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男爵令嬢の辺境領主生活  作者: あらまき


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34話 ひとだんらく!

 

 鹵獲した武具を槍一本だけ残し、残りは全て売り払った。

 せめてこれくらいはハルトも持っていいだろうという考えもあったし、鎧、盾、槍の中で槍が一番安かったという理由もある。

 ハルトはまるで子犬のように、心から喜んだ。

 そりゃあ、素手から始まり、盗賊から奪った鉄の剣で、そしてようやく、騎士らしい、正式な槍が手に入ったのだから、喜ばないわけが無い。

 ただ一つ言うならば、ハルトは槍が苦手だった。

 つまり、素人兵に混じって、訓練する所から、スタートとなった。


 また同時に、今回の功績と信頼から、ハルトは正式にリオに筆頭の座を渡した。

 元々座りの悪い席だった上に、今回死者無しで騒動を解決出来たのは、リオのおかげだと誰もが認めた。

 これだけの事をして、そして信用を稼いだ今は、もう自分は外部の人間だとはプランは言わせなかった。


 武具を売って一週間ほど経過したある日、中央より外交官として、フィーネが現れた。

 最初は別の人が来る予定だったが、やはり心配になって割り込み、こちらに来てくれたらしい。


 そこで、ヨルンはフィーネに、今回の騒動の落としどころの相談をした。

 まず、土地を運営する能力が足りないから、アデン男爵領は取らない。

 代わりに、緊急で村人だけこちらに移送する手配を取っている。

 輸送に関しては、ルムルとティギルが闘争神の教会の手を借りて行っている。

 愚か者の犠牲者を。これ以上増やしてなるものかという、闘争神教団の強い熱意をプランは感じた。


 そして、ここからヨルンの要求が始まった。

 国民の命を救うから、中央として、そして枢機卿として支援を強制しているのだ。

 そのいやらしい手腕を存分に発揮するヨルンに、フィーネは驚いた。

 前回、胃痛で苦しんでいた人と同一人物とは思えないからだ。

 それと同時に、その腹黒さに若干引き、プランの傍に置いておいて良いのかフィーネは悩んだ。


 ヨルンの要求は三つだ。

 一つは、教会の設立を早めて欲しい。

 こちらを他所よりも優先してもらう為、枢機卿であるフィーネに間に入って欲しかった。

 もちろん追加の予算は全てこちらが払う。

 二つ目は、中央より食料の購入を頼みたかった。

 村人に加え、重傷でまだ館から出れない兵士もいる。

 更に、未だガドラとその兵を預かっている為、その消費量を考えると、全く食料が足りなかった。

 最後三つ目に、治療の出来る魔法使いの紹介を頼んだ。

 二週間程度の短期雇いを認めてくれる、腕の良い治療術者。

 怪我人に加え、飢餓状態の村人が一気にこちらに来る為、教会だけでも足りず、治療術者だけでも足りない。

 だからこそ、両方一気に頼み込んだ。


 ヨルンの上手いところは、中央政府に一銭も金を使わせないという点にある。

 二つ目は中央としても適正レートでの購入なら文句は無いし、一つ目と三つ目はフィーネが苦労したら叶う内容だ。

 ヨルンの言いたいことはこうだ。

『プランさんのご友人なら、これ程度の苦労、余裕で出来ますよね?』

 無表情ながら、妙に腹立たしいその様子に、フィーネは若干のイラつきを覚えながら、三つとも了承した。

 ――友達の為ならこの位、全然出来ますよ!

 そう、ヨルンに対抗心を燃やしながら、フィーネは死ぬ気でヨルンの要求に応えた。





 そして、一月が経過した。


 プランは客間で椅子に座り、テーブルに肘をかけ、顔の前で手を組み、偉そうにヨルンに言った。

「では、報告を聞こうか」

 死ぬほど似合わない、きりっとした表情を浮かべるプランを、ヨルンは無視して話を進めた。

「はい。教会が完成して五日経ちました。それに合わせ、本日兵士、元アデン男爵領民の全治療を完遂。全員五体満足で無事に終わりました。これにより、治療術者との契約が終了し、既に中央に戻られました」

 ヨルンの言葉に、プランは頷き、偉そうな態度を続行した。

「うむ。良くやった。続きの報告を聞こうか」

「はい。こちらに進入したアデン男爵領兵士のうち、五人がリフレスト領に残り、残り全員が、中央に向かいました」

 ヨルンの言葉に、プランは最後頷いた。


 色々悩んだ敵将のガドラだが、結局自分を許すことが出来ず、中央に罪人として引き取って欲しいという無茶を言い出した。

 それに兵士達も付いていき、三十人以上の兵士と、武官であるガドラは罪も無いのに罪を求めるという奇妙な事を中央に要求した。

 中央は困り果て、最終的には武官と兵として労役二十年ということで、一応の片を付けた。


 残り五人は、重傷患者だった時に、高額な治療をさせてもらった上、自領の村人を救ってもらったということで、ガドラと兵達を代表して、こちらに帰属してくれた。

 兵士としては恐ろしいほどの練度で、武官に近いほどの実力を持っていた。が、槍を手作りし、メインの仕事は狩りであるリフレスト領のやり方には、まだ馴染めてない。

 武官達は温かい眼差しで微笑ましく、彼らを見守った。



「元アデン男爵領民は合計二十人。全員が無事に生き延び、全員がファストラ村に移住することに文句は無いそうです。なので、これでファストラ村の合計人数が七十四人となりました」

 ヨルンの言葉に、プランはにやっと笑った。

 一気に領民が増えるというのは、それだけで嬉しい。

 色々と心苦しい経験をした為、彼らは兵にはなれそうにないが、それでも、働き手というだけで大きな価値がある。

 何より、ファストラの村で、彼らは幸せになれると考えると、プランは笑顔を隠すことが出来なかった。

「うん。がんばろう……」

 プランは小さく呟いた。

「おや。もう偉い人ごっこは宜しいのですか?

 そう嫌味な様にニヤニヤしながらヨルンが尋ねると、プランは頷いた。

「うん。偉い人っぽくしても、偉くなれないし、飽きちゃった」

 そう、プランは笑った。


「じゃあ、これで報告は終わりだね。戻って良いよ」

 そう、プランは言うが、ヨルンはニヤニヤしたまま、その場を離れなかった。

「当主様。わかってるでしょう?報告はまだ終わっておりません」

 ヨルンの言葉に、汗をだらだら流しながら、プランは耳を塞いだ。

「駄目です。聞いてください。というよりも、聞かなくても知っているでしょうに……」


「うぅ……。はい、聞きます……」

 プランは諦めて、耳を塞ぐのを止め、しょんぼりしながらそう言った。

「はい。最後の報告は、不足分の金額に対する支払いについてです。つまり、借金ですね」

 ヨルンの言葉に、プランはがっくりと来て俯いた。


 そう、売った武具は確かに素晴らしかったのだが、全然足りなかったのだ。

 ダルク夫妻は、本当に利益が出るのかという値段で買い取ってくれたが、それでも、まだ足りなかった。

 教会の設立の優先権に、治療術者の雇用。

 これでほとんどの予算が吹っ飛んだ。

 更に残念な事に、購入する食材にも問題があった。

 安いライ麦が売ってなく、多少高価な小麦しか買えなかった。

 その為、どう足掻いても金額が足りなかったが、フィーネが間に入り保証人となることで、小麦の購入は無利子の借金となった。

 フィーネは嬉しそうに、「貸しですからね」とヨルンに呟いた。

 プランは珍しく、ヨルンが悔しそうにしているところを見た。


「問題なのは、貸したのが中央政府ということです。こちらが返す気が無いとすぐにバレますし、バレた場合、即座に領地運営に介入してくるでしょう」

 親元に借りたから利子は無いけど、懐も握られてるから返す気が無いとばれる。

 つまり、早く返さないとまずいということだ。


「……またしばらく、極貧生活になるなぁ……」

 カーテンを動かし、遠い所を見ながら、プランはそう呟いた。

ありがとうございました。

大体ラノベ一冊くらいに纏めたいと思ってここまで書いてみました。

うまく纏まっていたら嬉しいです。


そして、終わりというわけではありませんが、諸々の事情で一旦ここで休止します。

リアルが少し忙しかったりと色々あるのですが、一番の理由はもう一つの書いてるお話が大切なところに入るからです。


その為、そちらのキリが付くまでこちらの更新は停止します。


ただ、少々悩んでいる部分もあります。

プロットはかなり先まで作ってあり、まだ話は序盤に入っただけです。

リカルドの結末、アインの侍らす理由、プランに心の傷を作られた、ハルトの少年時代。

いくつかネタも消化できていませんが、これを続けて人が見てくれているのか、私には自信がありません。


それを言ったら、今まで自信を持って書いたことなど一度も無いですが。

それに加えて、わがままですいませんが、新しい話を書きたいという気持ちもあります。


どっちにしても、しばらくは更新できませんが、その後余裕が出たら、この話の続きを書くか、新しい話を書くか。

それで悩んでいます。

なので、もし辺境領主を楽しんでいただけたのでしたら、何かアクションを取っていただけたら嬉しいです。

どんな方法でも、もちろん嬉しいです。

感想などで一言いただけるとやはり嬉しいですし、人に見られたくないのでしたら、メールでも構いません。

もちろん、強制するつもりはありません。

ただ、続きが見たいと思って下さったなら、作者にあなたの一言を下されば、とても嬉しいです。


では、ここまで読んでくださりありがとうございました。

また別の場所で、お会いできたら嬉しいです。


追記:わがままな作者に付き合い、続けて欲しいという温かい声を下さった方がいました。

   なので続けさせていただきます。長い休止期間になりますが、お待ち下さい。


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