316話 勝敗。
316話 勝敗。
対応があと数秒遅れたら普通に死ぬ……というタイミングで、
それまで、後方から黙って見ていたフチアが、
一気に、リトライスとの距離をつめ、
「大治癒ランク4」
高位の回復魔法で、リトライスの一命をどうにかつなぎとめると、
そのまま、ギラっとラスを睨みつけ、手のひらを向けると、
「地縛掌ランク4!!」
魔法を使われた瞬間、
地面から現れた無数の魔法の手によって、
ラスの身体は拘束されてしまう。
口の中に、魔法の手が入ってきて詠唱もできないし、息もできない。
ラスを無力化すると同時、
そのまま、フチアは、華麗な水面蹴りでハロの足を払うと、
「……地縛掌ランク4」
ラスと同じく、地面から飛び出す無数の魔法手で、ハロをがんじがらめに拘束する。
爆速で、ラス&ハロを制圧してみせたフチアは、
センの方に視線を向けて、
「引き分け……ということで、演習は終わりにしたいんだが、どうかな?」
「いやぁ、こちらの敗北ですよ。流石、お強い」
そう言いながらパチパチと拍手をするセン。
その言葉に、嫌味の要素や嘘偽り等は一切なかった。
実際、フチアは中々の強者。
ガリオの側近をしているだけあって、流石、ハンパじゃない戦闘力。
存在値的には57と、十七眷属の中では中堅どころだが、
総合的な『強さ』でいえば、十七眷属上位の『カソルン』や『オンドリュー』にも匹敵する強者。
センが敗北を認めたと同時、
フチアは、ハロとラスの拘束を解き、
白目をむいて倒れているライバルトに回復魔法をかけていく。
「うっ……ぁ」
フチアの回復魔法で傷をいやし、意識を取り戻したライバルトは、
最初、何が何だか分からず混乱していたが、
周囲を見渡し、状況を飲み込むと、
「お、俺が……落ちこぼれ3組の学生に……負けた? まさか……」
とワナワナ震えながらそうつぶやく。
その隣で、すでに回復しているリトライスが、頭をぼりぼりとかきながら、
「あなたはまだマシな方ですよ、ライバルト。私は、生死の境をさまよいました……フチア様、ありがとうございます。油断して死にかけた愚かな私を……救ってくださって」
そう言って頭を下げるリトライスに、
フチアは、
「あれは流石に想像できないだろう。まさか、3組の生徒が、ランク5の魔法を使うとはな……ランク5は、私でも使えない超上位階級だぞ。本当に驚かされた」
そこで、フチアは、ハロの方にも視線を向けて、
「そっちの君も……素晴らしい一撃だった。ライバルトは『前衛』として、『ガリオ様を守る盾』として、徹底的に肉体を鍛えている屈強な戦士なんだが……まさか、そんなライバルトを、『腹部への拳一発』で気絶させてしまうとは……たいしたものだ」
フチアは、視線をライバルトに向けて、
「なにか言い訳はあるか? あるなら聞くが?」
「……っ……」
ライバルトは、心底悔しそうに奥歯をかみしめて、
「……あれほどの一撃をもっていると知っていれば……不用意に踏み込みませんでした……もう二度と……くらうことはありません」
「戦場で同じことを言うつもりか?」
「……っ」
『死んだら終わり』の鉄火場で、
『知らなかった』とか『次は食らわない』とか、
そんなヌルい言い訳は通じない。
ライバルトは、ギリギリと奥歯をかみしめてから、
「油断しました……申し訳ありません。ガリオ様直属親衛隊の盾役として……お恥ずかしいかぎりです」
「そこまで恥に思う事でもないかもしれないぞ。……彼は、将来、とても高い役職に就くかもしれない。素晴らしい資質と練度……なぜ、これほどの才能を持つ者が3組に割り振られているのか不思議なくらいだ」
フチアがそう言ったところで、
ハロが、片膝をついて、
「センエース先生の教導のたまものであります。先生の指導を受ける前の私は……腕力にものを言わせるだけの愚物でありました」




