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還る場所

 そして、作戦通り幸希と戦い、負け消えたはずなのになぜ私たちは存在している?


「それがオレの願いだからな」


 私たちはその声に驚き、向く。さっきまで二人しかいないと思っていた空間に新たな人物が現れたということだった。


「!? ……なるほど、あなたですか」


 アザゼルが一足先にその姿を確認する。私も、そのあとにすぐに認識した。


「な……幸希!? どうしてお前がここに……」


 私の疑問の言葉を幸希に投げかける。すると、怪訝そうな目つきで私を見て答えた。


「てめぇはうるせぇよ、深内。しかも名前で呼んでんじゃねぇ」

「な……お前、教師に向かってなんて口をきいて……!!」

「いや、今のお前教師じゃないし。つーか、もとから教師でさえないじゃねーか」

「う……」


 た、確かに……。


「……それで、幸希様の願いというのは?」


 私が幸希の言葉に怯んでいると、アザゼルが質問する。


「ああ、それは――」


*****


「オレが願うのは……深内とザドに、還る場所を創ってやってほしい」

「それが、お前の願いなのか?」

「ああ……できるか?」

「できるが……その前に理由を聞きたい。なぜその願いにする?」

「一言でいえば……悲しいから……かな」


「確かにそいつらはこの世界にいて、生きていたんだ。オレはそれを知っている。オレはその記憶を持っている。それなのに、どこにもいけないなんて……本当に悲しいじゃないか」


「深内もザドも同じ。願っていたのは、世界の平和だった。偽物なんかじゃない。本当なんだ」


「そうオレは、天見たちに気付かされた。大切なもの。記憶も、感情も……全部、真実なら、そう思うんだ。だから理由はオレの勝手な……独りよがりだ」


*****


「ふ、馬鹿だな。お前も折角の願いを私たちのために使うなど」


 私は幸希のことをふっ、と笑う。しかし、内心では、幸希が私のことを想ってくれたんだと、嬉しさを感じていた。


「どうでもいいだろ。別にオレの……ぼくの勝手だろ」


 そう言って幸希はそっぽを向く。


「ふ……ぼくか……」

「ああ、この魂はオレだけのものじゃないからな」


 三和田浴衣……。その記憶を思い出したということか。


「でも、ということは世界は救われたということですか?」

「そうだな……お前には見透かされていたのかと思うと、癪だが」


 皮肉っぽく答える。確かに……そう考えると私もアザゼルに乗せられた感じだったな。少し癪だ。


「まぁ、いいさ。さぁ行こうぜ。オレたちの還る場所に」


 そう言って、幸希は私たちに背を向ける。そしてその先……光に包まれ良くは見えないが、この空間の外であろう場所に、歩いて行った。


「……変わらないな。あいつは」

「そうですね」


 私たちは、そんな幸希の後姿を眺め、言い合った。

 不器用だけど、でも誰よりも優しい。

 死してなお……いや、変わってもなお、変わらないもの。


「お前が私たちを救ってくれたんだ。それなら私たちも……」

「あなたに、何かしないといけませんね」


 私たちの願い――。


 決まってはいる。お前は否定するんだろうな。でも――


「この願いを……あなたは聞いてくれるか? 神よ」


 空間に向かい、私はそう問いかけた。


『ああ……いいだろう。その願い聞き受けた』


 私たちはそれを聞き、互いに微笑む。

 そして私たちも、その光に向かって、清々しい気持ちで歩いて行った。


 私たちはお前のくれた場所で幸せになろう。

 だが、お前がいるべきはここじゃない。

 だから……今度はお前に送り出されるのではなく、私たちが送り出そう。

 さよなら、世良……。


 ――死んだ人間は生き返っちゃいけない。それは私も同じように思う。

 でも、お前はまだ死んではないだろ?

 お前はただ、一つの役目を終えただけなんだから。


 これから先の……『世良幸希』と『三和田浴衣』すべてを受け入れた『お前』の人生は、始まったばかりなんだから――

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