11 羨望
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深山が帰って、少し、陽が高くなるにつれ、影も大きさを増す。
影の世界。2度入り、戦果を挙げた。
しかし、足りない。
まるで、ナニカに急かされる様に、影を見てしまう。
そう、自分の世界は本当はあっちの海なんじゃないかって。
つい、影を見てしまうんだ。
「あんまり見るとまたお魚に攫われるにゃ」
「…ッ」
「まぁ、浚ならお魚に負ける事は無いのにゃ」
「そうか?」
本当に?
「何なら次は私も行くにゃ」
「え?」
「私もお魚食べたいにゃ」
「侵海の事だよな?」
「塩水は好きじゃ無いにゃ」
「いや、俺も好きでは無いけど」
「問題ないにゃ」
「…泳げたか?」
「何とかなるにゃ」
「……そうか」
一緒に来てくれるのか。
昨日と同じ様にセッティングして、…あんこも隣に居るな。
「準備は良いか?」
「爪も研いで来たにゃ」
「フっ。そうか」
2人を照らす影を見つめる。
影の世界に行く事に羨望を。
今度は2人であの場を泳ぎ、支配する。
影よ、この想いに応えたまえ。
ゴポポ…。
「はぁ、重い想いにゃ〜」
ゴポポポ…。
「仕方ないだろ。小さな時からなんだ」
ゴボボ…ッ!
「上のお魚にゃ〜」
「は?」
「シーザーにゃ」
「マジかっ!?」
ザバァ…ッ!
「シャーッ!!」
ズシャッ…!!
「ギィッ…」
「爪を研いだと言ったにゃ」
…輪切りになって沈んだんだが?
「え、あんこ強すぎない?」
「爪を研がないとダメにゃ〜」
「リロードが必要ってヤツか?」
「そんなもんにゃ。それより、早く丸めて寄越すにゃ〜」
「あ〜、ちょい待ち」
頭だけ入れて輪切りになったヤツを見詰める。
メキメキ…ッ!
腕を伸ばしてこちらに引き寄せる。
「はいよ」
「コレにゃ〜」
「いや、遊ぶのかい」
「綺麗な玉なのにゃ。遊んであげないと勿体無いのにゃ〜」
「…そうかい」
ある程度遊んだら、食べるのだろう。
それよりも、提出用を取らねば。
もう一度頭から入れて覗いて見る。
…いるな。何処か怯えている様に見えるのは気のせいか。
「研究に使いたいらしくてな。悪いが斃されてくれ」
…取り敢えず、3個手に入った。一応連絡をしておこう。
スマホから朝貰った番号に掛かる。
(もしもし、深山です)
「お疲れ様です。景盛です」
(浚君ね、…どうしたの?)
「あ〜。一応報告を。サハギンだっけ?…アレを三体分とあんこがシーザーを爪一閃で斃した。シーザーの分はあんこが食べたから無い。かな」
(…………はぁーー…準備して待っているから猫ちゃんと一緒にこっちに来なさい。)
「…スーパーにあんこ入れて良いのか?」
(バッグの中に大人しく入ってくれないかしら?)
「だってさ」
「構わないにゃ。ちゅーるを用意してくれたらもっとご機嫌になるにゃ〜」
(…用意しておきましょう。待ってます)
「直ぐそちらに伺うよ」
通話を切って、猫が入るバッグを用意。
「久しぶりの遠出にゃ〜」
「歩いて15分のスーパーだぞ?」
「浚と行ったのは病院ばっかりだったにゃ」
「悪かったよ。今度は色んな所に行こうな」
「適度で良いにゃ。私は家猫なのにゃ」
「そうかい」
ふと振り返ると、女子高生2人に笑われていた。しかも同じクラスだ。
「景盛じゃん。腹話術の練習〜?」
「相方は猫ちゃんで〜?」
「まぁな。なぁ?あんこ」
「今からスーパーに買い物デートなのにゃ〜」
「いや、喋るんかい」
「あははっマジクオリティたっか!」
「…マジで喋ってない?」
「小娘、感が鋭いのにゃ〜」
「杏、行くよッ」
「は?待ってよユカ〜」
「…良かったのか?」
「アレは視える類いの子にゃ」
「へぇ。藤森がねぇ…」
「さぁ、スーパーに行くにゃ〜」
「あいよ」
1人と1匹の合わさった影がスーパーまで歩いて行った。
高田杏。オタクに優しいかも知れないギャル。
藤森由香。ギャルに擬態する、視える子。
実は2人とも、景盛ファンクラブの人。




