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SCP-MST-01-J  作者: kinpo


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5/7

第5話【Thaumiel】 史上最悪のデート



アイテム番号:SCP-XXXX-J

(通称:SCP-MST-01-J 本体)


 


オブジェクトクラス


Apollyon / Thaumiel(暫定併記)

※「使えるが、使うたび人類の尊厳が削れる」ため。


 


特別収容プロトコル(緊急対抗策)


SCP-XXXX-J 本体による地球降下(=一方的な再会)を阻止するため、以下の緊急プロトコルが承認された。


 

1.対抗アノマリーの投入

 既知の最強クラス破壊系アノマリーである SCP-███(通称:破壊の魔神)を、地球低軌道上にて SCP-XXXX-J 本体と接触させる。

 本作戦は正式に

 「人類最後のカップリング作戦(プロトコル:ジゴクノサタ)」

 と命名された。


 

2.目的の偽装

 SCP-███には、作戦の真意(=痴話喧嘩による精神疲弊狙い)を秘匿し、

 「地球を脅かす別の異星生命体を破壊せよ」

 という通常業務として指示を与える。


 

3.職員の選抜

 本作戦の指揮・観測には、

 ・恋愛経験が豊富

 ・修羅場耐性あり

 ・元カノ/元カレの長文メッセージを読破した実績あり

 の職員のみを配置する。


 


(※倫理委員会注記:

「これをThaumielと呼ぶのは、言葉の冒涜ではないか」)


 


説明


SCP-XXXX-J 本体は、物理的破壊をほぼ受け付けない一方、

他者の精神構造に重さという形で干渉する能力を持つ。


 


財団はこの特性に着目し、

「より重い存在同士を衝突させれば、相互に疲弊するのではないか」

という極めて雑かつ後戻りできない仮説のもと、

SCP-███(破壊の魔神)をお見合い相手として投入した。


 


結果として、本オブジェクトは

Apollyon(回避不能な脅威)でありながら、Thaumiel(使うと世界が壊れる兵器)

という、前例のない二重分類状態に突入している。


インシデントログ:人類最後のカップリング作戦


発生日時: 2025/11/26 18:00

観測: ██博士、職員観測チーム

接触対象:

SCP-XXXX-J 本体

vs

SCP-███(破壊の魔神)


 


18:04:接近フェーズ


(宇宙空間。恒星光を背に、SCP-███がゆっくりと接近。

その存在だけで、周囲の衛星軌道が歪む。)


 


SCP-███:

(低く、揺るがぬ声)

「貴様が……地球を脅かす存在か。」


「私は破壊。

星を砕き、文明を終わらせ、

存在そのものを否定する者。」


「理由は不要。

対話も不要。

――破壊のみが、私の言語だ。」


 


(観測員注記:

SCP-███はこの時点で、

即時殲滅が可能であると判断していた。)


 


SCP-XXXX-J 本体、わずかに軌道を傾ける。



18:05:初回応答


 SCP-XXXX-J 本体:

「……へぇ。」


「最初の一言がそれ?

自己紹介が破壊ですって、

正直、会話する気ない人のテンプレだよね。」


 


SCP-███の周囲で、重力波が跳ねる。


 


SCP-███:

「貴様……恐怖を感じていないのか?」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「うん。

だってそれ、

怖がってほしいって言ってるのと同じだもん。」


「ねぇ、

そうやって強がってないと、

自分の価値保てないタイプでしょ?」


 


(※SCP-███、沈黙 1.2 秒

この種の沈黙は、極めて稀)


 


18:08:価値観の衝突


 


SCP-███:

「私は数多の存在を終わらせてきた。

星々は私を恐れ、

文明は私を神話として記録する。」


「それが、私の存在証明だ。」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「……で?」


「壊した後、

誰か残るの?」


 


SCP-███:

「……何?」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「全部壊して、

拍手もなくて、

すごいねって言ってくれる相手もいなくて。」


「それで、満足?」


 


(SCP-███、身体表層の破壊エネルギー出力が低下)


 


18:12:核心への踏み込み


 


SCP-XXXX-J 本体:

「あなたさ、

最強でいる限り、

誰も本音言ってくれないでしょ。」


「怖いから。

壊されるから。」


「でもね、それ……

孤独だよ。」


 


SCP-███:

(怒気を孕む)

「黙れ。

私は孤独など必要としない。」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「必要ないって言う人ほど、

一番気にしてる。」


 


(観測員ログ:

この時点で SCP-███ の攻撃行動が完全停止)


 


18:18:精神的主導権の逆転


 


SCP-███:

「……貴様は何だ。」


「私を破壊しに来たわけでもない。

従わせたいわけでもない。」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「うん。」


「ただ、

ちゃんと向き合ってほしかっただけ。」


「地球もね、

最初はそうだった。」


 


SCP-███:

「……地球?」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「元カレ。」


 


(※観測員全員、同時に頭を抱える)


 



18:24:決定打(人格否定)


 


SCP-XXXX-J 本体:

「あなたの破壊衝動、

全部自分を見てほしいって叫びだよ。」


「でもね、

壊すだけ壊して、

理解されないって拗ねるの、

一番ダサい。」


 


SCP-███:

(声が震える)

「……私は……

破壊しか……知らない……」


 


SCP-XXXX-J 本体:

「それ、

それしか教わらなかっただけでしょ。」


 


18:30:崩壊


 


SCP-███:

(低下した声)

「……解析不能……」


「この異常性は……

破壊では……対処できない……」


「なぜ私は……

宇宙空間で……

説教を……」


 


SCP-███:

「……もういい……

帰る……」


 


SCP-███、自発的撤退。

軌道反転。


 


結果


SCP-███は敗北していない。

ただし、


「これ以上関わると、自我が削れる」


と判断し、

史上初めて

精神的自衛のための撤退を選択した。

SCP-XXXX-J 本体:

補遺 5-A:作戦後の状況


記録日時: 2025/11/26 19:00


 


SCP-XXXX-J 本体は、魔神を退けたにもかかわらず、

地球への降下を継続。


 


SCP-XXXX-J 本体:

「はー……最悪。

変な男に絡まれた。

ねぇ地球、あなたはもっと優しかったよね?

……慰めて?」


 


██博士:

「この異常性は、

重い女性耐性のない男性アノマリーには有効だが、

地球への脅威は一切減っていない!!」


 


佐藤研究員:

「これ以上、宇宙空間で痴話喧嘩に投入できるSCPは存在しない。

人類は、

感情という最終兵器を前に、すべての切り札を使い切った。」


 



結びの言葉


本オブジェクトは、

物理的破壊力を

精神的な面倒くささで無効化するという、

財団の論理と尊厳を同時に破壊する

史上最悪の愛の抑止力である。

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