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05 藁人形の呪詛による謀略

挿絵(By みてみん)


 ある時、今度は蜘手の方自身が体調を崩し、苦しそうに床に伏してしまった。

 心配した貞国は、道犬に相談した。

 すると道犬は、

 「頼豪院という、たいそう腕の立つ祈祷師がおります」

 と教えた。


 貞国に呼ばれた頼豪院は、何食わぬ顔でやって来た。

 そして蜘手の方の様子を見るなり、

 「これは……呪詛を受けているのではないでしょうか」

 と言った。

 さらに、

 「庭の隅の土を掘ってみなされ」

 と告げた。

 言われた通りに土を掘ってみると、なんと二体の藁人形が入った白木の箱が出てきた。

 さらに箱の底には、一枚の紙が入っていた。

 そこには、

 「蜘手の方と花形丸の二人を呪詛する」

 と書かれていた。

 しかも、その文字は銀杏の前の筆跡によく似ていた。


 これを見た貞国は、驚き、そして激怒した。

 「銀杏の前が……!」

 貞国は、家臣の黒星眼平に命じた。

 「銀杏の前と月若の首を打て!」

 しかし――。

 この呪詛騒ぎも、もちろん蜘手の方と道犬が仕組んだ罠だった。


 その頃、平群の下屋敷にいた名古屋三郎左衛門と山三郎の親子は、この騒ぎのことを知った。

 三郎左衛門は、すぐにすべてを察した。

 「これは、道犬たちの仕業に違いない!」

 そう考えた三郎左衛門は、夜道を急いで貞国の館へ向かい、真実を伝えようと馬を走らせた。


 ところが、その途中で思わぬ人物に出会った。

 「伴左衛門……!」

 かつて「草履打ち」の辱めを受け、桂之助のもとを追い払われた男だった。

 伴左衛門は、あのときの恨みを忘れていなかった。

 山三郎に復讐するつもりで、夜な夜な平群の下屋敷の近くをうろついていたのである。

 そして暗闇の中、三郎左衛門を見つけると、山三郎だと思い込んでしまった。

 「山三郎め!」

 伴左衛門は、三郎左衛門を山三郎と間違え、そのまま殺してしまった。


 同じ頃、黒星眼平も大勢の部下を引き連れ、平群の下屋敷へ到着していた。

 「月若様と銀杏の前様をこちらへ渡せ!」

 眼平は二人を引き渡すよう迫った。


 相手は大勢、こちらはわずかな人数。

 まともに戦えば、とても勝ち目はない。

 そう判断した山三郎は、月若と銀杏の前を連れて逃げようとした。


 すると、そこへ月若の乳母である柏木という女が現れた。

 柏木は、山三郎にこう言った。

 「私が月若様をお連れして逃げます。山三郎殿は、銀杏の前様を連れてお逃げください」

 柏木の目には強い決意が現れていた。 

 「二手に分かれたほうが、追手を振り切りやすいでしょう」


 柏木は、ただの乳母ではなかった。

 女性ながら薙刀の名手という、実に頼もしい女だったのである。

 その言葉を聞いた山三郎は、銀杏の前を連れ、別の道へ逃げることにした。


 果たして月若と銀杏の前は、眼平たちの追っ手を逃れることができるのか?


ここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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