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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第39話 『女仕官』と『神聖女』、訓練を修了する


 訓練開始から4日――。


 全ての訓練課程を無事終えたアンとユリアの二人は、いつもの通り、レンさまと出会った酒場で食事をとっていた。


 この、『ウィロックの酒場(ウィロックズ・バル)』が二人の活動拠点として定着してきているのは、他に行っている余裕が無いからというのもあるが、レン・シュタルトがいつ現れるかわからないからという理由の方が大きい。


「アン! 見て見て! これが冒険者証なんですね! おもしろい術式が掛かってますわ」


 ユリアさまが満面の笑みで、そうアンに告げる。


 訓練課程を無事に修了した二人は、晴れて、F級冒険者、つまり、『見習い冒険者』となった。

 これ以降、冒険者ギルドが発する、様々な『依頼』を受注して、その報酬を得ることができるようになったわけだ。


 そして、いままさに、支給されたばかりの冒険者証を手にして、ユリアさまが嬉しそうにしている。


(本当に愛らしい方だ――)


 アンはその様子を見ながら、心が癒される思いになる。


「なんでも、この冒険者証に特殊な魔術式を使用することで、その冒険者の情報が見えるんですって――。私にはわからない不思議な術式ですわ」


「情報処理術式――。そういうらしいですよ? 冒険者証に施されているものはそれ程複雑なものではないらしいですが、複雑なものになると、他の術式と連動して様々な事象を生み出させることもできるそうです――」


 アンは、昔聞いた知識を呼び起こして簡単に説明した。


 情報処理術式は主として、情報の記録・閲覧に使用されている魔法術式で、展開すると、空中に半透明の枠が表示され、様々な情報が閲覧、および、記録できるというものだ。

 現代では一部の役場でも使用されているらしいが、発祥は、この『冒険者ギルド協会』である。

 今もなおこの分野の魔術式を研究し続けている『協会』の部署が存在しているらしい――。


「そうなんですね? 魔法にもいろいろあるのですね」

「魔法研究は、古くから行われていますが、太古の昔は『四元素の具現化』をひたすら目指したと言われています。」


「ええ、もちろん知っていますわ。土・風・火・水の四元素のことでしょう?」

「はい。そこから、さらに研究が進み、光と闇の二元素が追加され、六大元素体系という現在の魔法体系が完成したのです」


「私の治癒術式はその『光魔法体系』に分類されるのでしたね?」

「ユリア――の治癒術式は、国家魔術院所蔵の魔法書に記されていたもの、でしたよね? この間、大けがを負った訓練生を治癒した魔術式も、それですか?」


「ええ――。もちろん、私が施した術式を見ていた人たちの中にそれを知る者はいませんでしたが、あとでやってこられた治癒術師の方だけは、少し訝しんでおられた様子でしたね。――そのあと何か言われるかもしれないと覚悟はしていたのですが」

「何もなかった――ですよね。まあ、そこは『冒険者ギルド』なのだというところでしょう。詳細な個人情報など大した価値はないと言ってましたからね」


 良くも悪くも、個人個人の詳細な情報に対し、(公式には)興味を持たない冒険者ギルドらしいと、アンはそう理解していた。


「ですが――。やはり、人前でユリアの治癒術式を使用するのは控えた方がいいでしょうね。使用するのは冒険者階級にある程度沿った魔術式を使うのが無難かと思います」

と、アンはユリアに釘を刺す。


「――わかってますぅ! 初級治癒魔法の『癒し(ヒール)』や、『加護《ブレッシング》』を上手に使ってやっていくことにしますわ、お(・)姉(・)さ(・)ま(・)」

と、ユリアが少し頬を膨らませながら応じてきた。


 せっかく「改名」して、違う生き方を模索し始めているのだ。

 ここで、身分がバレてしまう可能性のあることはできる限り自重した方がいいだろう。


(それに、ユリアさまの魔術式精度なら、初級魔法でも充分な効果が見込めるはずだしな――)


 これからしばらくの間、見習い冒険者からある程度中級ランクの冒険者になるまでは、こういったことにも気を付けていかなければならない。

 あまり過度な活躍は、目立って目を付けられる可能性が高まるからだ



「よお、二人とも。無事訓練課程を修了したみたいだな――?」


 久しぶりに聞く、あの馴れ馴れしい声――。レン・シュタルトの声だ。


 ユリアさまの表情に明らかな光が差すのが見える。


「レンさま!! はい! 見てください! これが私の冒険者証なんですよぉ!」


 そういいながら、椅子を蹴って立ち上がるなり、もう胸の襟元から首にかけている冒険者証を取り出している。


「お、ほう! なつかしいなこの色! 今もこの色で変わってないんだな――」

「色?」


「ああ、冒険者証は階級ごとに色が変わるのさ。ほら――」


 レン殿がそう言って自分の冒険者証を胸元から引っ張り出してユリアに見せる。

 その冒険者証の色は、滑らかな銀色に輝いている。


「わぁ! 綺麗ですわね――」

と、ユリアが感心する。

「ふふん、だろ? これはS級冒険者証さ。別名『白金《プラチナ》プレート』って呼ばれてる」

と、レン殿が答えた。


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