312話 課題。
312話 課題。
フチアは、小さくため息をついてから、
「ライバルト……もういい」
「申し訳ございません、フチア様……自分なりに、精一杯やってみたのですが」
「あなたの演技は自然だった。単に、その犬のセンサーが異質なだけ」
そう言いながら、ライバルトを下げさせると、
フチアは、センに一歩近づいて、
「ライバルトは、ガリオ様直属親衛隊の中でナンバーツーの実力者なんだが……貴様が相手だと、まったく歯が立たないようだな。流石、性格はともかく、性能は見事だ」
そう言うと、ライバルトが、フチアの耳元で、ボソっと、
「フチア様……流石に、魔人をそこまで褒めるのは、いかがなものかと……」
ライバルトは、先ほど、演技でブチギレていた。
それは事実だが、普通にエリート志向でプライドが高く魔人を見下している男でもある。
「それに、言い訳したくはありませんが……先ほどの一撃、俺はまったく本気ではありませんでした。あくまでも、そこの魔人の査定にすぎない一撃。そんな一撃を回避したからといって、そこの魔人を高く評価するのも、俺を不当に低く評価するのも……流石に違うかと存じます」
そこで、センはニっと、イタズラな笑顔を浮かべ、
「なかなか、イカすプライドしてんねぇ、君。……いいだろう、じゃあ、もういっそのこと、ガッツリ、ぶつかりあう形で視察するってのはどうだ?」
そんなセンの提案に、フチアが困惑した顔で、
「……どういう意味だ?」
「ちょうど、今、こいつらに、単位用の課題を出そうとしていたところだったんですよ。近場でモンスターでも狩らそうと思っていたんですが……それよりも、あんたらの相手をさせた方がよっぽど面白い……と思いましてね」
その発言に対し、ライバルトが、
静かなトーンで、
「……犬ぅ……あまり、ガリオ様直属親衛隊をナメるなよ。貴様のお遊びに付き合うほどヒマではない。……あまりナメたことばかり言っているようだと、本当に許さんぞ。いい加減、演技ではなく本気で切れてしまいそうだ」
「ただ遠くから見るだけじゃ、視察としてヌルいだろ? そっちの仕事の濃度を上げてやろうって言ってんだ。感謝されこそすれ、キレられる謂れは微塵もねぇな」
バチバチとにらみ合う、センとライバルト。
そんな二人の間に、フチアが割って入り、
「貴様のクラスの生徒と私たちガリオ様直属親衛隊との闘いを課題にするとは……本当に、貴様は、ずっと、頭がおかしいな。そんなにずっと狂っていて、よく平気だな。眩暈がしたりしないのか?」
「たまにクラクラしてますよ。自分のキモさに吐きそうになることも頻繁にありますね。大変でしょう? 可哀そうでしょう? 同情してやってくださいよ」
「……はぁ」
と、フチアは、大きなため息をついてから、
「闘いになるとは思えんが……いいだろう。遊んでやる」
「フチア様! な、なにをおっしゃって――」
困惑しているライバルトに、
フチアは、
「センエースの教導がどのようなものであるのか……それを調べるのが、今回、ガリオ様から与えられた我々の任務。……センエースが言うように、外から眺めるだけではなく、実際に手合わせした方が、より正確に、データが取れるというもの。間違っているか?」
「い、いえ……フチア様に間違いなどありませんが……しかし……わざわざ、犬のお遊びに付き合ってやる必要は――」
そこで、センは、ライバルトに、
「あれ? もしかして、お兄さん、ウチのクラスの生徒が怖いの? うわぁ、ガリオ様直属親衛隊のナンバーツーともあろう御方が、情けないですねぇ! ぷぷー! ざこーい! きもーい! ビビリが許されるのは小学生までだよねー! きゃははは!」




