第7話 『迷宮管理者』、パーティを組む
翌日――。
三人は、「ハズレダンジョン」に来ている。
今、レンの後ろをついて歩く「二人」は、結局その後も、いくつか好きなものを追加注文して、ようやく満足してくれた。
財布が随分と軽くなったが、この「ハズレダンジョン」を見極めるためだと割り切ることにする。
「それで――? その『設定パネル』ってのは、妄想じゃないんだろうな?」
と、ロジーナがレンに絡む。
「ロジーナさん、いくら、レンさんが妄想グセがあるからと言って、なんでもそう決めつけるのはかわいそうですよ?」
とノエリアが『フォロー』する。
(なんのフォローにもなってない気がするが――。俺がいつ妄想グセを持ったって言うんだよ?)
「まあ、見てろ――。これが『設定パネル』だ――」
レンは最奥の部屋の壁に近づくと、青緑色に光る四角いパネルがその壁に浮かび上がる。
「これから、設定を変更して、その場所に鉱物を生成させる――。いいか? やるぞ……」
最奥の部屋の一角を指さした後、パネルを操作するレン。
どくん、と揺れるダンジョン。
そして――。
「おお!? 本当だ! 鉱物が生成されたぞ!? 見てみろ、ノエリア!」
と、ロジーナが両手を打ってはしゃぐ。
「本当だったんですね――。でも、これっぽっちじゃ……」
と、ノエリアはレンの聞きたくない言葉を続けようとする。
「ああ、そうだ! これっぽっちじゃ誰も潜ってはくれないだろうさ。つまり、探索ダンジョンに登録できたとしても、大して儲からない。『ハズレダンジョン』だってそういっただろ? 笑うなら笑えよ?」
と、レンもやけっぱちになって二人に応じる。
「それで? こんなものを見せるために私たちと『組んだ』んじゃないだろ? 本題を言え――」
と、ロジーナが笑うのをやめて、真剣な目つきに変わった。
「たしかにそうですね。ただ笑われるために『組む』はずないですからね」
と、ノエリアも気構える。
レンは、今日やるべきことを伝えようと、声を少し落とす。
「実は、設定項目に、『魔物生成』というものがあってだな。今は『最低ランク』に設定されている。今選択できるのは、その『最低ランク』と、『1』だけだ。今日はその『1』を試したい――」
「なるほど……。ここに来るまでに出会った魔物は確かにゴブリンだけだったな。『最低ランク』というのは頷ける。それで? 『1』だとなにがでるんだ?」
「ロジーナさん、それがわからないから、私たちを呼んだんですよ、
きっと。レンさんって見かけ通り、ちょっと怖がりさんですから――」
「ああ、そうか! そうだったな! さすがノエリア。よおくわかってるじゃないかぁ」
「ふふふ。こう見えて私、レンさんのことはよく分かるんですよ~」
(ほんとうにこいつらは――)
レンは聞いているだけで、心がかき乱される気分になる。そもそも、パーティを組まないようになったのもこれが原因の一つだったのだが……。
(あいかわらず……ってことかぁ)
そう心の中で溜息をついてなんとか気を静めるレン。
早速だが、手順を説明し始めることにする。
まずは、魔物のレベルの確認。そして、坑内探索の順だ。
レベルの確認は、ここで設定を変更して、一番最後に戦闘になった場所の様子を探る。そして、場合によっては「戦闘」、もしくは、「撤退」する――。
それだけだ。
そして、魔物のレベルが三人でなんとかできるものなら、引き続き入口まで遡って様子を探り、再びここへ戻ってくる。
そんな感じだ。
「――というわけだ。準備はいいか?」
「ああ、いつでもいいぞ」
「どんなのが出るのかなぁ~」
レンは一応二人に確認をしてから、設定パネルを操作した。
ドクン――!
気分的になのか、本当にそうなのか、いつもよりやや強い震動がダンジョンを揺する。
「さて、行くか――。再湧出時間は『最長期』のまま触ってないから、約30分間隔だ。これはもう確認してある。部屋に一番近いところの魔物もそろそろ湧くころだろう――」
この最奥の部屋に入ってからなんだかんだ30分近く経っている。
部屋の入り口に一番近い湧出ポイントは、5メートルほど先だ。
レンは、腰の剣を抜く。
そして、ゆっくりと音を立てないように部屋の入り口から少し戻る。
二人もレンに続いた。
「――――! いた……。あれは……」
「ふむ。ゴブリンソルジャーだな。たしかに魔物のランクは『モブゴブ』よりは少し上だが、雑魚モンスターには変わりない、か」
「なんか、少し拍子抜けですね――。もう少し強いやつが湧くかと身構えて損しましたよ――」
ロジーナが言う『モブゴブ』とは、いわゆる「普通のゴブリン」のことだ。
『最低ランク』の時にはその『モブゴブ』しか湧かなかったのだから、『設定』は確実に反映されている――。
「よし――。じゃあ頼む――」
「へいへい」
「はぁ~い」
レンは二人にそう言い置いて、パネルの操作に戻る。
そして今度は、『最低ランク』に変更する――。
(これで、さっきのゴブリンソルジャーは消えて、『モブゴブ』にかわるはず――)
「おお――!」
「わあ、本当に変わった――!」
二人の歓声が部屋の入口の方から聞こえてきた。どうやら、今回は予想通りの結果だったようだと、レンは胸をなでおろした。
それにしても、『1』で、『モブゴブ』が『ゴブリンソルジャー』って――。いったいどれだけ成長すれば、まともな『探索ダンジョン』レベルに到達するのだろうか。
(あれ――? こんなところにいつの間に――?)
レンは設定パネルの一部が昨日と違うことに、今、気が付いた。
『ダンジョンレベル:G 名称:未定 BP:153』
『魔物生成:最低ランク』
『宝物生成:最低ランク』
『再湧出間隔:最長期』
『鉱物生成:最低ランク』
『ダンジョン成長:停止中』
『その他の項目:現在未稼働』
(一行目の、BPってなんだ――?)




