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二人の絶望

 ……ここはどこだ? オレは確か消えて……それで――


「よくやってくれた」

「!? その声は……神か?」


 よくやってくれたってことは……。


「世界は救われたのか?」

「ああ」

「そうか……」


 オレは安堵のため息を吐いた。けど――


「救ったのはオレじゃない。オレは途中で投げ出したし、滅ぼそうともした。実際に世界を救ったのはあいつらだよ」

「それでもお前がいなければ世界は救えなかった。お前の存在が世界を希望へと導いた。それは誇ってもいいことではないか?」


 ……確かに、三和田浴衣としての人生を失ってまで、やったことだ。一つとなったオレは、誇ってもいいのかもしれない。


「世界は救われた。そして、そのために尽力してきたお前の願いを、一つだけ叶えてやろう」


 オレの願いを一つ? なら――


「ならオレが守った……『守りたかった明日』を見てみたい」

「それが願いか?」

「……いや、違う。きっと昔の『俺』なら、そう言っているだろうなってだけだ」


 だから昔、『俺』は神に、使命を全うした後に、生きたいと願うことはいけないことなのかと聞いた。

 自分の救った世界を見たいってそう思った。


「でも、いいんだ。それはあいつらに託した。……それに、オレはもうあの世界には行けないし、いっちゃいけないんだ」


 オレは死んだ人間だから――。


「なら、何が願いだ?」

「オレの願いは――」


*****


「ここは……どこだ?」


 私は意識を取り戻すと、見知らぬ場所にいた。


「目覚めましたか……」


 声に反応して視線をずらすとそこには、一人の小学生くらいの男がいた。私はそいつに見覚えがある。


「な、お前はアザゼル! どうしてここに!? というか、なぜだ!? 私は死んだはずなのに、なぜお前に会えている!」


 私に名前を……『深内詩』という名前を付けた人物。それがこいつだった。


「驚いているのは私も同じですよ……。私もあなたも、還る場所になんてない存在のはずなのに……どうして」


 驚いているといいながら、普段通りの感情を読み取らせないポーカーフェイス。そうして何かを考えていた。

 私も何かを思い返すように、自分の記憶を探った。


 私は知らない間に世界にいた。わかっていたのは、私が女であることと、この世界の知識だけだった。

 私はいったい何者なのか。

 記憶喪失というものなのかと、よくわからないなりにも考えて、町を放浪としていた。

 そこでアザゼル……ザドキエルが声をかけてきた。


 私とは何なのか。

 何故ここにいるのか。

 絶望に創られたことを初めとして、それを話してくれた。

 私は、信じようとしなかったが、相手のただならぬ雰囲気に気圧され、事実だと認めざるを得なくなった。


 その後、私はザドキエルの指示により、夏の途中であったが、教師として学校に通うことになった。その前に家やお金も渡されていて、最初の給料が手に入るまではそれで生活した。

 その学校には、世良幸希という人物が通うようになり、彼の目的が私たちとは逆であると説明され、注意しておくように言われた。

 とは言っても、私は学校にいる間は、普通の人間として生活するために、そんなことは忘れて過ごしていた。


 その生活をしている中で、私は如月優たちに出会った。

 活動はしていたが、私が学校で教師として働くまで、顧問となってくれる人物はおらず、正式な部活ではなかった。だが、その年の夏ごろに、ここで教師として働くようになったため、如月が私を誘い、私は理想郷創作部の顧問となった。と言っても、別に私は活動に参加したりはせず、ただ形としてなっただけだった。


 だがあいつらが、自分の目標に向かって……希望に向かっていく姿は、その時の私にはとても輝いて見えた。

 そんな中起こったのが、あの事件。

 部の全員が死ぬという事件。

 その死に方はあまりにも残虐で、事故などとは到底思えない。

 私は何が起こったか分からず混乱した。

 そこにザドキエルが現れ、私の記憶を戻し、状況の説明を始めた。

 とにかく、この件は自分の力でなかったことにするとザドキエルは言った。私もそれで了承し、再び記憶を消すことになった。


 このとき私は、みんなの記憶を消さないでほしいとお願いした。

 なぜかと聞かれ、私はこれでもあいつらの部の顧問で、だからあいつらの生きていた証を残したいと、そう伝えた。ザドキエルはその言葉に迷った風にしていたが、承諾してくれた。

 そして私は、如月たちがみんな事故で死に、そのことを学校の人もみんな隠していて、話題を出してもいけないとそういうことになった。


 この後も時々、ザドキエルは突然に私の前に現れては、私の記憶を戻して、学校生活をしつつの結果を報告させられたり、また逆に情報を話されたりした。


 そうして時はさらに過ぎて、世良は三年になる。そこでは、世良の担任になる。

 秋ごろには、接する時間も増えていき、記憶のないときの私は、その時間がそれなりに気に入っていた。


 そしてこのときに、世良から如月の話が出てきた。

 私は初め、ただその話をされたことに驚いた。そして、深く関わるなとそう言った。

 だが後に、そのことを深く思い出そうとしたせいか、私は一時的にその真相を思い出した。

 世良が如月に会いに行くとき見送ったのは、その真実を思い出していて、早く止めてほしかったからだった。


 そして、この記憶は再び如月たちの事件が終わった時に封印された。いや、そのときにはすべてを忘れた。もう私にはそれを覚えておく必要もなくなったから。


 そうして時間が流れ幸希と戦う数日前の日にまで飛ぶ。

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