315話 切り札。
315話 切り札。
「最終評価を出すのは、まだはやいんじゃないですかねぇ、フチア様」
「……もう、十分、結果は出ていると思うが?」
「この試験……この戦いが始まる前、俺はあいつらに、こう伝えました。……『ガチで勝ちにいけ』と」
「……つまり?」
「ウチの3組と、ガリオ様直属親衛隊との間に、大きな実力差があるのは明白。その状況で、『ガチの勝利』を目指した時……どういう作戦をとるべきか。フチア様はどういう作戦をとるべきだと思います? 格上相手に、勝とうと思った時の作戦……あなたなら、どうします?」
「……格上相手に戦争で勝とうと思った時の手段は……やはり奇襲になるな。正面からぶつかったら、実力差で押しつぶされてしまうから」
「その通り。ジャイアントキリングを狙うなら奇襲しかない。まともにやったら潰されて終わるだけ。敵の予期せぬ攻撃をする必要がある。死角をついて、一瞬の勝機に賭ける」
「……3組の面々は、ウチの隊員と、正面からブツかり合っているが?」
「それこそが作戦。……あなたがた親衛隊は、ちょうど、『ウチの生徒が休憩している時』に顔を出してくれた。『ハロ&ラスが切り札を使っているところ』を見られていたらやばかったけど……あなた方が現れたタイミングは、ちょうど、ぎりぎり、練習が終わったあとだった。おかげで、ウチの3組の生徒の底力を知られずに済んだ。……あなた方は……ラスとハロの切り札を知らない。これがウチのクラスの、たった一つの勝機」
「……切り札ねぇ……」
「ここまでの闘いで、すでに、3組の面々は、ガリオ様直属親衛隊の力構成みたいなものをしっかりと把握した。前衛はライバルト様と、あっちの赤髪の方……あの方、お名前は?」
「……リトライス。その後ろで支援している二人はパラサイカとマネジエア」
「パラサイカ様とマネジエア様は、みたところ、完全な支援タイプ。前衛で闘う力はほとんどない。つまりライバルト様とリトライス様さえ潰してしまえば、一気に押し込むことができる。問題は、そのタイミング。いつ、切り札を使うか。最適の瞬間を見定める判断力……それが、今回の課題」
「……」
そこまで話したところで、
ライバルトが、グンっと前線を押し上げていく。
ここを勝機とみたようで、
ハロを潰そうと一気に畳みかけていく。
それに続く前衛のリトライス。
そんな二人を、優雅に支援している、パラサイカとマネジエア。
明確に勝利を確信して、軽く手を抜いている節もある。
そんな慢心をつくように、
ここまでずっと、全体の状況観察に徹していた『ラス』が、
「いまだ、ハロ!! 右は僕が狙う! 左を任せた!!」
そう叫びながら、一気に前衛へと駆け抜けていく。
ラスの声をトリガーにして、
ハロは、自分の全てを解放するように、
オーラと魔力を拳に高めていく。
そのまま、ハロは、ライバルトを、
ラスは、リトライスに狙いを定めて、
「逆気……閃拳っっっ!!!」
「散弾・豪氷矢ランク5!!!」
それぞれの切り札を、全力で、ぶちこんでいく。
油断から、ハロの拳を、無防備な腹部で受け止めるはめになったライバルトは、
「ぶっぐはぁあああああっっ!!」
大量の血を吐きだして白目をむく。
その隣で、
ラスのランク5散弾魔法をモロにくらったリトライスは、
「うぶへぇええええっ!」
普通に死にかけた。
ランク5の魔法は存在値70クラスの魔法なので、
その全力を至近距離の散弾式でぶちこまれたら、余裕で死にかける。




