11 刀剣の稲妻ー五条坂の惨劇
やがて明け方になった。
二人が待ち構えている場所に、雲に稲妻の柄の着物を着て、編笠をかぶった侍が一人現れた。
「父の仇!」
山三郎は待っていたとばかりに叫び、刀を抜いて飛び出した。
すると相手も刀を抜き、
「草履打ちの恨み、今こそ晴らしてやる!」
と言い返した。
二人は激しく斬り結んだ。
しかし、勝負はすぐについた。
明らかに山三郎のほうが優勢で、雲に稲妻の男はあっという間に斬られた。
山三郎と鹿蔵は、男の編笠を取って顔を確かめる。
「……伴左衛門ではない。手下の一人だ」
鹿蔵が言った。
するとそこへ、また一人。
雲に稲妻の柄の着物を着て、編笠をかぶった侍が現れた。
「父の仇!」
山三郎は再び叫び、斬りかかった。
男も応戦したが、やはり山三郎に斬られた。
編笠を取って顔を確かめる。
「これも違う」
山三郎と鹿蔵は、同じことを何度も繰り返した。
三人目も、四人目も、伴左衛門ではなかった。
気がつけば、道には四人の男の血まみれの死骸が転がっている。
何とも凄惨な光景だ。
そこへ、一台の駕籠が通りかかった。
怪しいと思った山三郎が近づく。
駕籠かきは、山三郎の刀を見て、慌てて逃げ出す。
残された駕籠に向かって、山三郎は叫ぶ。
「中にいるのは父の仇、伴左衛門だろう! 外へ出て勝負しろ!」
五人組のうち、すでに四人を斬った。
ならば、この中にいるのが伴左衛門に違いない。
そう思ったのだ。
すると駕籠の中から、雲に稲妻の着物を着て編笠をかぶった侍が出てきた。
ところが、男はなぜか刀を抜かない。
それどころか、山三郎の胸元へ手を伸ばしてきた。
「何をする!」
驚いた山三郎は、とっさにその手を斬り落とした。
斬り落とされた手首は、そのまま山三郎の着物の胸元へ入った。
続いて山三郎は、男の首も斬り落とした。
そこへ、騒ぎを聞きつけた廓の男衆が、棒を手にして山三郎たちを取り囲み始めた。
「まずい!」
山三郎は、斬り落とした首を持って、その場から逃げ出した。
家へ戻る途中、人目のない場所まで来たところで、山三郎は手に持っていた首の顔を確認した。
その瞬間、山三郎は凍りついた。
「……葛城!」
なんと、それは伴左衛門ではなく、葛城の首だった。
さらに気づくと、自分の胸元には、先ほど斬り落とした手首が入っている。
その手は、一通の手紙を握っていた。
山三郎は慌てて手紙を開いた。
そこには、こう書かれていた。
あなた様にお会いした後、伴左衛門が訪ねてきて、会うことになりました。
伴左衛門に会ったのは、それが初めてでした。
彼は、自分が私の腹違いの兄だと言うのです。
道犬が妾の女を孕ませ、その後、その女を私の父に嫁がせた。
その女から生まれたのが、私だというのです。
伴左衛門も、このことを最近になって知ったようでした。
そして伴左衛門は、道犬から預かった金で、私を身請けしてくれました。
これを知って、私は悩みました。
あなたの敵討ちを手伝いたい。
けれど、自分の兄を殺させるわけにもいかない。
だから私は、兄の身代わりになって、あなたに討たれることにしました。
手紙を読み終えた山三郎は、愕然とした。
自分は、とんでもない間違いを犯してしまった。
「こんなことをしてしまった以上、俺も腹を切って死ぬしかない」
そう思い、刀を抜こうとした。
そのとき、一人の男が山三郎に声をかけたーー
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