318話 ヒステリック。
318話 ヒステリック。
「……んー、まあ、その評価で間違いはないけどねぇ。ただ、有能なのを鼻にかけたりはしていないぜ。多少有能な自覚はあるが、だからって調子にのったりはしていないって自負がある。俺はあくまでも、頭がおかしくて、真剣にイカれているだけだ。それ以下になることはあっても、それ以上になることはない」
「……多少話してみるだけでも、お前がいかに狂っているか分かるな……」
ハァとため息交じりにそう言ってから、
「ついてこい。貴様がきたら、ランディア様のもとに連れていくように命じられている」
★
門番の案内で、この街で最もデカい豪邸に案内されるセン。
広い庭には、放し飼いの番犬が数匹……そして、ギラついた目をした80人近い番兵。
「この家の庭……めちゃくちゃ、番兵いるな……」
「全員、ランディア様の親衛隊だ。普段は、5~6人なんだが……今は邪教団ゼノに狙われている緊急事態だから、常時、厳戒態勢ということらしい」
「うわあ、大変だぁ」
★
家の中に入ると、老執事がランディアのもとまで案内してくれた。
廊下を歩いている途中で、センは老執事に、
「この家、最近、ゼノの襲撃を受けたみたいですけど、あなたも、その時、ここにいたんですか?」
と、世間話を投げかけた……が、
老執事は、センに対して完全無視を決め込んだ。
一般人の『魔人に対する反応』は様々だが、
中には、この老執事のように『完全無視を決め込むタイプ』も稀によくいる。
『ゴキブリを叩き潰す勢いで乱暴に扱う』か『無視する』か『普通にちょっと小バカにする』か……
一般人の魔人に対する態度というのは、だいたいは、この三つの内のどれか。
一言も会話がないまま、
老執事の案内で、
ランディアの執務室へと通されたセン。
ノックをして、中に入ると、
「……あんたがクロッカ様の犬? ……なんてみすぼらしい……」
30後半ぐらいの着飾った女――『十七眷属のランディア』が、
センに対し、ゴミを見る目で、そう言った。
……センはドア付近で直立したまま、
「邪教団ゼノの襲撃を受けたと聞きましたけど……お元気そうですね。ケガをしている様子もありませんし」
と、そう発言すると、
ランディアは、ギリっと音がするほど、顔に怒りマークを複数浮かべて、
「あたしの許しなく……勝手にしゃべるなぁあああああ!!」
と、そう叫びながら、灰皿を投げつけてきた。
別に避けようと思えば避けられたが、センはあえて、その投擲を、額で受け止める。
ガチィイ!
と、イカつい音がして、センの頭から血が流れる。
センは、床に落ちた灰皿を拾いながら、
(……このタイプか。思った通りにいかないとヒスるタイプ。……エトマスと同じかな。権力をもった女って、こうなることが多いよな。もちろん、全員が全員じゃないが。……フチアは、まあまあ理知的だったな)
などと、心の中でつぶやきながら、
センは顔をあげて、にっこりと微笑み、
「もうしわけありませんでした、ランディア様」
と、素直に謝罪の言葉を述べておく。
それに対しランディアは、
「貴様の話はガリオ様から聞いている。『どうしようもないゴミだ』とな!」
(どうしようもないゴミを送りつけられたお前は、じゃあ、ゴミ箱か?)
と、心の中で思ったが、
とりあえず、黙って、ジっと、ランディアの目を見つめてみるセン。
すると、ランディアは、怒りを顔に浮かべ、
「なんだ、その目は……なにか文句でもあるのか」
「いえ、文句は特にありません。ただ、許しなくしゃべるなと命令されましたので、黙っていようかと思っただけで――」
「ふん!」
と、ランディアは、センの発言を遮って、鼻息を鳴らすと、
「いいか、ゴミ……貴様の役目は、近日中に、襲撃をかけてくるであろう邪教団ゼノのメンバーを、生きたまま捕縛することだ。殺すことは許さん。やつの命を奪っていいのは私だけだ。私だけの特権だ。あのくそ生意気な、クソバカ、くそメスガキ魔人め……絶対に許さん……とことん痛めつけ、とことん凌辱してやる……」




