334話 ガリオでも無理。
334話 ガリオでも無理。
……別に何もしなくてもよかった。
この程度の魔法、デスにとっては、ほとんど『粉雪』みたいなもの。
体に触れたらすぐに溶けてしまう……その程度のものであって、障害にはなりえない。
実際、魔法手は、デスの身体に触れると同時に、破裂したみたいに霧散してしまう。
「ぐっ!」
フチアの地縛掌は、格上相手にも使えるように特殊なカスタムを施した魔法。
相手が遥か格上のラーズやカソルンでも通じるように……もっといえば、相手がガリオであっても、多少は通るように、必死になって磨いてきた魔法。
そんな自慢の魔法を、サクっと弾かれて、普通にショックを受ける。
が、そんな心の動きは、おくびにも出さず、
「うぉおっ!!」
磨き上げた武を叩き込む。
フチアが磨いてきたのは魔法だけじゃない。
魔法も武も、丹念に磨き上げてきた。
才能にあぐらをかくことなく、地道に、ひたむきに、たゆむことなく、
必死になって磨き上げてきた力……
それを、デスは、
「本当に悪くない。けど……結局のところ数値が足りない」
サクっと処理してしまう。
『特に際立った武』をもちいるワケではなく、
ただの腕力……卓越した肉体強度だけで、
簡単に、フチアを薙ぎ払ってしまう。
「くぁああっ!」
『ハロやラスぐらいが相手なら無双できるフチア』だが、
デスの前では赤子同然。
「ぐっ……」
吹っ飛ばされたが、なんとか体勢を立て直し、
キっと、強い目で、デスをにらみつけるフチア。
この短いやりとりで、フチアは理解した。
(か、勝てない……私では……どうあがいても……)
そして、その理解は届く。
もっと先の真理へ。
(これほどの強さ……ガリオ様でも……処理できるとは思えない……)
★
城塞都市ガリオがデスの強襲を受けたのと、まったく同じタイミングで、
アープットの街は、邪教団ゼノの襲撃を受けていた。
それも、今度のゼノの戦力は『カドヒト』+『大幹部4人(ピリカ、スギナ、カザム、ゼミル)』+『キッパルス(ゼノのペットのドラゴン)』という万全の体勢。
とんでもない極悪なメンツに襲われたアープットの街……というか、ランディアの豪邸は、一瞬で地獄絵図になった。
しかも、今回は、相手の戦力が万全なだけではなく、
カドヒトによって、『倉庫にしまってあったランディア産のマジックアイテム』がすべて奪われている。
ランディア側の戦力はガタ落ちした状態。
その上で、ゼノは最高位戦力をそろえてきた。
ハッキリ言って、勝ち目は皆無。
ランディアはバカではないので『この戦いでは絶対に勝てない』……と、最初から正しく理解できていた。
しかし、センエースが、
「大丈夫だ! 俺が最後まで指揮してやる! ついてこい!」
と、勇気を叫ぶので、
仕方なく、その背中について、一緒に戦っている。
……というのが現状。
状況を簡単に説明すると、
センエースはスギナと戦っていて、
ランディアは、カドヒトと戦っていて、
ピリカとカザムが、親衛隊『A隊』をボコボコにしていて、
ゼミルとキッパルスが、親衛隊『B隊』をボコボコにしている。
センエースとスギナは、いい感じに闘っているが、ランディアはカドヒトに遊ばれていて、親衛隊のB隊・A隊は、現時点で、すでに壊滅状態。
戦況はランディアにとって最悪と言っていい。
センエースがいるから、まだギリギリ闘いになっているが、
もしセンエースがいなかったら、だいぶ前に闘いは終わっていた。
……現時点で、ランディアは、正直、ほぼ完全に諦めているのだが、
しかし、センエースが諦めていないので、
心の奥のどこかでは『もしかしたらまた奇跡が起きるかもしれない』と思っている。
『可能性』があれば、それがどれだけ儚く小さくとも、人間は、最後まで抗えるもの。




