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王都四日目。

今日も午前中は物件を見せてもらう。


お金持ちの区画といってもそこにもまたランクがあって、王室ご用達やら高位貴族出入りの大商会なんか、本物の大金持ちは高級住宅地でも奥の方に住んでいる。


街に近い方が便利だから高そうと思うのは素人考えで、喧騒から離れた奥地の方がお高くなるのだそうだ。

高級住宅に住むような人は個人で馬車も持っているから街から遠いなんて関係ないんだって。

まぁ遠いといったって一時間も二時間もかかる訳じゃないけどね!


私たちは最後に見せてもらった、住宅地の中でも比較的街に近い家が気に入ってそこに決めた。

平屋だけど全体の造りに余裕があって庭も広い。空間の贅沢ってやつかしら?よくわからないけど、せせこましいより解放感があるほうがいい。レオンが大きい人だしね!


そういえば、この世界がなのかこの国がなのか、家はほぼ居ぬきで渡される。

衣服や装飾品なんかは持って屋移りするみたいだけど、大きな家具は置いたままだ。引越し屋さんもいないみたいだしね。

ちなみに貴族や大金持ちは代々の持ち家で引っ越しはないんだって。




さて、家が決まったら消耗品や食品なんかを買いに行こう!

と、その前にお昼ご飯だ!

どうも食べてばかりと思われそうだけど、これも立派な市場調査なのよ♪

何の調査かって?起業する職種のです!


せっかく何かを始めるなら、まだ誰もやってない事…は、まぁないでしょうから、競争率が高くない、あまり人の手が入ってない分野がいいんじゃないかと思っている。

漠然としすぎていて、何をしたいかも浮かばないんだけど…。


レオンは急がなくてもいいと言ってくれている。何なら一生遊んで暮らすくらいのお金もあるそうだ。

いや、それはダメでしょう…。人としてどうかと思うよ。私はごく普通の小市民なのだ。


それに働いてないとご飯が美味しく食べられないと思うしね。

お休みだって働いているから嬉しいんだしね!

今は何の仕事を始めようか悩んでいる最中だし、一応新婚旅行も兼ねているので無職なのだ!


と、脳内で謎の言い訳をしつつ、今日はどのお店でランチにしようか~♪とレオンと話しながら歩く。


「このお店賑わってますね。ここにしましょうか」

「そうしよう」


ちょうど出てきた団体さんと入れ違いに店内に入る。

お昼時間はそろそろ終わりかな。


「いらっしゃい! こっちの席にどうぞ~!」


元気のいい声に迎えられて促された席に着く。


接客普通。清潔さ普通。(異世界比) 

今のところはまぁ合格。後はお料理だね。


「何を食べましょうか? …やっぱり海の魚はないですね~。あそこは(一応他店なので名前は伏せる)どうやって海の魚を仕入れてるんでしょ?」

「ないのが当たり前だからな。ある方が不思議だ」


メニューを見つつ料理を選ぶ。

お昼時間は終わりかと思ったけど、店内はまだまだ人がいっぱいだ。

それでもそれ程待たされずに料理が来た。

美味しそう。さっそくいただきます♪


食事が終わっての感想は…、まぁ普通。

おとといのお店と同じに、すごく不味くはないけどすごく美味しいという訳でもない。

なんて偉そうに評価してるけど、ただ評価してる訳じゃないよ!これも仕事につなげるための調査と思っている。


それにしても…。

物流は馬車が使われるのが一般的だから、内陸のこの地には海産物は塩漬けのものくらいしか届かない。クール便なんてないしね。途中で腐っちゃうもん。


だからお店のメニューに海鮮物がないのは当たり前だし、そう聞けば私も納得できるんだけど。

Y‘sキッチンでは新鮮な海の魚が食べられた。なんでだろう…。


「もしかしたら高級レストランなんかなら海のものが食べられるのかなぁ」


私は海辺の町で生まれ育ったから、子供の頃から慣れ親しんだ食べ物は海産物だ。

この世界でもどこに行っても海の幸が食べられたらとても嬉しい。


王都観光初日、Y‘sキッチンで食べた食の影響力は強烈な印象になった。

少しでもホームシックを緩和できるものがあるなら探しておきたい。私がホームシックになって辛い思いをするのは、私よりレオンだから…。


「ランはそういった店に行きたいのか?」

「はい、お魚料理があるのか確認したいです。

でもそういった高級店は伝手がないといけなそうですね…」


封建的な国の高級店って、一見さんお断りとか、会員でなければ入れないイメージがある。


「行きたいなら連れて行こう」


え?


「何だその顔は。そのくらい造作もない」


いやいやいや!!!

だってレオン、大国に来たの初めてでしょ?

どこにどんな伝手があるっていうのよ?!


と思っていましたが。


レオンって大陸で五人しかいないSランカーなのね。

Sランカーって勇者とか英雄とかって称号が与えられるそうで、国に従事する事になればその国で叙爵もあるんだとか…。


Sランカーは予約なしの直で入店できたよ!

その日の夕食に!行動が早いといっても最短だな!


ドレスコードがありかとドレスも買ってもらった。淡い菫色でフワッとした軽い感じだけど、きちんとミセス仕様らしい。

綺麗なドレスにテンションが上がったよ!


レオンはテールコートではなくて、軍服みたいなカチッとした格好だった。

戦う人の正装ってこれなの?!めちゃくちゃ似合っていてめちゃくちゃカッコいい!!


「レオン、とっても素敵です…」


うっとりとそう言えば、レオンも


「ランも綺麗だ。とてもよく似合っている」


と、バカップルです!

すみません! 忘れた頃にやってくる新婚ボケなので許して!!


それにしても、レオンってこんなに口に出してくれるタイプじゃなかったと思ったけど…。

プロポーズの時に幸せすると言ってくれたのを有言実行してくれてるんだろうなぁ。

そう思うととても心が温かくなる。

ありがとうレオン。私も幸せにするからね!


そんな思いは後でしみじみするとして。


連れて行ってもらった、王都で一番の高級店には海の魚料理があったよ!

絶賛してさり気に聞けば、Sランカーの連れだからか、お店の自慢なのかサラリと教えてくれた。


このお店と、あと数店の高級店では転移魔法を使ってロートゥスから新鮮な食材を仕入れているそうだ。

ただ、転移魔法って希少だから月に一~二度しかメニューに出せないらしい。(今日は当たり!ラッキーだった!)

それでも他のお店よりは多いのだと誇らし気に言っていた。


チラッとY‘sキッチンの事を言ってみると、あそこは独自のルートがあるようですと、ちょっと苦い顔をして言っていたよ。

ほぉほぉ、独自のルートとな。


なんにしても、そういう事ならその他のお店では海の食材が使われる事はなさそうだ。

ガッカリ。


王都ならまだこういった高級店とかY‘sキッチンで食べられても、よその土地では食べられないって事でしょ?

私のホームシック対策とは別にしても、その土地土地でも食べられたらいいのになぁ、なんて思ってしまう。


海鮮物が食べられない内陸の王都の人でも、今日のこのお店とか、この前のY‘sキッチンのお客さんとか、とても喜んで食べていた。

食べたいよね。美味しいもん。


海の料理を出すお店が増えたら、もっとたくさんの人が食べられるようになる。いつでもどこでも新鮮な海の幸を食べられるようになったら、もっと食べる楽しみが増えると思うんだ。


なんて一介の一般人が考える事じゃないか。

……いや私、一介の一般人じゃないような。

もっというと、旦那さんもただの一般人じゃないような。


頭の中で、見えてなかった図に、ほしかったピースがはまっていく。


えっと…。

領地から領地の間って一週間前後かかるんだよね。馬車で往復すると二週間くらいとして…。

一台の馬車には一人って事はないよね。一週間も一人ってつまんないし(そこ?!)、じゃなくてケガや急病の時に困る。という事で二人乗りになるね。

とりあえずロートゥスから王都までって考えると、乗り継ぎを計算して……。


「レオン…。私、何をしたいか、子供たちに何ができるか、わかっちゃった気がします!」

「どんな事だ?俺にも手伝える事はあるか?」

「あります!あります!というか、もちろんレオンが社長ですよ!」

「シャチョウ…?」


ん?会社ってないのかな? 

レオンは意味がわからない顔をした。




私が思いついた考えとはこういうものだ。


私のスキルで馬車のクール便を作る。

ロートゥスから水揚げされたばかりの新鮮な魚介類を時間を止めたクール便で王都まで運ぶ物流業だ。

途中のカメッリア領やリーリウム領にも顧客を作って魚介類を卸す。


王都まで往復六週間以上も過酷な労働をさせるつもりはないよ!


まず、ロートゥスから一週間前後でカメッリアまで行ってそこでカメッリアの分はカメッリアに下ろす。

残りはカメッリアからの配送者にリーリウムに行ってもらう。

ロートゥスからの配送者は、カメッリアの特産品をつんだ馬車でロートゥスに戻ってくる。


カメッリアから出発した馬車はリーリウムで同じ工程をする。リーリウムからも同じく王都に向かう。

どこの領の配送者もひとつの領との往復なら…、いやぁ往復二週間は厳しいか。

週休二日制にしよう!着いた先の領都で二日のお休み!帰ってきてから二日のお休み! 

これでどうだ!!


話していくうちに、追加追加で話しが長くなっている…。

ごめんねレオン、まだ続きがあるの。


毎日配送するとなると、ひとつの領地では往復分十四台の馬車がいる。

配送者は少なくても二十八人は必要だ。いや、お休みする子の分もいるね。


ストリートチルドレンはもっともっといる。

配送者だけじゃなくて馬の世話をする子や、寮も作らなくちゃだから寮で仕事をする子だっているだろう。

できるだけ多くの子供たちの働く場にしたい。


とまぁ、こんなような事を脱線しながら説明し終えた。


「そうか。ランの知識とスキルがあればできるだろう。やってみるか」


ニヤリと不敵に笑ったお顔も素敵!

頼もしい旦那さんに惚れ増しするばかりだよ!!




構想はそんな感じで、具体的な計画を立てる。


子供たちを集める前に、各領都に社員寮を用意しなくちゃならないね。

馬車も発注しなくてはならない。

あ、馬もか!その馬のための馬舎もいる。放牧場なんかもいるのかな?


子供たちには御者の訓練と、ある程度の接客も学ばさなければだし。

あぁその前に、基本的な生活習慣や、一般常識…は、日本人的考えの私が教えていいものか悩みどころだ。

この世界では、きっと受け入れられない考え方だろうし…。


何にしても社員寮や馬車や馬なんかを用意するのには時間がかかるだろう。

決まったなら始めるのは早い方がいい。

さっそく各地での準備を始めーーー


あ、王都の家どうしよう?

社員寮を作るなら私たちもそこの一室でいいんだけど…。

本社を置くなら王都かな?それなら家はそのままでいいか。買ったばかりだし。


自宅は住みたいと思える土地に持とうと思ってるからまた別なのだ♪

出勤は一瞬だからどこに住もうとオーケーだしね!


そうなるとやっぱり管理人がいるね。

アーサー、どうなんだろう…。




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