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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第20話 『戦士』、『魔女』と『王』の馴れ初めを語る


 どうするか――。


 そう単刀直入に切り込まれれば、答えないわけにはいかない。


 が、レンはまだ、この『翡翠のペンダント』のその性能を見極められていない。

 そのために、何度もあの『ハズレダンジョン』に潜って検証をしている最中なのだ。


「――帝国を脅かすほどの力なんて……、あるはずないよ――」


 レンはそう答えた。


 どうしてそう思うのか? だってそうだろう?

 レンが受け継ぐ前は、父上がこの『翡翠のペンダント』を所持していた。

 そして、これまでにレンが聞いたこのペンダントの『宝珠』に関する情報を総合すると、父上もこの『宝珠』から認められていたということだろう。


(なのに、帝国の侵略に抗えなかった――)


 父上と兄上、そして多くの民や兵が帝国の侵略の犠牲となってしまったのだから。


「――そうですか……」

と、ガイルは否定も肯定もせず、ただそう呟いた。そして、

「レンさま。どうやら、私には『漆黒の魔女』の考えの一端がわかったような気がします――」

と、続けた。


「本当ですか? お父さま――」

と、ノエリアが返す。


「うむ――」と、ノエリアに頷き返してから、「その前に、その『漆黒の魔女』と、リカルド王とのお話をせねばならないでしょう」と居住まいを正す。


「『漆黒の魔女』とリカルド王は、そもそもは冒険者仲間だったのです――」


 それがガイルの一言目だった。

 そこから、二人の馴れ初めを聞かされる。


 父上は王家の第三王子だった。家督は、長兄が継ぐはずだった。

 その為、父上は、家督継承が済んだ後は王家を外れ、冒険者として一生を送る決意をしていたそうだ。

 そして、その冒険者の人生の伴侶に、『漆黒の魔女』を選びたかったらしい。


「――まあ、残念ながら、リカルドさまはフラれてしまったのですが……」

と、ガイルはそう言った。

「――ですが、どうやら、好意が無いということではなかったようで、二人の関係はその後も壊れることなく続きました」


 ところが、先王の崩御に伴う後継者争いで、第二王子が長兄の第一王子を討ち、また、第二王子も第一王子側の残党に暗殺されるという事態が起き、父上は否応なく玉座に就くことに――。


「その後すぐのことです――。『漆黒の魔女』がリカルドさまのもとを訪れ、その『翡翠のペンダント』を手渡されたのは」


 ガイルはそもそもは父上が『漆黒の魔女』に預けていたものだと聞かされたらしい。

 

「その後、二人の王子を死に追いやった『政争』の火種となった者たちを炙り出し、全ての処分を終えたあと、リカルド王のフォルシュタート王国再建が始まったのです」


 父上はその後、国内のまだ未発見だった『迷宮』を開拓し始めたらしい。

 そして、その『新興迷宮』に自ら率先して攻略に当たり、次々と迷宮攻略をこなしていったのだという。


「もちろん、様々な凶暴な魔物との戦闘もありましたが、リカルドさまと『漆黒の魔女』、そして、不肖私ガイルともう一人の従者の4人でこれらを突破し、ことごとく迷宮の最奥へと到達して行ったのです――」


 そして、その迷宮の最奥で、父上は奇妙なパネルを操作していたのだという。

 その後、不思議なことに、迷宮に現れる魔物は『ゴブリン』だけになり、鉱物や野菜や野草などが潤沢に採集できる『迷宮』へと変わったらしい――。


 フォルシュタート王国は、この『新興迷宮』を領民たちに解放し、そこからの潤沢な資源を、領民の生活に還元することで、どんどん豊かになっていった。


「『迷宮』を解放――? 領民に、か? 冒険者じゃなくて?」

と、レンは少し驚いて問いかけてしまった。


「はい。冒険者ギルドへ『探索ダンジョン』登録はせず、領民たちが各々で武器を持って『迷宮』へ自由に出入りできるようにしたのです。『迷宮』からは様々な生活に必要な鉱物や、野菜や薬草、そしてごく稀にですが、新しい作物の『種』などが採取されました」

と、ガイルが応える。


「私も子供の頃からよく潜ったなあ! 出てくる魔物は『ゴブリン』だけだったから、私にはちょうどいい遊び場だったしな!」

と、笑うのはロジーナだ。


 いやいや、『ゴブリン』にしたって、大人がそれなりの訓練をしなければ、脅威には違いないのだぞ? それを子供の頃からなんて、やはりロジーナは一種の『バケモノ』だったかと改めて思い知る。


「――子供は入ってはいかんと、きつく言い渡しておったのですが、こいつだけは、大人の目を盗んでは『迷宮』に突入しておったものです。それで私が見かねて、正式に仕官させたってわけです……」

と、ガイルは申し訳なさそうに頭を掻く。


 確かロジーナが仕官したのは10歳だったとか聞いたことがあったなと、レンは思い出す。

 10歳で大人と一緒に訓練に励んでいたと聞いた時にもかなり驚いたものだが、そういういきさつがあったとは、今、初めて聞いた。


「――すまん。話しの腰を折ってしまったようだ。続けてくれ」

と、レンは先を促す。


 ガイルは、「はい」と応えて、

「しかし、これが私が知るほぼすべてのことです――。これから話すことはあくまでも私の推測ですから、そのようにご理解ください」

と前置きしておいてから、続ける。

「今にして思えばですが、『迷宮』を探索し最奥のあのパネルまで到達することに何か意味があったのではないかと、そう思うのです。どの『迷宮』も、最奥に到達したあとに変化が訪れましたから。そして、その時なにやらパネルの前で「お二人」が楽しげに会話されているのを何度も目にしましたので――」


 そこまでが、ガイルの話の全てだった。


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