17回目 戦力増強のために他人を巻き込んでいく
自宅にいる社員の確保。
その為の支援。
外に出る名目にはなるだろう。
「それなら、いけるかも」
一応、自宅待機中の上司の確認は必要だろう。
だが、許可がおりる可能性はある。
「すぐに連絡するね」
サヨは自分の机に向かい、パソコンからメールを出し始めた。
その間、やる事もないのでタクマは残ってる仕事に手をつけていく。
やらねばならない事はそれなりにある。
トモルやカヲル達はまた休憩室に戻してから。
「さてと」
気分をいれかえて作業に手を付けていく。
「精が出ますね」
仕事を始めたタクマに、隣の席の登和が声をかけてくる。
「そんなんじゃないって」
笑いながらタクマが応える。
「他にやる事がないから。
暇つぶしみたいなもんだ」
「あまり面白い暇つぶしじゃないですけどね」
「まったくだ」
言いながら笑っていく。
不謹慎な、と普段ならば言われただろう。
だが、化け物がうろつくような危険な状態だ。
少しでも気分を保つために、馬鹿な事の一つも言いたくなる。
笑いも少しは欲しい。
空元気でも元気を出す為に。
「でも、本気ですか?」
「何が?」
「他の人を連れてくるって。
こんな状況なのに」
そう言ってスマートホンを取り出す。
「おいおい。
ここへの持ち込みは禁止だぞ」
一応注意はする。
だが、タクマも本気でたしなめてるわけではない。
「分かってますって」
登和はそう言いながら動画サイトを開いていく。
そこには、最新のものだろう化け物の様子があふれていた。
「こんな状況なんですよ」
真顔になって登和は聞いてくる。
そう言いたくなるのも当然だ。
酷い映像ばかりである。
化け物が徘徊してるのはまだ良い。
人間が化け物に変化してるところだったり。
それらが車や家、通行人を襲っていたり。
そんな動画が多い。
「外がこうなってるってのは、これで分かりました。
そんな所に出ていくんですか?」
普通に考えれば自殺行為だ。
「それに、これなら無理に人を引っ張ってこなくても。
外に出る方が危険ですよ」
大人しく家にいた方が、まだ安全だろう。
化け物が家を襲ってる動画もあるので、確実とはいえないが。
それでも外で遭遇するよりは良いだろう。
登和のそんな心配ももっともだった。
少しは安全な所にいるなら、そこに籠もっていた方がいい。
それをわざわざ引っ張り出してどうするのか。
普通に考えれば、それこそ非難するべきだろう。
「まあ、それは建前だ」
タクマとしても、本気で家から引っ張りだすつもりはない。
むしろ、安全な場所にいてもらいたいと思ってる。
他に手段がないならば。
「俺だって、一応考えてはいるよ」
そう言って玉を出す。
「それは?」
「戦利品」
「なんの?」
「化け物からの」
「…………?!」
「まあ、これが外にわざわざ出て行く理由だ」
そう言って登和に軽く投げる。
「わっ、とっ」
驚いた登和は反射的にそれを受け取ろうとする。
それがタクマの狙いだった。
登和については、隣に座りながら調べてみた。
玉の力を使ってだ。
人柄や性格などを。
玉を渡すにふさわしい人間かどうかを確かめるために。
もし有望そうならば仲間に引きずりこもうと思って。
(まあ、あまり問題はないだろうけど)
普段の態度を見ている。
そこから考えるに、それほど悪い人間だとは思えない。
誠実に仕事をする人間だ。
派遣社員をしてるのは、食っていくためだと言っていた。
本業は役者だという。
ただ、売れてはいないとも言っていた。
それでも役者としてやっていきたいので、食い扶持を稼いでる。
それが芯になってるのだろうか。
しっかりした所も感じる。
だからなんとなく信頼してもいた。
それを玉を使って確かめてみた。
(結果は悪くないし)
見て取れる範囲では、悪いところはない。
それを信じて玉を渡してみた。
強力な力をもたらすものだ。
下手な人間には渡せない。
だから、相手を見て渡す事にした。
受け取った登和は、
「なんだこれ……」
と呟いたが、すぐにそれが何なのかを悟る。
タクマと同じく、玉の力が解放されたのだろう。
渡された玉の事を知りたいと思ったことで。
その思いに玉の霊気が反応する。
そこからはタクマ達と同じだった。
玉がどういうものか。
何に使えるのか。
どういう効果をもたらすのか。
それらが頭に直接浮かんでくる。
それによって何が出来るのかも。
「分かったか?」
「ああ……はい。
こういう事ですか」
「そういう事」




