307話 狂気的な王の器。
307話 狂気的な王の器。
「自慢を許した途端、なかなかの親バカぶりを発揮するじゃねぇか。……ふふ……ラーズ、お前は本当に、あらゆる意味で有能だ。この期に及んでまだ決断できていないライラスとは違い、覚悟を決める速度も相当なもの。すでに、俺につく覚悟を固めて、将来の人事で有利を獲得するため、この時点で、息子の売り込みを開始するとは……流石だぜ。この地獄で、『一般人(龍神族以外)』の頂点に立った男は、やはり面構えが違う」
十七眷属筆頭という地位。
皇帝の父という地位。
一般人の中では、間違いなく最高峰の逸材。
存在値90を超え、『ランク7の召喚魔法』や『ランク6の回復魔法』を操る、超人の中の超人。
「前からそのつもりだったが、今、はっきりと宣言してやる。ラーズ、お前は重用してやるよ。お前はマジで、なかなかの器だ」
そう言ってから、
カドヒトは、ライラスに視線を向けて、
「それに引き換え……お前は本当に微妙だな、ライラス。精神的にも、肉体的にも、悪くないのは分かるんだが……悪くないだけじゃダメなんだよ、今後の政治体制においてはなぁ」
「……」
「……いつまで、てめぇは日和ってんだ。風見鶏を貫いて良い所取りをしようなんて、そんなヌルい生き方が許されるほど、時代は呑気じゃねぇんだよ。決めろ、ライラス。今だ。今、この瞬間に、てめぇの未来を決めろ」
そこで、ラーズが、ライラスに、
「ライラス……もう、ここは――」
と、助言をしそうだったので、
カドヒトは、そこで、怒声をあげて、
「黙ってろ、ラーズ! 俺は、ライラスと話している! でしゃばるな!」
結果的に、『その覇気』を受けたことで、
ライラスの腹が決まった。
今の『カドヒトの怒声』に……自分にはない『王の器』を垣間見たのだ。
(邪教団ゼノのリーダー、カドヒト・イッツガイ……なんの後ろ盾もなく、裸一貫で組織を立ち上げ、たった一人で、龍神族とその眷属たちに立ち向かい続けた豪傑。まだ、ガリオ陣営とクロッカ陣営……どちらが勝つか分からないが……この男の背中になら……ついていきたいと素直に思えた。将来的に、おそらく、クロッカ様と、このカドヒトが、世界を率いていく。二人が婚姻するかどうかは知らんが……同じ方角を見ている二人の王と女王が、世界を導いていくのは確実だ……私に出来ることは……そんな二人を大臣として支える事だと、父も言ってくれている……私の選ぶべき道は……もはやたった一つ)
腹を決めたライラスは、一度、グっと奥歯をかみしめてから、
強い目で、カドヒトを見つめて、
「邪教団ゼノのリーダー、カドヒト・イッツガイよ。……私は覚悟を決めた。時代の変化と共に生きると心に決めた。旧体制と決別し……新しい波と向き合う。私はあなたと……クロッカ様についていく」
その強い決意のこもった発言に対し、
カドヒトは、一度、ニっと微笑んでから、
「いいだろう。よく決意した。では褒美に、世界の真相を教えてやる」
そこで、カドヒトは、スっと、視線を、自分の影に落とした。
すると、カドヒトの影から……ヌっと、一人の男が這い上がってくる。
突如登場した、その男は、ラーズとライラス、それぞれに一瞥をくれてから、
「俺の名前を言ってみろ、ラーズ」
と、名指し指名を受けたラーズは、
戸惑いを、どうにか隠しつつ、
「セン……エース……」
その言葉に、ライラスが目を丸くして、
「センエース……クロッカ様の犬……この者が……? な、なぜ、カドヒトの影から……センエースが……」
そこで、センは、
ソファーにドカっと腰をかけながら、
「カドヒト・イッツガイは、俺の分身だ。自動運用で、ゼノのリーダーをやらせている」
「「なっ?!」」
その発言には、ライラスだけではなく、ラーズも普通に目を丸くして、動揺を声に出してしまった。




