自分を育てる日
十歳の冬だった。
その日、私は風邪をひいて学校を休んだ。
熱は高くなかったけれど、体がだるかった。
母は朝、少しだけ様子を見て言った。
「寝てなさい」
そして出かけていった。
玄関のドアが閉まる音がした。
家の中は静かだった。
私は布団の中で天井を見上げた。
寂しかった。
具合が悪い時くらい、そばにいてほしかった。
頭を撫でてほしかった。
「大丈夫?」と聞いてほしかった。
そんなことを考えながら目を閉じる。
でも誰も来ない。
お昼になった。
お腹が空いた。
私は重い体を起こし、台所へ向かった。
冷蔵庫を開ける。
パンがあった。
自分で取り出して食べる。
薬も自分で探した。
水を飲んで、また布団へ戻る。
その時ふと思った。
私はいつも一人でやっている。
お腹が空いた時も。
寂しい時も。
具合が悪い時も。
誰かに頼る前に、自分でなんとかしている。
十歳なのに。
本当は大人がしてくれることを、自分でしている。
窓から冬の光が差し込んでいた。
私は毛布を引き寄せる。
少しだけ温かかった。
その温かさを感じながら思う。
もし誰も守ってくれないなら、
自分で自分を守るしかない。
その考えは、子どもには少し早すぎたかもしれない。
でも私はそうやって生きていた。
夕方になり、熱は少し下がった。
私は自分でお粥を作ろうとして失敗した。
鍋の底を焦がしてしまった。
それでもなんとか食べた。
誰も褒めてくれない。
誰も心配してくれない。
それでも私は生きていた。
小さな体で、一日一日を乗り越えていた。
その夜、布団に入る前に私は思った。
今日も一日終わった。
ちゃんとご飯を食べた。
ちゃんと薬を飲んだ。
ちゃんと過ごした。
誰も言ってくれないから、
心の中で自分に言う。
「よくやったね」
その言葉は小さかった。
だけど確かに私を支えてくれた。
十歳の私はまだ知らない。
大人になった未来の自分が、
あの頃の自分を抱きしめながら、
「本当によく生きてきたね」
と言う日が来ることを。
誰にも守られなかった子どもは、
少しずつ自分で自分を育てながら、
明日へ進んでいくのだった。




