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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第36話 『迷宮管理者』、ランクB迷宮を登録する


「このダンジョンを、探索ダンジョンとして登録したい。手続きをお願いできるか?」


 レンは、ギルドのカウンターでそう告げた。


 今回提供するダンジョンは、数か月前に購入した探索済みダンジョンの一つ、『青藍の迷宮』だ。


 元はギルド所有のものだったが、ギルドが所有迷宮の管理費を調整するために、売りに出されていたものである。


 (『迷宮を管理する』というと、俺の適性『迷宮管理者』と混同しそうだが――。仕方がないんだよな……)


 そもそも、レンの適性『迷宮管理者』というものは世間的には認知されていない。


 ダンジョン経営の前提として、ここに探索に訪れ、冒険者が採取したドロップ品や宝物の買取金の一部が所有者報酬として支給されるわけだが、探索ダンジョンとして認定を受けるためには、数か月ごとの『審査』を受けねばならない決まりがある。


 その『審査』の際、『審査料』というものを登録ギルドに納めなければならないことになっており、これが相当割高な設定になっている。


 『審査』自体は、たいして難しいものではない。


 ダンジョンの設定ランクに応じた『審査官』が派遣され、ダンジョンの最下層まで踏破し、設定ランクに問題がないかを判断するというものだ。


(まあ、その『審査官』もギルドに登録している冒険者への依頼《クエスト》になるわけで――。これが一番金がかかるんだよな――)


 ダンジョンは時として、突発的な変異を見せることも報告されていると(・)い(・)う(・)。

 つまり、場合によっては、設定ランクよりも高い脅威度をもつダンジョンへと変貌する場合もないとは言えないら(・)し(・)い(・)。

 そのため、『審査官』クエストには危険手当が付与され、通常依頼より高めの報酬額が設定されている――ということになっている。


(実際のところは、そんな『突発的変異』を起こした迷宮の話なんて聞いたことがないから、これは、『審査官』クエストを受注してくれる冒険者の確保のための『方便』だろうがな――)


 『審査官』クエストの内容だが、設定ランクの検証が主な任務内容である以上、当然、それをこなす冒険者も当該ダンジョンの設定ランクより高位ランクの冒険者でなければ務まらない。


 つまり、単純な話、『割りが合わない』のだ。


 そりゃそうだろう。

 自分のランクに見合ったダンジョンを探索した方が、実入りもよく、探索内容の詳細情報報告の義務すらないのだから、『審査官』クエストなんか受けるよりはるかに効率がいいのは言うまでもない。


 そのための苦(・)肉(・)の(・)策(・)として、『審査官』クエストには『上乗せ報酬』が付与されているというのが通説だ。


(まあ、ギルマスはそんなこと絶対に認めないだろうけどな――)


 いずれにせよ、この『前提』のおかげで、レンが今回申請する『青藍の迷宮』も、以前より高い設定ランクで、探索ダンジョン登録の申請ができるというわけだ――。


(――くくく、制度の『裏目』を利用させてもらうとしようか)


「――『青藍の迷宮』……ですね。あれ? 設定ランクが、C級からB級に変わってますが、間違いでしょうか?」


 案の定、女性受付官がそこに気が付いてレンに問いかけてくる。


「いや、間違いじゃない。実は、俺が購入したあと確認したところ、C級では対応が難しい魔物が湧くことがわかったんだ。だから、設定ランクを上げて申請することにした。事前審査もB級で審査してくれ――」


 レンは、こともなげにさらりとそう告げる。


「――えっと、それはフロアボスですか?」

「いや、『通常湧き』で、だ。最下層フロアボスは、確実にB級だった。死霊魔術師《リッチ》だしな――」


「リ、『死霊魔術師《リッチ》』ですか!?」

「ああ。『青藍の迷宮』は売りに出されてから数か月放置されていたんだったよな? その間に『突発的変異』が起きたのかもしれないなぁ」


「――『突発的変異』……ですか――」


(ふふん、そ(・)ん(・)な(・)わ(・)け(・)な(・)い(・)とは言えないよなぁ?)


「す、少しお待ちください――」


 そう言って受付官の女性が席を立つ。

 おおかた上司に報告し、その先、ギルマスの元までこの話は届くことだろう――。


 そして――。


「――お待たせいたしました」

と、女性受付官が数分後に戻って来てレンに告げる。

「このまま審査に回してよいと許可が下りましたので、受領いたします。『審査官』の派遣は準備が整い次第行われます。数日ほど、お待ちください。結果は掲示板にて公開いたします――」


(どうやら、レスターが所有者欄にある俺の名前を確認して、OKを出したようだな――)


 レンはそう察したが、表情には出さず、


「ありがとう。よろしく頼む」


とだけ答える。


 

 ――それから3日後。


 掲示板に新規探索ダンジョンが掲示された。


『このたび、レスラ東部近郊にある、『青藍の迷宮』が新たに探索ダンジョンとして認定されました。以下に迷宮の詳細を記します。ご希望の方は、奮って探索くださいますようお願い申し上げます――』


 見出し部分にはそう書かれており、迷宮の詳細欄には、


『青藍の迷宮 設定ランク:B 最下層フロアボス:『死霊魔術師《リッチ》』魔物ランクB』


と記されていた。


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