↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

06 月若と百蟹図 二つの難題

挿絵(By みてみん)


 こうして山三郎は、銀杏の前を連れて逃げることになった。

 ところが、追手と戦っている隙を突かれ、銀杏の前を奪われてしまう。


 悲しみに暮れた山三郎は、もはや生きていても仕方がないと、腹を切って死のうとする。

 そこへ、父親の三郎左衛門とともに貞国のもとへ向かっていた鹿蔵が現れた。

 鹿蔵は、貞国のもとへ向かう途中で伴左衛門たちに襲われ、三郎左衛門が殺されたことを山三郎に伝える。

 それを聞いた山三郎は、死ぬのを思いとどまった。

 「父上の仇は、俺が討つ」

 そう心に誓い、復讐を決意するのだった。


 その頃、南無右衛門は、密かに大和の国の様子を探りに来ていた。

 その途中、木陰に血まみれで倒れている柏木を見つけた。

 「いったい、何があった?」

 南無右衛門が驚いて尋ねると、柏木は苦しそうに答えた。


 月若と銀杏の前は、蜘手の方と道犬の陰謀によって命を狙われることになったという。

 柏木は月若を連れて逃げている途中、眼平の手下と戦い、その結果、深い傷を負ったのだった。

 「月若はどこだ?」

 南無右衛門が尋ねると、柏木は、

 「若君は無事です……近くにいます」

 と答えた。

 だが、そこまで言ったところで、柏木は息絶えてしまった。


 南無右衛門が慌てて辺りを見回すと、少し離れた木陰で人の気配を感じた。

 そっと近づくと、眼平の手下たちが月若を連れ去ろうとしているではないか。


 南無右衛門は、杖に仕込んでいた刀を抜くと、眼平の手下たちを一気に蹴散らした。

 そして月若を取り戻すと、自分の家へ連れて帰った。

 月若を匿うためである。


 こうして、南無右衛門が月若を匿う暮らしが始まった。

 この頃には、月若は鼠の呪詛からすでに回復していた。

 ただ、呪詛によってむしられた髪はまだ生えておらず、頭は坊主頭のままだった。


 そんなある日、京の琵琶の師匠のもとで修業していた文弥が、久しぶりに里帰りしてきた。

 家族がそろい、しばし穏やかな団欒の時が流れた。

 そこへ、二人の客が訪ねて来る。


 一人は、南無右衛門が「百蟹図」の行方を尋ねて回った画商の一人だった。

 画商は、とうとう「百蟹図」を手に入れたという。

 「百両出してくれるなら、今すぐ売ろう」

 しかし、南無右衛門には、とても今すぐ百両を用意することなどできない。

 「少しだけ待ってもらえないか」

 そう頼むと、画商は、

 「それなら、今日の午後十時まで待とう」

 と言った。


 そして、もう一人の客は眼平の手下だった。

 こちらは、南無右衛門が月若を匿っていることなど、すでにお見通しだった。

 「月若を、今すぐこちらへ渡せ」

 そう迫られた南無右衛門は、仕方なく答えた。

 「分かった。それなら、俺自身の手で月若を殺し、その首を渡そう」

 ただし、と南無右衛門は続けた。

 「若君を手にかけるのだ。せめて、その前に十分に念仏を唱えてやりたい。少しだけ時間をくれ」

 すると眼平の手下も、

 「それなら、午後十時まで待ってやる」

 と答えた。


 こうして南無右衛門には、午後十時までに解決しなければならない大きな問題が二つもできてしまった。

 何か解決策はあるのだろうか? 


ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。