頼るということ
十歳の私は、人に頼るのが苦手だった。
本当は苦手だったのではない。
頼り方を知らなかった。
学校で工作の時間があった。
みんな楽しそうに作っている。
私は途中で失敗してしまった。
紙が破れてしまい、どうしていいか分からなくなった。
隣の席の子は先生を呼んだ。
「先生、手伝って!」
先生はすぐに来てくれた。
その子は笑っていた。
私はその様子を見ていた。
不思議だった。
困った時は助けてもらっていいんだ。
そんな当たり前のことが、私には分からなかった。
家では違ったから。
困っても自分でなんとかする。
寂しくても我慢する。
苦しくても我慢する。
そうして育ってきた。
だから先生に声をかけることもできなかった。
結局、破れた紙を隠して時間が過ぎるのを待った。
帰り道、一人で歩きながら考えた。
どうしてみんなは簡単に「助けて」と言えるんだろう。
どうして私は言えないんだろう。
家に帰っても母はいなかった。
私は自分でおやつを探し、自分で宿題をした。
分からない問題があった。
でも聞く相手はいない。
何度も消しゴムで消しては考えた。
間違っていてもいいから、自分でやるしかなかった。
そのうち私は、
困っても誰かに頼ろうと思わなくなった。
期待すると寂しくなるから。
助けてもらえると思うと悲しくなるから。
だから最初から一人でやるようになった。
大人たちはよく言う。
「困ったら頼っていいんだよ」
だけど十歳の私には、その意味が分からなかった。
頼るということは、
誰かが助けてくれると信じること。
誰かが自分を見捨てないと信じること。
でも私は、その信じ方を知らなかった。
だから今日も一人で頑張る。
本当は助けてほしい気持ちを隠しながら。
誰にも言えないまま。




