51 第三の序章
『人間や魔物から能力を奪取する能力。
物や他者の能力を調べ把握する能力。
物を時間を止めて収納する能力。
以上で宜しいのですね?』
今居る真っ白な空間で、唯一の刺激である語りかけて来る女の声。
彼女は今から俺を送る異世界の女神らしい。
俺は頬が緩みそうなのを堪えながら、腕を組んだポーズで鷹揚な感じに頷いて見せた。
「ああ、それで頼む」
『承りました。貴方に祝福として要望を満たす能力を差し上げます』
おぉっし!!
やばい。大声で笑い出しそうだ。
まさか3つの求めたチートの内、全てにOKが出るなんて。
これで勝ったも同然だな。
能力強奪チートは自身を万能に強化出来る上、敵の弱体化を同時に行える最高のテンプレチートの一つだ。
正直、これさえあればどうにかなる。
次はステータスチェック能力。
これはデフォ装備の主人公は多いけど、強奪チートを最大限に活かすには必須の能力だ。
対象の潜在能力を見抜いたりするのにも使えるし、損になるはずが無い。
最後はアイテムボックス系。
うん、もしかしたら向こうの世界にもアイテム鞄とか有るかも知れないけど、無制限のはそうそう無かったり超高値がついたりするケースは多い。
小説みたいにそれを俺が入手出来るかどうかは分からないからな。自分で言うのもなんだけど、欲をかかずにこういう所で安牌を選んでおくのが違いの分かる転移者ってとこだなw
しばらく待つと、三つの力が俺の深いところにくっついて来るのを感じる。
しかし俺に異世界転移なんてことが本当に起こるだなんて思わなかった。
そういえば、人間の創作的な閃きってのは実際に脳が高次元の存在とかから発される電波を受信しているんだとかキテること言う奴が中学でいたけど、そっち系の小説が元の世界で流行ってたのも、世界のどこかで実際に起きたことが関係有ったりとかしたのかもな。
ま、良いか。俺に異世界トリップの知識を蓄えさせるためにあの流行が有ったとでも思っておこう。
正直つまんない現実世界で生きて行くのダルかったしな。
……彼女とかも出来たこと無かったし。
……家は、姉ちゃんが誰か男捕まえて来るだろ。
流石に、家族や向こうの友達ともう会えないって事は何も思わないでもないけど、今はそれ以上に期待が有る。
剣と魔法のファンタジーの異世界だっていうし、そこで生きて行くのに優位を得るためのチートも手に入った。
ハーレム、内政、成り上がり……。
そういった異世界物の成功者の道は強奪チートを使えばどれも難しくは無いはずだ。
「じゃあ、行ってくるぜ」
俺がそう言うと、金色の光が身体を包んで行く。
なるほど、どうやらこの光が俺を異世界に送るものらしい。
『ぷ、くく……。ええ。逝ってらっしゃい』
え? 今、女神が笑っ
誰もいなくなった空間で、
『ひぃーっひっひっひっ! あぁーっ! まっじウケるわ! あんな糞馬鹿ひっかかるなんて久しぶり! そりゃね、どのPAも過去に大活躍したぶっ壊れだけどさぁ。この世界でもそれが通用すると思ってるとかマジ低能! 「自分で言うのもなんだけど、欲をかかずにこういう所で安牌を選んでおくのが違いの分かる転移者ってとこだなw」とか何? 大草原不可避ですわー。他の人にも聞かせてやりたかったレベルで痛々しいわー。いやー、アタシら神様なんだから心くらい読めるって思わないのかな。思わないか。馬っ鹿だしぃ?』
黒髪黒目の浅い顔立ちの女神が嗤った。




