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それから毎日、お昼過ぎくらいにあの広場に行った。

三日もすると女の子は慣れてきたのか、食欲には勝てないのか、レオンがいても側によって来るようになった。


一言、二言話すようになって、レベッカという名前を知った。

それからカーターという病気の弟がいるという事も知った。

いつも急いで走って行くから、一緒に食べようと誘ったら弟が待ってるからと断られたのだ。


この子だってまだ小さいのに弟って…、いったいいくつなんだろう?

国は何もしないのか?国じゃなくて領かな?

レベッカを知ってから、他のストリートチルドレンも目に入るようになった。


すべての子供を救うなんてできないかもしれないけど…、国とか領とか、大きな力ならもう少し何とかできるんじゃないだろうか。

なんの力も持ってない私でさえ色々考えてしまうのに。


毎日ランチをご馳走する事が救いになっているとは思わない。結局その場しのぎだと思うし。


元の世界で、貧しい国の人たちを助ける団体の人が言っていた。

魚をあげるのじゃなくて、魚を獲る技術を教える事が助けになるのだと。

まぁお腹を減らした人に食べ物も必要だけどね!


助けとは、きっとそういう事なんだと思う。




レベッカの方はそんな感じに思い悩んでいるけど、物件探しの方は順調にいってるよ。


レオンとふたりだから小さくてもいいけど、家にお風呂は絶対ほしい!

だけどお風呂つきの家は高級住宅になるんだって。高級住宅というからにはそこそこ大きい。

お庭なんかもついてちゃったりする。お庭はいいと思うけど、広かったらお手入れが大変だよね…。


というか私たちは定住する訳じゃないし、そうなると大きな高級住宅なら駐在してくれる人、管理人?が必要かもしれないね。

そういう人ってどこで雇うんだろう?

やっぱそこはファンタジーご用達の冒険者ギルドって感じ?


あ…。


「レオン…、世界的に子供が仕事に就く年齢っていくつくらいからですか?」


レオンはジッと私を見て、少し考えながら教えてくれた。


「大陸の成人は十五歳の国が多い。成人からは一人前に数えられるが、それ以前から見習いを始めるのが一般的だ。十もすぎれば下働きから使われる。貧しい家の子供など、もっと前からできる事なら何でもするだろう」


過酷だな!

開いた口がふさがらないよ!

元の世界だって海外にはそういう国はたくさんあっただろうけど、リアルに見聞きした事もなかったし、日本ではそんな事はない。


つくづく、私は平和な甘ちゃんなんだなぁと思う。

だけどそれが普通だったし悪い事だとは思わない。

平和に幸せに暮らせるなら、それが一番だと思うのは…、やっぱり日本人的発想ですかね?


「レオンに相談というか、お願いがあります」

「そうか、わかった」

「まだ何も言ってません!」

「ランが思いつく事くらい叶えてやる。何をするにも悪いようにはしないから心配するな」


男前だな!!

レオン、ほんっと男前だよ!!

旦那さんが素敵すぎてどうしていいかわからないよ!!

こういうの尊いっていうんだよね!初めて気持ちがわかったわー!!


と、お花畑脳は置いといて。


私たちはロートゥスの街と海を一望できる、小高い丘にある高級住宅地の中の一軒を購入した。


一階には広いエントランスホールと、奥には庭に面して大きな部屋がメインである。

それから厨房と食堂と、お風呂やトイレなんかの水回り。個室もひとつあった。


二階には、これは主寝室なんだろうなぁ、日当たりのいい大きな角部屋と、個室が三つ。

あまり生活感がなくて、どうやらお金持ちの別荘だったんじゃないかと思われる。


お洒落なのに落ち着いた造りの建物で、広すぎない庭には綺麗に木や花が植えられている。

一目で気に入って購入を決めた。

レオンは特に反対もせず、色々な手続きをしてくれたよ。




そしていつもの広場、いつものお昼過ぎ。


「レベッカ、今日はちょっと話があるんだ」


レベッカは訝しげに私を見る。


「レベッカに仕事を頼みたいの。住み込みで食事つき。まぁご飯は自分で作ってもらうんだけど。作り方は教えるよ。もちろんカーターも一緒ね!カーターも元気になったら出来る仕事をしてもらう。 …どうかな?」


レベッカの瞳が揺れた。


私の言っている事に怪しいところはないか、騙されるんじゃないか。美味しすぎる話を疑うのは当たり前だ。知り合ってまだ一週間くらいだし。


でも、もしも…。もしも本当の話なら…。

そう期待する迷いも揺れている。


「人生の中で幸運なんてもんは一度あるかないかだ。幼くとも底辺で暮らしているお前ならわかるだろう?選ぶのはお前だ。自分で決めろ」


低音が優しく響いた。


言い方は厳しいけど、迷う者を導くような深みのある、い~いお声だ。

うっとりとレオンに見惚れていると、小さな声が聞こえた。


「ありがとう…」


契約成立だね!

私は手を差し出した。レベッカが、何?という顔をする。


「握手だよ。 …こうやって手を繋いで、よろしくねって行為だよ」


レベッカの手を握って、笑顔で言った。


「よろしくね…?」

「うん。これから仲良くやっていこうねって事」


よろしく…。なかよく…。 

レベッカは小さく繰り返している。


「よろしくね」

「わっ…」


レベッカの笑顔を初めて見た!

なんだ、ちゃんと可愛らしい女の子じゃない♪


それから、私を子供服屋さんに送ったレオンは、戻ってくるまで絶対ここから離れるなと言い置いて(心配性だなぁ!)レベッカと、カーターを迎えに行った。


私は子供服を何枚か買ってお店の中で待たせてもらう。

レベッカ達に服を選ばせてあげないのかって?

選ぶのは新しい服を着てからだな。今のままでは入店を拒否されてしまうだろう。

なんかもう、かろうじて布だろうというボロ切れを身にまとっているだけなんだもん。


レオンたちが戻ってきたのが見えたので、お礼を言ってお店を出る。


小さなボロ切れを背負ったレオンと、それを心配そうに見上げているレベッカと新居に向かう。

街の中心地からは歩いても十五分くらいだし(丘だから坂道だけど!)新居にはすぐに着いた。


「いらっしゃい♪ ここがレベッカ達の仕事場になる家だよ」

「こんなきれいな…、入って…、いいの?」

「もちろん!入らなくちゃ仕事ができないでしょ?それに、住み込みなんだし!」


カーターを背負ったレオンがさっさと中に入ってしまったのを見て、レベッカも恐る恐る最初の一歩を踏み入れた。


「こっちこっち!レベッカ達の部屋はここね!」


レオンが入っていった一階の個室にはベッドがふたつ並んでいる。

もっと大きくなったら別室にしなくちゃだろうけど、今はまだ一緒がいいよね。


おっと!

カーターをベッドに下ろそうとしたレオンに慌てて言う。


「レオン、ちょっと待って!」

「なんだ?」

「そのまま寝かしちゃダメですよ。そのボロ切れをとって、ちょっと抱いていて」


レオンとレベッカが私を見る。


清浄魔法っていうんだっけ?お風呂に入れない時なんかに清潔にする魔法。

あぁいうのできないかな~?


丸裸のカーターを見ながら、空気清浄器の(イメージ!)ミストをまとわせる。キラキラしいミストが汚れをつつんだら、それは窓から外に出て行ってもらおう。空気中に分解しちゃってください!


レオンの腕の中には、ピカピカにきれいになったカーターが残った♪

やった!できた! スキル空想様様だよ!!


「相変わらず何でもありだな…」

「カーターがきれいになってる…」

「浄化魔法を真似てみた♪」


「「まほう…」」


レオンとレベッカが脱力した。


きれいになったら、買ってきた寝間着を着せて、撫でてる風を装って赤くなっているところに触れる。

何の病気かわからないけど全体的にうっすら赤い。


後はレベッカもだけど、栄養失調かと思われる。何かもう、可哀想なくらい痩せている。

栄養のある物を食べさせていこう。


それからレベッカとお風呂に入る。入浴の仕方を教えなくちゃね!

レベッカも赤いところがあるから、洗ってあげながら赤いところを触りまくる。


よしよし、君だって小さいのによく弟を守って来たね。

細い身体を優しく洗う。


汚れが落ちたレベッカは普通に可愛い女の子になった。

くすんでいた赤毛は綺麗になって、艶はないもののワントーン明るくなっている。

前髪が邪魔でよく見えなかった瞳は綺麗な緑色だ。


そういえばカーターも赤毛だった。

閉じている目を開いたらお姉ちゃんと同じ緑色なんだろうか?

ふたりとも、もうちょっとふっくらしたら、もっと可愛くなるだろう♪


私は可愛い女の子が好きなのだ♪

アイドルも、○ャニーズの男の子より○○坂系の女の子グループが好きだった。 

ふふふ。可愛く着飾ってあげよう♪


じゃなかった!

レベッカたちにはきちんと働いてもらうのだ。自立していると自信を持って生きてほしい。




家に連れてきて、ゆっくりと赤いところを癒していく。

三日もすればほぼ健康になった。元気になったなら、まずは基本的な生活習慣を教える。


朝起きて夜眠る。一日三食栄養のある物を食べる。当たり前だけど、規則正しい生活は健康に繋がると思うんだ。

たまには怠けてもいいけどね!


本当は子供だから運動とか勉強とかさせたいところなんだけど、世界が違うから自分の力で生きるために仕事をしてもらわなくちゃならない。

生活習慣の次は仕事を教える。

私たちは旅を続けるからこの家の管理をしてもらうのが仕事だ。


まずは家事から。姉弟ふたりの住み込みなので自分で料理をしなくてはご飯が食べられない。炊事と買い物の仕方を教える。

後は洗濯も自分たちでしなくちゃならない。毎日の入浴と、毎日洗濯した清潔な服を着る事を義務づける。


それからこれは本当の仕事になるけれど、掃除だ。清潔好きな日本人の(私ね)満足するレベルを教え込む。使ってない部屋も定期的に掃除するように教える。

庭は…、私も雑草抜きとか枯れた花を片づけるくらいしかよくわからない。剪定とかできないしね。この家を管理してくれてた人に聞いてみよう。


そんな感じで、一緒に暮らしながら一通りできるようになるまで教えていたら三週間ほどたっていた。


レベッカは頑張り屋さんで努力を惜しまず、素直だし覚えもいいので任せても大丈夫かなと思えるくらいにはなったよ。


カーターはこっそり癒して元気になったけど、体力がないからまずは体力作りから始めた。

スキルで体力が増強できるかわからないけど、そういうのってやっぱり自力で身につけた方がいいと思う。

なので最初のミッションは、自分の事は自分でできるようになってもらう事にした。


ふたりとも栄養が足りてなくて幼く見えていたけど、レベッカは十二歳、カーターは十歳だって。

三週間たっぷり眠ってしっかりご飯を食べたから、見た目も中身も(しっかり癒したからね!)健康そうになってきたよ!




レベッカとカーターの心配もなくなったし、そろそろ旅立とうかと思う。

ロートゥスにやってきて、ひと月がたとうとしていた。




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