304話 互いを利用しあうテロリスト。
304話 互いを利用しあうテロリスト。
「分からないというより、そう遠くない未来で……クロッカ様&センエースの陣営は、とんでもなく膨らむ可能性が高い。少なくとも、『絶対にありえない夢物語ではない』ということ」
「……そう考えると……確かに……ふむ……」
「さらに……」
「え、まだ何かあるのですか?」
「クロッカ様は……邪教団ゼノのリーダー『カドヒト』と……『裏』で繋がっているかもしれない」
またもや飛び出した『トンデモ発言』に、
またもやライラスの目が丸くなる。
ライラスは、冷や汗を浮かべながら、
「ま……まさか。さすがに、それは……ありえないというか……クロッカ様に対して、あまりにも失礼というか、不敬といいますか……」
「もちろん、証拠などはない。ただの予想だ。……正式には『繋がっている』というよりも……利害が一致しているから、暗黙の了解で、お互いを利用しあっている……と言う方が正確かもしれない」
「あ、ああ……なるほど……それは……確かに……あり得る話ですね。実際につながっていることは……流石にないでしょうけど……両者がやりたがっていることは、ある意味で一致している……カドヒトは、現体制に対して嫌がらせを行っていて……クロッカ様は、現体制の戦力低下を望んでいる。クロッカ様はもちろんのこと、ゼノを率いているカドヒトも、おそらくはバカじゃない。自分の野望のために、クロッカ様を利用しようとすることは十分にありえる話……ただ、カドヒトが、仮に、『龍神族の殲滅』を求めていた場合、クロッカ様も危ういのでは?」
「実はな……私は、カドヒトと一度、真剣に話し合ったことがある」
「?! 本当ですか、父上?! 襲われたのですか?! 大丈夫だったのですか?!」
「襲われた……が……話し合いの末、見逃してもらった……といったところだな」
「見逃してもらった……そ、それは、かなり危ない情報ですね。もし、他の十七眷属や龍神族の面々に、その情報が洩れたら……父上の身が危うくなる可能性が……」
「心配ない。誰にもバレることはない。カドヒトは、私が完全に独りでいるところを、あえて狙ってきたからな。最初から、私との密談が目的だったのだろう」
「……」
「話してみて分かったのだが……カドヒトは『差別のない世界』を求めている。クロッカ様も、それに似た思想を抱いているところがみられる」
「差別……魔人と人間の間にある差別のことでしょうか?」
「それ以外もすべて。ありとあらゆる差別だ。私は、カドヒトと、それなりに時間をかけて対話をした。区別と差別の違いについても議論した。……カドヒトは、なかなか合理的な男だったよ。『夢見がちな理想論を振りかざす無知な活動家』などではなく……現実的に、この世界から理不尽な差別、不条理な悪意をなくすにはどうすればいいか……その課題と真剣に向き合っていた」
「……」
「少々、精神的に潔癖すぎるところもあったが……まあ、それは、クロッカ様も同じのように思えた。そして、上に立つ者には……その気概が必要なのではないかとも私は思う」
「精神的に潔癖……過剰なほどに穢れを嫌う気質ですか……確かに、支配者には必要な素養かと存じます。……私にはないものだ……」
「無意味に卑下する必要はない。お前はよくやっている。親バカではなく、フラットにそう評価したい……」
結局のところは親バカ……だけれど、
それだけではない感情も勿論ある。
ライラスは、龍神族の傀儡でしかないが、
しかし、いつも悩みながら、苦しみながら、
自分なりの信念や正義感の落としどころを見つけようともがいていた。




