
「うぬぬぬぬっぬぬぬ」
「体に悪いから・・・あと3年は わたしが預かっときます!」
サラは生後半年ちょっとだが、ミレイユの身体をコピーして作ったホムンクルスであるので、
身体的にはミレイユと同じ年齢17歳。
あと3年は、飲んだらダメです!!
「え~~~~~ おねーさま、やめて~~」
「でも、この徳利から いい匂いが出てるよね」
ミレイユは、すこし徳利を傾けると、
ジャバ~~
勢いよくお酒が 流れ出した!!!
いつまでも・・・いつまでも・・・・
ジャバ~~
酒がなくならない魔法の徳利!!!
サラの予想では、付近の大気中から水分を吸い上げ、魔力による作用で酒が造られてるのではないかと予想した。
さすが 酒好きという伝説のあるヤマタノオロチである。 体内にこんな徳利が仕込んであろうとは・・・
その無限に出続ける酒が、パラソル付近一帯を濡らし、酒の匂いが充満する。
「ちょっと・・・これは匂いで酔う!!」
「おねーさま これは 無限にお酒がでる徳利よ」
「え~~ すごいというか・・・・ 人をアルコール中毒にする兵器よね! 呪いの徳利ってとこかしら」
「おねーさまには お酒=体に悪いって、発想なんですね!!」
「ちがったの!?」
「少量なら 体に良いです」
「生後 半年の幼児のいうことではないよね」
「体は17歳ぐらいです」
「それでもアウト」
「中身の精神は・・・」
「きゃぁぁ それは言わないで 知りたくない!!」
ミレイユは手で耳を塞いだ。
「・・・・・・・」
「僕は 酒として飲みたいけど、このアルコールを使って、
魔法にたよらない自動車やバイクが作れないかと思う」
「自動車って?」
「馬がいなくても 動く馬車みたいなものだよ」
「魔法を使わず 動かすことができるの!?」
「作ってみないと分かんないけど、作れると思う」
サラの文明開化の意欲がたかまる。
この徳利の裏には、数値が書かれており、数値を書き換えることで
アルコール度数を変えることができたのであった。
数値によっては、酒ではなく燃料にすることも可能である。
いわば、無限に出続ける油田を手にいれたようなものである。
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その後、数日にわたって、サラは研究室に籠ることになった。
ミレイユのほうは、一人でダンジョンなんか怖くて入れないし、
もちろん 一人で入ろうなんてしたら サラが引き留めるだろう。
ゴーレムのメア型とキシ型が、連携をとりつつダンジョンにもぐり、
鉱石や資源を探し 採掘することになった。
牢屋時代と同じパターンの採掘方法である。
飛空船の修理をほったらかして、サラは自動車づくりへと邁進するのであった。
・・・一週間後
海面を水しぶきをあげて、猛スピードで走るものがあった。
日光の照り返しで まぶしく光るオープン式水陸両用車!
四輪駆動・ウォータージェット推進方式。
陸だけではなく 海をも走れる車両である。
サラは操縦席で、そのスピードを堪能し、助手席のミレイユは顔を真っ青にしている。
「ひぇぇぇ スピードのだしすぎ~」
ミレイユの叫びは、アルコール式エンジンの音で かき消されていた。
島の周りを猛スピードで走り、急カーブ、ドリフト走行! スピン!
悲鳴をあげるミレイユ!
サラは、風のように走る水陸両用車の虜となり、そして風になった・・・・
スコ――――ン
船底を岩礁に乗り上げたらしく、そのままの速度で空へと駆け上る水陸両用車。
「飛んだ~~」
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
ミレイユの最後の叫びであった!?
水陸両用車は 弧を描くように、空高く舞い・・・・そして・・・落ちた!!
ドスン!!
実に乾いた音だった。
浜辺の砂が静かに舞い上がる。 砂地というクッションのため・・・たいして被害は!?
みごとに 二つ折りに大破した水陸両用車が砂地にめり込んでいました!
大破です。 みごとな二つ折り大破です。
「びどーーーーい」
「ごめーん! おねーさま」
二人の涙声が 波の音で消されていく。
ウ~~ウ~~ウ~~
メアたちはサイレン!?を鳴らしながら、すぐに駆けつけてくれた。
事後現場は赤色灯によって辺り一帯を照らす。
サラにとって赤色灯は、なつかしい前世の思い出だが、ミレイユにとっては不気味そのものである。
ちなみに、事故が起きた場合、赤色灯をまわしながらサイレンを鳴らすように設定していた。
もちろん、これはサラの前世を再現するという趣味である!!
ミレイユ、サラは 二つ折りになった水陸両用車の中で、
エアーバックに埋もれて動けない状態であった。
安全装置として、エアーバック搭載はサラ的にはあたりまえなのである。
メアたちは、エアバックを外していき、ミレイユたちを救出するのであった。
「怪我がなくてよかった。 おねーさまは大丈夫!?」
「もう、あんな怖い乗り物には乗らない!」
「ごめん、次はもっと安全なものをつくる」
「え~~・・・・・・ また作るの!? でも 私は二度と乗らないよ」
怒ったようにミレイユは言い放つ。
「うっうう 」
こうして 痛い目に会ったミレイユは、メアに抱きかかえられながら 飛空船へと帰っていくのだった。
「大破した車両の後片付けを、おねがいね~」
サラは メアに後片付けを押し付けて ミレイユの後を追うのである。
「おねーさま ごめーん おこらないで~」
こうして、初のアルコール自動車試運転は、みごとな大破となったのである。
原因はスピードの出し過ぎです!!
--------------- おまけ劇場!!! --------------------
警官の服を着たメアたちが、いそがしそうに走り回り、
事故現場の周りは、黄色い帯の封鎖線で囲まれていた。
その外側をGM-キシたちが 野次馬のように遠巻きにして 事故現場を眺めている。
サラの前世における世界を再現しようとする試みである。
なにやら、カメラを担いだ人たちが、事故現場に走り込んできた!
サラ専用のテレビ局の撮影隊とレポーターである。 なにやら実況中継を始めたようだ!!
(撮影スタッフもレポーターもサラの作った専用ゴーレムである!!)
そしたら、何やらBGMが流れ、背広を着た刑事(これもサラの作ったゴーレムである)が、
スポットライトとともに現れ、オーバーアクション的演技で語る。
『 これは 事故に見せかけた殺人事件だ 』
ちなみに 誰も死んでません!!
そこに髪がぼさぼさの探偵(これもサラが、あと略)が、いきなり現れ、
これまたオーバーアクションしながら宣言する。
『 犯人は この中にいる! 』
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飛空船・艦橋室の畳の上で、ミレイユとサラはミカンを食べながら、ちゃぶ台に乗っているテレビで、
事故現場の実況映像を見ていた。
「・・・・サラちゃん! 」
「・・・・・おねーさま。なにかな!?」
「わりと面白いね! この茶番的なとこがなんとも・・」
「楽しんでくれて うれしいです!!」
「・・・・・」
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その後 探偵が犯人(これもサラの作った設定ゴーレム)をつきとめ、 格闘シーンが流れた後、刑事によって逮捕される。
しかし、犯人は なかなかシラを切って白状しない。
そこに なにやらBGMが流れ出し 老人(サラのつくった あと略)がスポットライトとともに現れ、
なにか印籠をみせると、なぜか周りの者がひれ伏した。
そして、ナレーションとエンディング曲まで流れるのである。
ついでに・・・・・・ 次回予告まで流れました。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ) えっと なんのドラマなんだろ!?




