305話 俺はイケメンを見ると、無条件で殺したくなるんだ。
305話 俺はイケメンを見ると、無条件で殺したくなるんだ。
ラーズは、そこで、コホンとセキを一つはさんでから、
「……クロッカ様は、カドヒトを利用して、現体制の力を削いでいくだろう。その裏で着々と、センエース戦闘団の牙を研いでいく。カドヒトも、クロッカ様を利用するつもりだろうから、センエース戦闘団には手を出さない。こうして、ガリオ様陣営とクロッカ様陣営の戦力差は、時間と共に徐々に縮小されていく」
「そして、その差が逆転した時に……私たちも、クロッカ様陣営につく……ということですね」
「そうだ。そこで一つ問題というか懸念がある……」
「懸念……なんでしょう」
「カラルームの街に現れ、十七眷属の一人ヒークルを殺害したアンデッド。デス」
「報告書は読ませていただきました。相当な怪物のようですね。クロッカ様の犬『センエース』ですら、手玉に取られたという」
「デスの殺意がどこに向いているのか……それが懸念点だ。十七眷属や、龍神族に対して憎悪を抱いているのは、報告書を見る限り、明らかだが……その殺意が、もし、かりにクロッカ様にも向いてしまうとなると……問題だ……」
「できれば、クロッカ様だけは例外という扱いにしてもらいたいところですが……そういう話が通じる相手なのか……なんせ、生者を憎むアンデッドですから」
と、二人が、そこまで言葉を交わしたところで、
「……随分と、楽しそうな話をしているじゃないか。俺も混ぜてくれよ、ラーズ爺さん、ライラス坊ちゃん」
声のする方に、
ラーズとライラスは、バっと視線を向けてみた。
すると、声の主は、部屋の壁にもたれかかっていた。
「はじめまして、ライラス。俺はカドヒト・イッツガイ。邪教団ゼノのリーダーを担当している。よろしく、どうぞ。……ラーズは前にも会ったな。相変わらず、顔面偏差値が高いイケオジだな。腹が立つぜ。俺はイケメンを見ると、無条件で殺したくなるんだ」
カドヒトは、そう言いながら、壁から背を離して、
すたすたと優雅に歩き、近くのソファーに寝転がると、
「挨拶してんだから、なんか言おうぜ。シカトはいただけねぇなぁ」
カドヒトにそんなことを言われたライラスは、
冷や汗を浮かべつつも、一度、生唾をゴクっと飲んでから、
自分の心に対して『落ち着け』と強い命令を下しつつ、
「邪教団ゼノのリーダー『カドヒト・イッツガイ』。……お初にお目にかかる。私はカール大帝国の皇帝ライラスだ」
ライラスに続いて、ラーズが、
にこりと柔らかな笑みを浮かべて、
「ひさしぶり……というほど時間は経っていないかな。カドヒト殿。また会えてうれしく思う」
「ラーズ……てめぇ、この前、ウチの大幹部ゼミルが、十七眷属のイルドカを襲撃した際、邪魔してくれやがったな、この野郎」
「運悪く居合わせてしまってね。立場上、放置するわけにもいかなかったのだよ。こちらの立場についても、少しは慮ってくれるとありがたいね。今の私は、所詮、十七眷属の犬。龍神族の意向に歯向かうことは、そうそうできないのだ」
「大変だねぇ。サラリーマンは。あんたの場合は、国家公務員……高級官僚かな。まあ、なんでもいいが……」
と、簡単に枕を置いてから、
「俺もそれなりに忙しくてな。ごちゃごちゃお喋りしているヒマはねぇ。単刀直入に言うぞ。……お前らもご存じの通り、現在、クロッカと、その犬が色々と地盤を固めている。これをサポートする形で、今後は、俺も、動いていくつもりだ。そして、最終的には、ガリオ主導の体制を崩壊させる。……今後、世界は大きく変わっていくだろう」
そこで、一度言葉を区切る。
カドヒトは、強い目で、ラーズとライラスをにらみつけて、
「……で、お前らはどうする? 誰につく? ガリオか? それともクロッカか?」




