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8.5




カプシーまで転移して、そのまま大国へ向かって旅立つ。

もう傭兵をするつもりはないから、戦のない大国でランと穏やかに暮らすのも悪くない。

そんな暮らしをした事がなかったから知っていくのが楽しみだ。


旅はゆっくりと進む。

今までも戦場から戦場へと渡り歩いてはいたが、こんな風に穏やかに歩いた事はなかった。意識して景色を見ようと思った事もなかった事にも気づく。

ランといると知らなかった事に気づかされ、たくさんの事を知っていく。


惚れた女に想われ、手を伸ばせば届く距離で共に過ごす。

疑わないでいられ、警戒しないでいられる。

あの殺伐とした、少し前までの暮らしとは真逆だ…。

このままずっと、ランと一緒にいたいと心から願った。




船の旅も快適で、西の国を発って三日目の朝に大国に着いた。

傭兵時代には色々な国を渡り歩いてきたが、大国に来るのは初めてだ。


なるほど…。これが大国か…。


驚くほど綺麗な町を一日中遊び歩いた。

こんな風に過ごしたのは生まれて初めてだった。

飯は美味いし、店は清潔だし、人々は陽気で、町の表通りならほぼ安全と思われる。

ここならランも安心して暮らしていけるだろう。

それでもまぁ、俺がしっかり周りに目を光らせているがな。




散々遊んで、宿に戻ってきた。

自分一人だったらまず泊まらない宿にしたのは、いいとこのお嬢さんがいるからだ。

後は見栄もある。

ランは、風呂付きの部屋に驚く事もなく、ためらいもなく使う。

やはり個人宅に風呂があるほどの金持ちのお嬢さんだったか。


そんな女を望んでもいいのだろうか…。

俺に怯えない、俺を好いてくれる、そんな女はこの先現れないだろう。

だからという訳じゃないが、ランは俺にとって唯一だ。


俺みたいな男でいいのかという思い、反してずっと一緒にいたいという思い。

そんな事を悩んでいると


「レオン、聞いてほしい事があるんです」


ランから色々吹っ飛ぶような話を聞いた。


「にわかには信じられないが…。でもそれならば、ランの不思議な力も納得できるか…」


半信半疑だが言った言葉通りだ。

 

でもそうか。ランもこの世で一人ぼっちなんだな。

そんな淋しい共通点でも親近感がわく。


そうか…。ランは一人ぼっちなのか。

それなら俺が一緒にいてやろう。

いや、違う。俺が一緒にいてほしいんだ。


惚れた女に求婚する。今まで考えた事もなかった。

受け入れてもらえたら、俺は所帯を持つことになる…、んだろうか?

生涯持つ事がなかっただろう子供も持てるのか?

家族ができるのか?この俺に?


漠然と、そのうちどこか一人で野垂れ死にでもするだろうと思っていたこの身に、縁のなかった幸せというものがチラつく。


頼むラン。俺を選んでくれ。


惚れた女が困惑して泣いているというのに必死だった。


「ラン、元の世界への思いのあるランを心から幸せにするとは言い切れない。が、俺が幸せだとははっきり言える!俺とこの先を共に生きてくれないか」


ランは吹きだしたままの明るい声で承諾してくれた。


心の中に感謝と、感謝と、申し訳なさと、感謝が、吹き荒れた。


あぁ、ラン、約束する。

絶対に大事にする。一生愛すると誓う。




この日を生涯忘れない。

俺は奇跡のような幸せを手に入れた。








読んでくださってありがとうございます。

先行している他サイトでは、一旦これにて完結していました。


いつか蘭ちゃんとレオンさんの続きを書きたいなぁと思っていましたが、星や感想をいただいて、単純な作者はとっても嬉しくなり、いつかじゃなくて今でしょ!とあいなりました。


お話は頭の中にあります。

文字にするのに少し時間をいただけたら幸いです。

よろしかったら、もうしばらく二人の物語にお付き合いくださいませ。

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