22 しゃぶしゃぶ
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買い物を終えて、帰宅する途中。時刻は4時過ぎ。日がまだまだ高く、影もまた、大きさを増す。
「はぁ。買い物した後くらい、普通に帰りたいもんだ…」
ひた…ひた…。
「ギョギョッ」
影から現れたのは、サハギン。昨日乱獲したから間違いない。
「サハギンかよ…。昨日アレだけヤラレても、まだ来るか」
脳まで魚野郎に言っても無駄だと分かっても、つい、愚痴ってしまう。
「冷蔵庫にしまうモノがあるから、玉になっとけ」
「ギョーッ、?!」
ーメキメキ、ベキ、メギ、ギリギリ…。コロン。
「はぁ、コレがアメ玉ねぇ…。食べたいとは思わんな…」
取り敢えず、買い物袋の中に入れておく。あんこが帰ってきたらオヤツにでもするだろう。
「せ、先輩が半魚人をアメ玉にした…。コレは夢?」
買い物をしていた先輩の後を付けていた少女。名は白鳥、雫。偶然を装って声を掛けようとしたら、マンガやファンタジーに出て来る化け物を、先輩が一瞬で倒した。この前も様子がおかしかったけど、陰ながら悪の怪人を倒す、ヒーロー的な事をしているんだろうと思い、納得する。
先輩。私は分かってますからねっ。
ひた…ひた…。
ブルブルッ…。
「突然悪寒が…。…早く帰って下ごしらえするか…」
冷えてると言っても、真夏だ。生ものはすぐ痛む。
キャーッ!!
「ッ」
悲鳴が聞こえた場所まで、走るっ。くそっ、買い過ぎた…。日陰に置いて、、悲鳴の元にッ。
ゴポポ…。
「…くそっ引き摺り込まれたか!?」
勢いを付けて影に潜る。…見つけたっ!3匹のサハギンに掴まれて、下へ下へと沈んでいる。
外れて仲間を煽ってる奴を先ずは遣るっ。勢いを付けて奴らの元へ。
「寄ってたかってやり方が汚いんだよッ!」
「ギョベッ…」
良し、あと2匹っ。足を引っ張るヤツら。
「その手を、放しやがれ!」
「ギョッ…」
立場が変わったのが分かったのか、足を離して逃げようとする、後1匹ッ。
メキメキ、ベキ、ギリギリ…。
「救助しねーと…。白鳥……。クソッ」
白鳥を抱えて、急いで影からでる。…どうする。どうすれば良い…。人工呼吸とかするべきか…。
「う…ごほっげほっ、さ、流石です、ね…。先輩」
「黙って大人しくしてろ…」
深山に電話を掛けないと。…こう言う時の緊張感はおじいちゃんが倒れて以来か。心臓が五月蝿い。
[はい、深山です。どうしましたか?]
「俺だ。景盛。知り合いが侵海に引き摺り込まれた。どうしたら良い?」
[…どのくらい飲んでます?]
「白鳥、どのくらい飲んだ?」
「え…。それ、なり、に?」
「それなりだと」
[…残念だけど、普通の人間がアレを飲んで生きれる可能性はかなり低い。…あ、ごめん、あんこさんに代わるよ]
[浚、取り敢えず、家に連れて帰るにゃ]
「家か、分かった」
「ちょ、な、なんです」
白鳥を抱き上げて、家に、
[買い物は持って帰るにゃ]
少し戻って、日陰に置いた袋を持って家に。
「先輩?…普通後輩がヤバそうなら無視する所ですよ?」
無視して、玄関をあける。
[お風呂に入れとくにゃ]
「沸かして無いぞ?」
[塩抜きする様なもんにゃ]
いつも出る時に洗う習慣があるので、浴槽は綺麗だ。……落ち着いて来たんだが。
「あんこ。聞きたいんだが、命に関わるんじゃ無いのか?」
[にゃ?そのままなら死ぬにゃ。娘は運が良いのにゃ〜。王様に吸ってもらえるなんて運命かにゃ?むふふ]
「…吸うって、どうやるんだよ…」
[そんなもん、手でも足でも、口でも丸めるにゃ]
「化け物じゃねーか…」
[ステージ3は人外だって何度も言ってるにゃッ。私も今から帰るから、その娘を塩抜きならぬ侵抜きしておくにゃ]
プツン…。ぷー、ぷー…。
「あの。先輩?」
「はぁ……。風呂を沸かすから待ってろ」
「あの、えっと…」
「白鳥。」
「はいっ」
「落ち着け。お前はこのままだと死ぬかもしれない」
「いや、落ち着けませんけどっ?!」
「知り合いに対処法を聞いたら、塩抜きみたいな感じで風呂にぶち込んでおけと言われた」
「信頼できます!?それ?!」
「俺より長生きしてるおばあちゃんの金言だ。」
「医者でも何でも無いじゃないですか!?」
ーお風呂がワキマシタ。
「取り敢えず沈んでこい」
「ちょ、…もうッこんな事なら勝負…」
白鳥を風呂場に置いて来た。勢いで連れて来たが、普通に不味いのではないだろうか?
「……しゃぶしゃぶの準備でもするか…」
流石に煮えるまで放置はしてなかったから大丈夫だと思いたい。
鰤しゃぶ。白鳥も食べるなら2パックで足りるだろうか?…ツミレと野菜で傘増しか…?鰤カマも追加で焼けばあんこも文句は無いだろう。
「ただいまにゃー」
「ああ、おかえり」
「お邪魔します〜。色々持って来ました」
「助かるよ」
流石に女性用のアレやコレは俺には無理だ。
「鰤を買ったら浚君がしゃぶしゃぶにしてくれるって聞きまして」
「色々って食材か?」
「一応女性用の物も」
「マジで助かる」
「追加の鰤が4パックにゃ〜っ!」
「買い過ぎだぞ」
「正当な報酬にゃ〜」
「…そうか。それなら今日は鰤しゃぶパーティーだな」
「ひゃっふーっ」
「浚君、兄さんも来るけど、いい?」
「4パックも気が引けるから助かる」
「ぶっりしゃぶっ、ぶっりしゃぶ〜」
「元気なおばあちゃんだね。外からまで聞こえてたよ?」
「昼間も貰ったんだろ?」
「生の鰤と鰤しゃぶは別にゃ〜ッ!」
俺、あんこ、深山兄妹、白鳥。5人前なら、久しぶりの大鍋。使う事は無いと思っていたが、出番だ。
先ずは出汁から。鰤しゃぶ用に濃過ぎない様に調整して、漬けダレはポン酢、お好みでゴマダレと鰹出汁のタレも。後はしゃぶしゃぶ後の雑炊の支度で準備完了。
「あの、先輩、上がりました…。何だか凄い騒がしかったんですけど、ご家族が?」
「にゃ?塩抜きが甘いにゃ。もう1時間抜いて来るにゃ〜」
「その前に飯だ」
「え、猫が喋ってしゃぶしゃぶで、…もう1時間ですか!?」
「鰤しゃぶなんだよ。…白鳥も席に座れ」
「あ、はい」
「どうせ、眷属になるのにゃ〜。しゃぶしゃぶはポン酢でお願いするにゃ」
「興味深いね。僕達もなれるのかな?」
「まっさらな状態じゃないと無理にゃ。うみゃうみゃ…」
「美味しい…この出汁が決め手なの?」
「鰤はクセがあるから出汁で抜くんだ。染み込んだ鰤と出汁で漬けダレを付ければ間違いないと思う」
「先輩主夫さんなんですね〜」
「料理は美味しく食べる物。おじいちゃんが良く言ってたよ」
「耳が痛くなる言葉だね」
「最近はお弁当ばっかりだから…」
少し鰤を残して、洗ったご飯を投入。少し塩と醤油で味を整えて、卵とネギとゴマを入れて。
「鰤しゃぶ雑炊だ」
「うみゃうみゃ…」
「猫ちゃんに大丈夫なんですか?!」
「小娘、私はそこら辺の猫とは違うのにゃッ。うみゃうみゃ…」
「見ての通り、化け猫だからな」
「あ、ほんとだ。尻尾が2つ」
「コレからもっと増える予定にゃ〜」
…おじいちゃん。久しぶりに大鍋を出して、あんこと食べたよ。それと、あんこは尻尾がもっと増えるらしいよ。
鰤しゃぶ雑炊。美味しいですよね…。(゜∀゜)




