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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第17話 『迷宮管理者』、「神啓」を受ける


 冒険者とは――。


 それは、もとは「職業」ではなく、いわゆる「忌み名」だった。


 ただ魔物や人を殺せる「力」に頼って、戦場を駆け、傭兵や暗殺者などとして「殺し」を生業とするもの。

 人々は、そういう者たちをひとまとめにして、「冒険者」と称し、やんわりと遠ざけたのだ。


 もちろん、かれらも「悪人」ばかりというわけではない。


 中には人助けを信条として、周囲の者たちの手伝いや、脅威となった魔物の討伐などを行う者もいた。

 そんななか、徐々に「まとまり」をもつものたちも現れ、「冒険者ギルド」の元が形作られていくことになる――。


 そこに大きな転機が訪れた。


 『迷宮』の出現――である。


 いつのことかは定かではない。少なくとも、「冒険者ギルド」が現在のような「組織」に成長するよりずっと昔の話だという。


 『迷宮』は、世界中に突如として現れるようになった。

 洞窟、遺跡、塔――。

 形状は種々に富んでいるが、総じて同じ特徴がある。


 魔物が基本的に永久に復活し枯渇しない。

 宝箱が出現する。

 貴重な鉱物が枯渇せずに生成され続ける。


 「冒険者」たちは一攫千金を狙ってこぞってこの『迷宮』へと足を踏み入れた。

 多くの「冒険者」が命を落とす反面、非常に貴重な宝物を手に入れたり、大金を手にした者もいるという噂が拡がっていった。


 そんななか、一人の商人が「新事業」を立ち上げた――これが『冒険者ギルド』の始まりだった……。



「――で、その商人、アウレリウス・ベッケンバウアが集めた4人の超絶魔術師が『魔女』と呼ばれる者たちだ」

と、ロジーナが言った。


「らしいな――。ただ、『漆黒の魔女』だけは途中で離脱したんだったっけ?」

と、レン。


「4人はエリム族という希少な種族で、今はもう表立った活動はしていないということですが、その実力はいまだに健在で、『漆黒』以外の3人は人知れず『強力な迷宮の封印』をして回っていると言われています――」

と、ノエリアが応じた。


 『漆黒』以外の3人の魔女とは、『紅蓮の魔女』、『青蓮の魔女』、『翡翠の魔女』の3人のことだ。


「――『漆黒の魔女』マアリ・ド・ジュセルは、元々は『疾風の魔女』と呼ばれていました。当時は「白いローブ」を好んで身に着けていたため、『白雲の魔女』とも呼ばれていたようです」

と、ノエリアが続ける。


「――ああ、だが、いつの日からか、黒い着衣を身に付けるようになり、戦闘スタイルも大きく変わったらしい。そこから彼女は「闇に落ちた魔女」――『漆黒の魔女』と呼ばれるようになったんだったな?」

と、ロジーナが確認する。


「はい。何がきっかけでそうなってしまったのかは、いまだに誰も知りません。時折、冒険者ギルドに顔を出しては、超級依頼をサクッとこなしてまた姿を消すらしいです――」


 なんにしても、正体の良く分からない超絶魔術師と、父上がどうしてつながるのか? それについては、ノエリアはもちろん、ロジーナも知らないと言った。


 レンは、「あの男」に聞くしかないのかと、少し顔を曇らす――。


 しかし、「あの男」は今、一体どこで何をしているのだろうか。


「お父さまなら……」

と、ノエリアが零した。


「ガイル様か――。もしかしたら何か知っているかもしれんな。でも今どこにいるのか――」

と、ロジーナがノエリアに応じる。


「実は、先日手紙が来まして、今は、ジエスリーズ王国にいるとのことです――」

と、ノエリアがさらりと答える。

「――どうです? いきますか?」


 ノエリアが俺とロジーナの顔を交互に見てそう言った。


 ジエスリーズ王国はここレジルト王国レスラからもそう遠くはない。往復で4日ほどだろうか。


 『無名の迷宮』の探索や検証も行わなければならないが、別段、誰かに『納期』を決められているわけでもない。

 それに、『漆黒の魔女』と父王との関係を知っていれば、今後の対応もかなりの程度容易くなるだろう。敵にしろ味方にしろ――だ。


 しかしながら、レンにはジエスリーズ王国まで行くために越えなければならない大きな障害があった。


 旅費――である。


「――悪いが、俺は行けない。『先立つもの』が今はないんだ――。行くとしたらもう少し先に――」


「なんだそんな事か――。それなら気にするな。私が何とかしてやる」

と、レンが断ろうとしたのに被せてロジーナが言った。


「さっすが、ロジーナさん! 頼りになりますね!」

と、ノエリアも身を乗り出している。


 これはもう二人ともジエスリーズ行きを確実に決定している流れだ――。


「かかか、なんのなんの。それより、ノエリア、ジエスリーズ王国と言えば……」

「はい! それです!」

「なら、早速明日、出発だな!」

「ええ! まだ間に合うはずです!」


 ん? 二人は何か別の目的物の話をしていないか――?


「たしか、あれは、昨日から始まってたんだよな?」

と、ロジーナ。

「はい! なので、明後日の夕方までに到着すれば、まだ間に合う計算です!」

と、ノエリアが応じる。


「これは、いいタイミングだったな? レン、これはまさしく『神啓』だぞ?」

「本当ですね! 今ジエスリーズでやっているお祭りは、太陽神テスへの感謝祭ですからね」


 ああ、なるほど……と、レンはようやく腑に落ちた。


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