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次の日の午前中は王都の家で計画書を作った。
レオンには几帳面だなと笑われたけど、優先順位をつけて効率的に動きたい。
それにきちんと文字にしておけば抜けがなくなるし、進み具合も一目でわかるもんね!
ふたりで思いつく限りの案を出し合って、それを箇条書きにまとめると、そろそろお昼だ。
「まずはこんな感じでいきましょう。また思いついた事があったら足していけばいいし。
レオンお腹がすきましたね、休憩がてらご飯を食べに行きましょうか♪」
「すごい量になったな」
また笑われたよ。
「真面目な日本人の性なんですよ!」
「悪いとは言ってない。俺が大雑把だからな、ランが細かく気づいてくれる人でいい」
今度は甘く笑う。
もう! 不意打ちでくるんだから!
慣れてなくて毎回照れてしまうよ!!
朝から新婚さん空気ですみませんね!
お昼ご飯を食べ終わったら、さっそく家を買った時の仲介人さん?を訪ねる。
寮を買わねば!それと馬舎を建てる土地もなくちゃならない。
王都から配送はないから馬車はいらない。
でもリーリウムから来た馬を休ませる馬舎はいるからね。
仲介人さんに用途を伝えると、希望に添えそうな物件があるとさっそく連れて行ってもらえる事になった。
仲介人さんは上機嫌だ。高級住宅を買ったばかりなのにもう一軒って、私たちってかなり上客だよね!
街中の馬車道を走っていると、というより歩いていると、(馬車の速度って思ってたより遅いんだよ!)外を眺めていた窓からアーサーが見えた。
「すみません、ちょっと止めてください!」
「どうした?」
「アーサーが見えたので。レオン、アーサーも連れて行っていいですか?」
「かまわないが…」
「ありがとう! ちょっと待っててください!」
車内の仲介人さんに一声かけて外に出る。
「アーサー!」
声をかけると、アーサーは目に見えてギョッとした。
「こんにちは。今時間ある?」
言いながら屋台で焼き菓子と飲み物を四つ、じゃないな、五つ買う。
「時間があるとかないとか、そんなのねぇよ!」
「あらそう。じゃあ私たちと一緒に来てくれる?私たちがどんな事をしようとしてるのか、自分の目で見てみてよ」
言いながら焼き菓子と飲み物を渡す。
持ちきれないからね!自分の分は自分で持ってもらう。
ちなみにレオンも一緒に降りてきてるよ。
しっかり両手に飲み物を持ってくれている。
「は?」
「時間はあるんでしょ? それに、もしかしたらだけど、私たちを探していたんじゃないの?仕事の事、ちょっとは気になってるでしょ?」
アーサーは答えず、うっすら赤くなった。
正解♪
「一緒に来い。受けるも断るも、見て決めろ」
レオンに圧倒されたアーサーは大人しく馬車に乗った。
乗る時に仲介人さんに嫌な顔をされたけど、レオンが素早く金貨を握らすとニッコリ笑顔になった。
おおぉぉ! 袖の下だ! リアル袖の下を見てしまった!!
レオンたら越後屋だったのね!(違)
悪徳商人役も素敵♪
アーサーは初めて馬車に乗ったようで、緊張してるのかせっかくの焼き菓子も飲み物も喉を通らなそうだ。
現地について外に出たらガツガツ食べ始めたよ。
「ありがとうございます。物件を見せてもらっている間にどうぞ」
ビックリ顔の御者さんに飲み物を渡していると、アーサーは食べ終わっていた。
さてどんな建物なんでしょ。見せてもらいますかね♪
仲介人さん曰く、その建物は新興貴族の持ち物だったとの事。
大きな屋敷は、寮にしても馬舎を作っても十分と思われる。何なら放牧場も作れるかも。
成り上がりのその貴族は、贅の限りを尽くして没落してしまったのだとか。
パッとあらわれてあっという間にいなくなってしまったらしい。
残ったこの屋敷は、敷地の広さから貴族街に建てられていない上に『あんな成り上がりの屋敷など』と蔑まされて買い手がつかないのだそうだ。
この広い敷地と大きな邸に合わないような(たぶん)売値だった。
「レオン、どう思います?私は気に入りました」
「ランが気に入ったなら決めるか。悪くはない買い物だしな」
「ありがとうございます!」
「こんな高そうなもの即決…」
仲介人さんはホクホク顔で、手続きの準備をいたしますと、先に馬車に戻って行った。
「アーサー、私たちここを寮にするのに買ったのよ。これから、君たちを雇って仕事を始めようと思っているの。
アーサー言ったよね?俺みたいのを雇うところなんてある訳ないって。ないなら私が雇うわ。きちんとした環境でしっかり教育すれば、誰だってちゃんと働けるのよ」
アーサーは信じられないという顔をして首を振った。
「そんな事…、できる訳、ない…」
「できるできないじゃないの。や る の♪」
「なんでそんな事? 俺らみたいのに…、 何いってんだ?」
「やりたいからに決まってるじゃない?」
「出来る訳ない! 何だ?金持ちの道楽か? ふざけるな!」
「私は本気よ」
真っ直ぐ言い切る。 アーサーは絶句した。
「嫌ならいい。お前の人生だ、お前が決めろ。お前が来なくとも俺たちはやるがな」
レオンは男の子にはちょっと厳しいんだよね。
男なら自分で切り開け、的な?
アーサーの瞳が揺れている。
「なぁに、ガキなんぞいくらでもいる。人員は豊富だ」
悪どくニヤリと笑った。 素敵!
「やるよ! こんチクショー!」
やった!これからよろしくね♪
次の日、朝から大量の買い物をして、買ったばかりの寮で、これまた大量にスープを作る。
邸には多数のお皿もスプーンもあるから足りなくなる事はないだろう。
ただ、それなりに高価な物に見えるので、使うのにビビるかもしれないなぁと心配する。
大量のスープが出来上がった頃、まだまだお昼には全然早い時間に、アーサーが大勢の子供たちを連れてきた。
その数ざっと五十人くらいかな?
三歳~四歳くらいの小っちゃい子から、アーサーくらいとか、もう少し上くらいまで年齢はまちまちだ。
小っちゃい子は兄弟姉妹の下の子らしく、兄姉が抱っこをしている。
「おはよう!まずはご飯を食べてね。話はそれからだよ!」
アーサーには、そう言って連れてきてと言っておいたけど、本当だったのかと子供たちはザワリとした。
それから我先にと押し寄せてくる。
「わっ!熱いから危ないよ!並んで並んで」
と言う、私の声も埋もれてしまう騒ぎになってしまった。
「全員の分はあるから一列に並べ」
熱狂も震いあがらせる低音が聞こえた。
とくに大声じゃないのによく通るんだよね。
「ほら、ここから一列に並んでいけ。チビを抱いてるヤツの分もちゃんと持っていくから心配すんな」
アーサーが上手くさばいてくれる。
おぉ! さっそくのリーダーシップ!
素晴らしい!!
スープを手にした子からガツガツ食べ始める。スプーンは…、いらなかったね。
山と買っておいたパンも見る見る減っていく。
君たちどんだけ食べてなかったんだぃ?
胸が痛くなるよ。
「いっぺんにたくさん食べたらお腹が痛くなるよ!大丈夫、これからも食べられるからムリして食べないの!」
先に食べ始めていた何人かが、え?と顔を上げる。
まぁその辺の話は食べ終わってからね!
「アーサーも食べなよ。もう後は大丈夫だから」
「…ありがと」
スープの入ったお皿を持ったアーサーは、小声で素早くそう言うとサッと背中を向けて行ってしまった。
後姿で耳しか見えないけど赤くなっているではないか!
勇気を出したね~! 偉い偉い!!
しばらく後、ほぼほぼ食べ終わったかな?
ではレオンさんお願いします。
レオンは特に立ち上がった訳でもなく(もともと立っていたからね)何か音を出した訳でもないのに、子供たちはレオンに注目した。
「食べ終わったなら聞け。これからも腹いっぱい飯を食いたいか?屋根のあるところで安心して眠りたいか?」
ここでレオンはいったん言葉を切って子供たちを見渡した。
子供たちは何が始まったかとレオンを見つめている。
「それを得るには対価がいる。お前たちの働きだ。お前たちの働きがお前たちの収入になるって事だ。
今までと同じ、いつ死ぬかわからない底辺の暮らしか、自分の力で生きるか、自分で選べ」
言っている意味が分かる子供たちはシーンとしている。
それより下の子たちはこの場の空気にキョロキョロしている。
「ここで働きたいと思う者は残れ。そうでない者は元いた場所に去れ。自分で決めろ」
こういうのは私では務まらない。
平和な国で幸せに育った私の声は、ここにいる子供たちの心には届かない。
レオンは、哀しい事だけど、この子たちと同じ経験をしてきている。
自力で生きてきた者の言葉は力を持つ。
「ここに残るなら、自分で稼いだ金で生きていけるよう力をかそう。働き方はしっかり教える。ちゃんとした生活を覚えて自立しろ。
もう一度言う。ここで働きたいと思う者だけ残れ」
迷う者の背中を押すような、深い響きを持つ声だった。
シーンとしていた場に、だんだんと熱が上がってくる。
目に見えてそれがわかる。
本当に? あんな暮らしから抜け出せるのか?
身体を売らなくてもいい暮らしができるの…?
俺らなんかが、まともな暮らしができるのか?
もしも…、もしも本当に自立というものができるなら…
「俺はやるぜ。あんなクソッタレな人生なんてまっぴらだ!俺は俺の直感を信じる!」
アーサーが声高く叫んだ。 リーダー!!
「俺も!」 「私も!」
熱気は大きなうねりとなって子供たち全員を飲み込んだ。
子供たちの熱が移る。
身体の中心からメラメラとやる気が燃え上がっていく。
私は人情物が好きだけど、青春物も大好きなのよ!
これから一緒に頑張っていこうね!!




