320話 ハッピーかい?
320話 ハッピーかい?
「まあ、そうなんですけどねぇ……ただ、こういう護衛ってチーム戦みたいなもんじゃないですか。『何も知らないところで勝手なことをするやつ』とかいたら、隊を組んでいるそちらさんとしては普通に困るでしょう? だから、一応、最低限は、連携をとっておくべきかなぁと思いまして。……正式に遊撃を命じられたら、そちらの邪魔をしないよう、いい感じに立ち回りつつ、最低限の報告とかもしますけど……どうします?」
「……いいだろう。カラルームの街を守り切った貴様の手腕を信用してやる。貴様は貴様で自由に動け。そして、何か怪しい点や不明な点が見つかったら報告しろ」
「あいあいさー」
かるい返事をしてから、センは、とことこと、周囲の散策を開始する。
無意味に草をむしったり、
番犬をなでたり、
あくびをしたり、
たまに、近くにいる親衛隊メンバーに世間話をもちかけたり、
そんなことをしている間に、あっという間に夜がきた。
(そろそろ……かな)
コキコキっと首を鳴らしつつ、
センは周囲に視線を配る。
すると、まさに、ちょうど、そのタイミングで、
次元に亀裂が入った。
ギシギシっと、空間を裂くような音と共に出来た亀裂……
その向こうから、
「……よう、センエース。ハッピーかい」
這い出てきた男、
邪教団ゼノのリーダー、カドヒト・イッツガイは、
センを見ながら、そんな言葉を口にした。
「よう、カドヒト。ハッピーかい?」
サクっと言葉を交わし合ったところで、
周囲の親衛隊メンバーが、
「ゼノが……カドヒトが出たぞぉおおおおおお!!」
「集まれぇええ! 集まれぇえええ!」
「隊長、こっちです!!」
と、わーわー騒ぎだした。
その間に、
次元の亀裂から、もう一人……女が出てきた。
その女――『スギナ』の顔をみるやいなや、
親衛隊の面々は、
「出たぁああ!」
「ゼノの女魔人だぁあああ!」
「今日はカドヒトと二人できやがったぁ!」
ぎゃーぎゃー喚きつつも、
親衛隊の面々は隊列を組んで、
「二手に分かれるぞ! A隊は私についてこい! カドヒトを迎え撃つ! B隊は女魔人を抑え込め! かかれぇえええ!」
隊長の号令で親衛隊の面々は、
いっせいに、カドヒト&スギナに襲い掛かる。
カドヒトは、襲い掛かってくる親衛隊の攻撃を優雅にかわしつつ、
スギナに、
「じゃあ、こいつらの相手、よろしく」
「了解、盟主!!」
簡易に言葉を交わし合うと、
カドヒトは、ランディアのもとへとむかい、
スギナは、親衛隊たちのヘイトと向き合う。
ランディアのもとに向かおうとするカドヒトを止めようとする、『隊長率いるA隊』に向かって、スギナは特攻をぶちかます。
「盟主の邪魔はさせない! あんたらの遊び相手はあたしがやってやるよ! あははははははははははははははは!!」
狂ったように笑いながら、
親衛隊の面々を、ボコボコにしていくスギナ。
まるで、性格の悪い猫が、ネズミの群れを蹂躙するよう。
殺さないように、繊細な手加減をしつつ、
親衛隊の面々をぐちゃぐちゃにしていくスギナ。
「ぐぅう! やはり、この女魔人、強いぃ!!」
手傷を負った隊長が、そう叫びながら、
「誰か! ランディア様のもとに護衛を送れ! ゼノのリーダー・カドヒトが向かってしまった!!」
ランディアの護衛を命じるが、しかし、誰もむかうことはできない。
この場にいる全員、スギナに睨まれているから。
すきをうかがって、ランディアのもとに向かおうとしても、背中から、爪で切り刻まれる。
どうしたらいいんだ……
と、悩む隊長の視界で、センエースが準備運動しているのが見えた。
「クロッカ様の犬よ! 頼む! ランディア様を!」
「おっけー、がんばるっ」
そう言いながら、ランディアのもとへ向かうそぶりをみせるセン。




