16.5
俺の嫁がすごすぎる!
王都のガキらを雇う事になって、教育する傍ら起業の準備も進めていく。
作った計画書通りに効率よくどんどん進める。
抜けはない。むしろもっとこうした方がと、足されていくばかりだ。
ランはどんな頭のつくりをしているんだ?!
脅威に思っていると
「私なんて全然ですよ~。まったくの素人ですし。こんなの学生の範囲ですよ」
照れたように言う。
これが素人の考える事なのか?!
ランの国は本当にどんな国なんだ!!
えらい女と一緒になった…。
ランが一生懸命やるなら俺も負けてられねぇ。俺にできる事をする。
といっても、俺には身体を動かす事くらいしかできねぇ。扱いの分からねぇ女の子はちぃと怖いが、男なら気にする事はない。それなりに鍛えてやると、いつの間にかものすごく懐かれていた。
こんな面でもSランカーって事か。俺もガキの頃は憧れたもんだ。そんな風に思うと恥ずかしいけどな。
王都のガキらがある程度形になると、俺たちは起業するために本格的に動き出した。
他の領でも同じように基盤を作り、ガキらを集めてわかるように話をし、納得したら(するもしねぇもないか)ガキらを雇う。
これが大事な事らしいが、きちんと雇われたと意識させる。
ガキらの教育は俺たちと一緒に、先輩になった優秀なガキらがしてくれた。
すでに自立できそうじゃねぇか?ちょっと見ない間にしっかりしてやがる。ガキの成長ってのは早いな!
俺たちもますますやる気になるってもんだ。
馬や馬車なんかの手配をしつつ、我ながら驚いた事にギルドも作ってしまった。
当たり前だが、初めはうちひとつだった。
それが十年後には、十も二十も増えてギルド自体も大きくなった。
商会もギルドも、物流業という初めてのものを負債なくこれだけ大きくできるとは…。
これもやっぱりランのスキルのおかげなんだろうな。
ラン曰く働く人に優しいホワイトギルドだからか、ほぼ不満はなく運営されている。
まぁな。大多数の労働者と比べると、ランの考えたうちのガキらの労働条件や給与は破格だ。
よそを見れば不満などありようもない。そうでなくても幸運としかいえない職場だろう。
そんなうちが筆頭のギルドだから、後から加わった店や小売りの従業員たちの待遇も悪くないらしい。
まぁ、そんな事は後々の話だ。
起業準備は着々と整っていく。
ランのスキル仕様の馬車やコンテナはとんでもないものだ。
馬の健康までみていたのには驚いた。
馬までみられるとは…。
ランのスキルのおかげで馬車やガキらは守られているが、俺も自分の身は自分で守れるくらいの力をつけさせた。
運送中の盗賊以外にも、街中にだって力で言う事をきかそうって輩はいるし、客先には不遜な奴だっているかもしれない。
自信があるって事は、それだけでも力になる。
しばらく後で、戦える運送屋なんて言われてると聞いた時には笑った。
面白い体験もした。人生で初の『エイギョウ』というものだ。
ロートゥスの新鮮な魚を持って、食堂に売り込みに行く。
元の世界で『カイシャイン』というものをしていたランは、客と話す事に慣れている。『エイギョウトーク』というらしい。
愛想のいい美女が美味いものを売り込みに行けば、野郎しかいない厨房は大歓迎だ。
鼻の下をのばした野郎どもも俺を見てすぐに引きつるがな。
でもまぁ、きちんとした契約内容と、こんな面でも大陸規模で信用度の高いSランカーのエイギョウはうまくいった。
王都ではまあまあな数の店と、それ以外の領都でもいくつかの店と契約する。
最初はこんなもんでいい。
始まりは多すぎない方がいいだろう。
こんなたいした事をやっているランだが、大人数のガキらの未来を背負っていると思うと不安になるらしい。
時々弱気になる事があった。
ラン、あんたは本当にたいした女だよ。そんなに細い身体で精力的にあちこちを飛び回り、色々な事を的確に決めていく。俺には考えられないほど頭もいい。どんな魔法使いだって叶わねぇスキルももっている。
心配するな、どんな事になろうとランとガキらは食わせてやる。
そのくらいの甲斐性がなくて、こんなすげぇ女を嫁になんかできるか。
俺だって釣り合う男でいてぇさ。
まぁ、俺の思いは置いといて。
色々あったが、驚くほど早くこの規模の商会が立ち上がった。
最初の一台を見送った日の朝はよく晴れていた。
商会は文字通り走り出した。




