濁った思い出
小学校に上がると、私はおどおどしていたのが嘘みたいに元気になっていた。それは圭太のおかげに違いない。
小学校から圭太と一緒に帰る道は私にとってなによりの楽しみになっていた。
「おっはよー‼️」
毎日元気に挨拶し他愛もないことを喋り、怒ったり笑ったりする。
そんな日常が私は大好きだった。
高学年に上がった頃からだろうか、クラスの男子達が騒いでいるのが聞こえた。
なにを話しているのかを聞いたら、私と圭太が付き合っているかどうかを話していたらしい。
「お前ら付き合ってるんだろう?」
尋ねてきたのはクラスでもやんちゃな男の子でおそらく、私達の関係を面白がっているだろうことはそのニヤニヤ顔から見て取れた。
「私達はそんなんじゃない!」
私は今まで出したことのない大声で否定した。あまりに大声だったものだから話している男の子だけでなく、クラス中の子達が会話をやめ私達に目を向けた。
急な静寂が訪れ、それが私のせいだとすぐにわかると目を伏せ、顔が真っ赤になった。
「とにかく、私達はそんな関係じゃないから!」
男の子達に吐き捨てたように言うと、私はクラスから一目散に飛び出した。
「なんだよ、少し揶揄っただけなのによー。」
「本気にしすぎだろ。やっぱりそうなんじゃねーの?」
好き勝手に言う声が聞こえたが、私はあることが心に残り、それどころではなかった。
(…どうなりたいんだろう…)
圭太のことは好き。それは間違いない。でも付き合うとかは全然わからない。想像も付かない。
ただ私は圭太と一緒に学校に行って、授業を受け、遊んで、一緒に帰る。そんな時間がなによりも好きなだけだ。
(もしかして…)
不意に突きつけれたように感じた問いに、私は心がざわついていた。
「ごめんね、圭太。」
私は昨日、何も言わず勝手に帰ったことを謝った。
「大丈夫だよ。」
その言葉には昨日のことも入っているのだろうか、心がざわつく。
(もう考えないって決めたじゃん。)
そう想いながらも、登校中や休み時間に揶揄われるたびに、この問題を突きつけられていた。
「勝手に言わせておけばいい。」
私にはそう言って誤魔化すことしか出来ないでいた。
6年生になった時、圭太が突然こんなことをいってきた。
「中学になれば、さすがに一緒に登下校しなくなるだろうなぁー。」
…その言葉を聞いた時の私の心は、自分でも信じられないほど、落ち着いていた…。




