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ハズレダンジョンから始まる祖国再興――亡国王子は『迷宮管理者』を継承する。  作者: 永礼経


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第11話 『迷宮管理者』、罠にかかる?


 石柱の間を縫うように、ほぼ対角の穴へと真っ直ぐに進む。


 さっきの『岬』から見下ろした限り、ここは大きな「部屋」で、分岐などはなさそうだった。


(「部屋」――? そういえば……) 


 レンはあることをふと思い出す。


 上の3層はそれぞれの分岐の先に「部屋」があり、そこには、ランダムだが、宝箱が生成された。

 もしかしたらこの「部屋」にもあるかもしれない。


 そう思った瞬間のことだった。

 レンの前を歩くロジーナが、ぴたりと歩みを止める。


「なあ、レン。あそこに見えるのは何だ? まさか――」

と、ロジーナが左手を真っ直ぐに伸ばした先を指さしながら、半分だけ振り返ってレンに告げる。


 レンも、ロジーナの指さす方へと視線を投げた。


「ああ、宝箱だ――。やっぱり、ここは「部屋」だったんだ……」


 レンはロジーナの指の先に宝箱が見えていることを確認して、そう言った。


「「部屋」って、どういうことだ?」とロジーナ。


「ああ。実は、このダンジョンのここまでの法則の一つに、宝箱は「部屋」にしか生成されないってのがあってな。しかも、生成はランダムなんだ。生成されるときとされない時がある――」

「ほう、ってことは、『アタリ』だな? もちろん開けるよな?」


「――そうだな。中身はおおよそ予想は付くけどな」

「金貨1枚――だな?」


 ロジーナはレンの話を思い出して皮肉混じりにそう言った。


「――ま、試しに開けて見ようぜ。階層も下がったわけだし、変わることもあるかもだろ?」

とロジーナが続ける。


 たしかに――。

 世界中に存在するダンジョンの内部構成は様々だ。

 その中には、階層を下るごとに魔物の脅威度が増し、宝物やドロップ品の価値も上がるものもある。


 ロジーナは迷わず方向を変えて、宝箱へ向かってゆく。ふたりもあとにつづいた。

 

 石柱の間に隠れるように「配置された」宝箱は、ただ闇雲にこの部屋の出口を目指していただけでは見つけられなかったかもしれない。

 なるほど、ロジーナが前衛を買って出た理由が今ようやく理解できた。

 彼女のような、「鼻の利く」ものが先頭であればこそ、見逃さなかったと言っていいだろう。


 ロジーナが宝箱に気が付いたのが、偶然なのかどうかは彼女にしかわからない。が、「結果的に」彼女が先頭で正解だったということだ。


「――宝箱だな。開けるぞ?」


 言うなり、ロジーナが箱に手を掛けて蓋を引き上げた。


「――――。おいおい、なんだよ、期待させておいて……」

と、ロジーナが明らかに落胆した声を出す。


「やっぱり――な。金貨1枚だ」


 レンは宝箱の中を覗き込むと、そう呟いた。もちろん、その他に「銀玉1個」がふわりと空中に浮いて破裂するが、それが見えているのはレンだけなので、黙っている。


「え~。本当に他に何も入ってないんですかぁ?」

と、レンの後ろからノエリアも不満気な声をあげる。


「空っぽだな。金貨一枚だけだ」

と、ロジーナ。


「――まあ、想定通りってことだ。これはこれで、『収穫』はある。設定項目の宝物生成「最低ランク」はこれまでのところ、階層に左右されないってことだな」


 「「最低ランク」以外に選べないんですかぁ?」と頬を膨らますノエリアだったが、それを言い終わるか終らないうちに表情を硬くする。


「――ロジーナさん、レンさん、来ましたよ……」


 ノエリアが身を少し低くして、そう告げた。


「ああ、だが、やっぱり、『ゴブリン』だな――」

と、応じるロジーナ。

「ああ、それも変わらないが、スカウトとソルジャーが数体――。もしかして、『罠《トラップ》』だったか――?」

とレンが返す。


 宝箱に罠が設置してあるようには見えなかったし、ロジーナも簡単に開いて見せた。


「――まあ、言っても仕方がないだろ? せいぜい足元をすくわれないよう、気を引き締めて行くぞ? 互いに背を合わせて、自分の前のやつだけ各個撃破で行こう――」


 ロジーナがそう提案する。

「もちろんですよ!」と、ノエリア。次いで、

「ああ――」と、レンも応える。


「来るぞ――!」


 言うなりロジーナが剣を薙ぐ。


 スカウトの組み付き攻撃だったのだろうが、そいつはロジーナの身体に触れる前に、すでに「首なし」になって床に転がった。


 これが合図となって、3人に一気にスカウトやソルジャーが襲い掛かってきた。


 3人は互いに背中を寄せあうようにして、自分の目前に飛び出してくるゴブリン・スカウトやらゴブリン・ソルジャーを撃退してゆく。


 そして、各人3体ほどを消滅させたところで襲撃が止まった。


「終わった、か――」

と、レン。

「ああ、そのようだな」

と、ロジーナが返す。


「ドロップ品も……変わりないですね。これじゃあ、ギルドに持ち込んだところで、たかが知れてますよ。このダンジョン、潜るだけ赤字になっちゃう感じですね」

と、とうとうノエリアが指摘する。


 これにはレンも返す言葉がない。

 

 ダンジョンに潜るためにはどんな場合でも不測の事態に備えるものだ。

 つまり、「ある程度の準備」をして探索に入る。

 結果、準備するのに使った支出より、ダンジョン探索で得た収入が下回れば、「赤字」になるというわけだ。


「まあ、「ハズレダンジョン」だしな?」

と、ロジーナが喉を鳴らす。


「何度も言うなよ――。ほら、先を急ぐぞ?」

と、レンはロジーナの背を押した。


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