16回目 お勤めとの折り合い・兼ね合いをどうするか
「────それで、どうするんですか?」
休憩室で待たされた者達は、タクマに尋ねる。
少々不機嫌そうな顔をして。
そんな彼らに、
「分からん」
率直にタクマは答えた。
「このあたりにいた方が、まだ安全そうだし」
となれば、下手に動かない方がいい。
それも時間の問題になるだろうが。
「でも、化け物が来たらどうします?」
そこが問題だった。
「どこにいたって同じか」
「今はいいですけどね」
「あれが来たら、そのうち」
「…………」
しゃべる三人と、一人だけ無言の女の子。
そんな四人はこれからの事をどうしたものかと悩んでいく。
「でも、倒せるなら化け物を倒した方がいいんじゃ」
「それも早いうちに」
「まあね。
夜になってからだと大変だし」
他にやる事もないし、そうしておいた方がいいとも思う。
「仕事がなければだけど」
それが問題だった。
現状では開店休業状態ではある。
化け物が徘徊し、あちこちで人が犠牲になってる。
当然、仕事だって滞ってる。
この会社だけではない。
あちこちでだ。
それだけ化け物の影響は大きい。
これに対して政府も有効な手段に出てる様子は無い。
警察、更には自衛隊。
これらが出動したという話は目にしてない。
110番通報などでは動いてるかもしれないが。
ネットなどで大きな動きが出たという話はない。
それ以前に、警察・自衛隊、役所に公共機関。
これらがまともに稼働してるかどうかもあやしい。
そこでも多くの者達が化け物になってるとしたら。
まともな活動を求めるのは無理だろう。
「けどなあ、仕事をどうすっか」
一応社会人としてはそれを考えねばならない。
放り出してどうこうするというわけにもいかない。
それどころじゃないのは分かっているのだが。
念のために聞いてみる事にする。
どうせ仕事にはならないのならば。
せめて出来る事をした方がマシというもの。
何より、生きる事を優先せねばならない。
「どうですかね?」
「私の一存ではなんとも」
試しにサヨに聞いてみたが、返事は思った通りのものだった。
「せめて課長がいれば……」
「無事だといいんだけど」
直属の役職者の安否を少しだけ気にする。
その上司を含めて多数の人間がいないので、何も決まらない。
組織である。
責任者が権限を持つ。
その権限がなければ何も決まらない。
既に実行してる仕事はともかく。
新たな出来事への対処などは勝手に決められない。
今回のような緊急事態ではこの限りではないだろう。
だが、それでも迂闊な行動は出来ない。
下手な事をしたら、組織に、会社に損失を与える事になる。
そうなった場合の責任は、指示を出したものにくだされる。
それを背負うほどの度胸と覚悟など、誰もが持ってるわけではない。
ただ、今は緊急事態である。
そうも言ってられない。
仕事にしたって、会社に来れた者が手を付けてるだけだ。
出社もままならず自宅待機してる者だっている。
そんな状況で、仕事もなにもない、とも言える。
「どうしたらいいのか……」
サヨとしても困ってしまう。
タクマ達の言いたいことは分かる。
だが、担当者としてそういった行動の許可を出して良いのかどうか。
そこが問題だった。
「それなら、これを口実に出来ない?」
そう言ってタクマはコピー用紙の束を持つ。
先ほどサヨから渡された、戸守の集めた情報を印刷したものだ。
「それを?」
「ええ。
あちこちにいる社員の保護と確保。
出社支援。
それを理由に出来ないかな?」




