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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第35話 『迷宮管理者』、進路相談に乗る


(まったく、このお姫様、本当に肝が据わっている――)


 レンは正直感心している。


 なにが、「それなりに覚えがあります」だ。


 『神聖女』である彼女であれば、「それなり」どころの話ではない。恐らくのところ、この世界の冒険者の中でも彼女ほど治癒系魔法に精通しているものはそうそう居ないだろう。


(足りないとすれば、それは、経験と場数だけだろうさ――)


 もちろん、『冒険者』とは、何か一つに特化して能力が秀でていればそれで事足りるというものではない。

 経験と場数――。

 これが、『知識』と『知恵』を生み出し、『思考』へと昇華し、そして、『行動』へとフィードバックする――。


 それの繰り返しによって、『冒険者』は成長してゆく。


(ただ、何か一つ頼れるものがあるのは、無いものよりは有利であることに違いはない)


 レンは、少し考える。

 珍しく、ロジーナもノエリアも黙ってレンの反応を待っているようだ。


「う~ん……。成れなくはない――が、出来れば、しっかりと訓練課程《レクチャー》を受けた方がいいだろうな。冒険者ギルドに話を通しておいてやるから、明日の昼にでも顔を出すといい。まずは、『一から』、だ」


 レンはそう、ユリアに答えてやる。


 もちろん、レンたちが面倒を見てやればいいだけの話なのだが、現状だと、二人とこちらの三人とでは、階級も経験も差がありすぎる。


 それに、こちらの三人はすでに『形が出来てしまっている』。


 何ごともそうなのだが、初心者に大事なのは、自分の型をもつ『達人』を見ることではなく、基本に忠実な『師範』を見ることだ。


 『自分の型』を探すのは、基本が出来てからの話だ。


 ことに、『神聖女』と謳われるほどの実力を持つユリアの場合、それに頼ってしまい、冒険者としての基本を疎かにするのは、却ってよくない結果を招く恐れがある。


 ある一定の才能を持つ者が、大成せずに大怪我をしたり、命を落としたりして脱落してゆく姿を、レンたち『冒険者』はこれまでに何人も見てきている――。


「ユリア、レン殿の言うとおりです。冒険者としてやっていくおつもりでしたら、『一から』始める覚悟が必要でしょう。耐えられますか?」


 アンがユリアに向かってそう告げる。

 言葉がなんだか定まらないのは、素性を変えることを決してから間が無いからだろう。


「もちろんそのつもりですよ、アンお姉さま――。『冒険者の訓練』をしっかり受けて、自分で稼げる自立した女になるのです。私は将来、お家《うち》が欲しいですから」

と、ユリア。


 レンは、


「家が欲しいか――。いい目標だな。冒険者にとって一番大切なのは、もちろん実力だが、その次に大切なのは『意欲』だからな。『野心』とも言うが、常に何か目標を持つことは忘れないでいた方がいいな」


と、発破をかけてやる。


「ありがとうございます、レンさま。私頑張って、早くレンさまのお役に立てるようになりますからね?」


 ユリアはぱあっと表情を明るくして、そう言った。


「俺の役に? なんで、そんなことを?」

「だって、助けられっぱなしじゃ、いつまで経っても何も返せないじゃありませんか?」


「まあ、そうだが……。ふ、そうか、わかったよ。いつかお前が助けてくれる日が来るのを楽しみにしてるよ」

「ええ! 楽しみにしててください!」


 アンの表情を見る限り、どうやら、二人で決めた道を歩む覚悟はすでに出来ているようだと察したレンは、『訓練課程』が修了したらまた会おうと二人に告げたあと、食事を5人で一緒にとって、その日は別れた。


 明日朝、二人のことをギルマスのレスターに話しておいてやろうと心に決める。もちろん、素性を明かすわけにはいかないから、そこは偽名の方で、紹介することを忘れてはならない。


(明日からまたしばらくは、ソロ行動だ。ロジーナとノエリアのスケジュールで抑えられたのは、5日後だからな――)


 まあ、一人《ソロ》は一人《ソロ》でやることもある。

 

 『迷宮管理者』適性を利用して稼ぐこともそろそろ実行していかなければならない。


(まずは、手始めに、中級者向けダンジョンを一つ『作って(プロデュースして)』みるか――)


と、明日以降やることを決め、ベッドに横になるレンだった。



******



 翌日――朝。


 レンは、ギルマスの部屋へとずかずかと入り込むと、レスター・トランセルに声を掛ける――。


「レスター、お願いがあるんだ。いいか?」

「う……、レン――。お前のお願いは、正直、受けたくないんだがな?」


「はあ? どうしてだよ?」

「お前忘れたわけじゃないだろうな? この前のこと――」


「わすれた」

「なんだと!? お前が持ってきた案件で、どれだけ俺が苦労したか――!? って、おい、聞いてるのか!?」


「――新しく冒険者になりたいって女が二人今日の昼に来る。俺の名前を出すように言ってあるから『訓練課程』をしっかりつけてやってくれ。養成費用は俺につけてくれて構わない。名前は、ユリア・ソースとアン・アストレアだ」

「お前、人の話を――」


「いいか? この新人のうちの一人、若い方は、治癒系魔法の才能がとんでもない子だ。上手に育てれば、このギルドにとって大きな利益になるぞ?」

「なに? 本当か!?」


「ああ、間違いない――。まあ、せいぜい、途中で脱落しないようにしっかりと基本から仕込んでやってくれ」

「本当なんだろうな?」


「俺を信じろって――」


 レスターは渋々ながら、この件を請け負ってくれた。


(なんだかんだ言って、レスターは『商売っけ』が強いからな――)


 レンがこんな態度で許されているのも、ソロ部門では、このギルド一番の『稼ぎ頭』であるからこそだ。

 ちなみに、パーティ部門での『稼ぎ頭』はロジーナ=ノエリア組である――。


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