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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第54話 『迷宮管理者』、『通知』を受け取る


 ぶるっ、と胸のペンダントが震えたのを感じたレンは、それを取り出して、ペンダントの裏を2回トントンと指で叩いた。


 目の前に少し小さめの枠が出現する。

 『通知表示』だ。


(一応、『管理迷宮』内で起きたシステム上のイベントが「すべて」通知されるんだけど、結構細かく設定できるんだよな――)


 通知音の有無、振動の設定、表示するメッセージの種類などが選択できる。

 その上で、通知内容の全てが『文列』でも表示できるようになっている。


(それに、なんと言っても、これが一番便利なんだが……)


 『管理迷宮の現在状況の表示機能』――。

 レンが所有する「すべての管理迷宮」の俯瞰マップを表示できる機能である。

 そしてそれは、設定によって、い(・)ろ(・)い(・)ろ(・)な(・)事(・)柄(・)の『表示/非表示』を切り替え可能だ。


 例えば、魔物の湧出地点や迷宮探索中の冒険者の現在位置、宝物箱の場所や鉱物生成の場所まで、表示することができる。

 

(――なるほど、アンとユリアの二人だな。2回目のエリアボス討伐もクリアしたか……)


 レンは、文列の中に、

“『石牢の洞窟』第2エリアボス【狂獣鬼の将軍(オウガ・ジェネラル)】が討伐されました。”

という文章を見つけて察する。


 ただ、これだけの文章しかないため、二人の被害状況の詳細までは不明だ。

 『管理迷宮現在状況表示機能』を使っても、冒険者の位置はわかっても、その状態までは分からない。


(ふむ。表示が消えては無いから、死んではいないみたいだな。動きも遅くない――。怪我は、あってもたいしたことはなさそうだ――)


 レンはマップの表示からそう察する。



「レン、どうした? なにかあったか?」


 ロジーナが、さっきから歩きながら「パネル」を見つめて操作しているレンの方を振り返ってそう問いかけてくる。


「ん、ああ。『あの二人』が俺の設定したダンジョンに潜ってるんだが、順調に進んでるようだ。今日も目標を達成したようで、引き返し始めている――」


 レンはロジーナの問いにそう返す。


 こちらも、今日の目的を達成してレスラの街へ引き返しているところだが、街に到着するのは同じぐらいになりそうだ。


(戻ったら、少しは褒めてやるか――)


 昨日は少しきついことを言ってしまったと、レンは少し気にしていたのだが、こちらが言いたいことは伝わったようだし、あれはあれでいいタイミングだったのかもしれないとそう思いたい。


 アンのあの素直さとユリアの聡明さがあれば、今朝、街を発つ前に俺が昨日紹介した店に立ち寄っていることだろう。


 【狂獣鬼の将軍(オウガ・ジェネラル)】は、一応「C級」の魔物に分類されるが、戦闘力から言って、「C級冒険者」でもパーティで対応しないと無事では済まないレベルの魔物だ。


 そんな魔物を2番目のフロアボスに設定しておいたのは、二人の地力を見定めるという意味合いもあったのだが――。


(やはり、『神聖女』の呼び名は伊達じゃないってところか――)


 『神聖女』ユリアディリア・レ・サウスリーゼ。


 サウスリーゼ王国の第3王女で、神聖魔法に分類される回復系・加護系魔術式の精度と威力の高さから、そう呼ばれている少女だ。


 帝国の侵略にさらされ、国を捨て、隣国へと逃亡しなければならない状況になってしまったと、勝手にそう解釈しているレンだが、その詳細についてはまだ聞いていない。


 もう一人の『女仕官』アンリエット・ウィル・オストレイの方は、剣術の腕にはそれなりに覚えがあるようだと、レンはそう見ていた。

 剣を腰に差す者同士であれば、だいたい一目見れば相手の力量がわかるものだ。

 それに加えて、ギルマスのレスターから、訓練教官の『赤髪のフローラ(フローラ・カイトス)』もその実力を高く評価していたと聞いている。


 しかし、その剣の拵えは王国兵団のものだった。

 前にレンは武器鍛冶屋のゴーランに聞いたことがあった。


 王国兵団の支給剣は、見栄えはいいが、持ちが悪い。何度か戦闘を重ねれば、刃こぼれがひどくてすぐに切れ味が落ちる――と、そうゴーランは言っていた。


 そもそも、実戦仕様ではないらしいし、たまにいる優秀な王国兵が戦闘の中をいつまでも生き残っているようなら、そいつにこそいい剣を褒美としてくれてやればいいって、そういう仕組みらしい。


(剣と実力が見合ってないとは思っていたんだよな――)


 おおかた、実力を示す機会がないうちにここまで来てしまったというところだろうが、こういうことは、どこの国でもありがちな話なのだろう。


(ゴーランが見繕(みつくろ)ってくれた剣で、あの子ほどの剣術の才があれば、【狂獣鬼の将軍(オウガ・ジェネラル)】程度は問題なくクリアしてくれると思っていたが、見立ては間違ってなかったようだな――)


 レンは、あとは二人の顔をみてから、次の『アドバイス』をどうしようか考えるかとそう思いながら、レスラのあの酒場へと向かうことにした。


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