302話 親子。
302話 親子。
「あくまでも可能性の一つを口にしているに過ぎない。その三人が死なずとも、クロッカ様が革命を果たし、家族を拘束して、むりやり、当主の座につくという可能性もあるだろう」
「ありえません。犬のウワサは聞いておりますが……流石に、それを成せるほどの力を持っているようには思えません。間違いなく、『クロッカ様の犬』――『センエース』は有能でしょうけれど、『父上と同じか、少々上』というのが関の山でしょう? 失礼を承知で言わせていただきますが……それでは何も変えられない」
「違うな……私の『安い目』では、あの犬の正式な判定はできないが……あの犬の底力は……クロッカ様に匹敵……あるいは超越している……可能性がある」
「ば、ばかな……ありえない。クロッカ様の存在値は150なんですよ? 確定で歴史に名を刻む超人。……『妹』という極めて脆弱なお立場ゆえ、権力から遠ざかっておりますが、実力だけでいえば歴史上においても最高峰。そんなクロッカ様を超越……ありえません……ま、まさか、本当にボケられたのですか、父上」
「失礼な息子だ。まだまだシャンとしておるよ」
「……」
「お前の言う通り、クロッカ様が背負っているハンデは大きい。ただ、『妹』であるというマイナス点と、性格がエキセントリックであると言う点……この二つを除けば、クロッカ様は、全てにおいて、確実にパルカ様を超えている。そして、今は、強力な犬のサポートがある。クロッカ様が当主になられる可能性は……ゼロではない」
「噂の犬は……本当に、そこまでなのですか? 信じられないのですが……」
「あの犬は本物だ。私には分かる。まだ、何かを隠している。今、世間に見せている実力は、存在値100ぐらいだが……気配の端々から感じるのだ。クロッカ様に匹敵するほどの覇気を……」
「……父上の眼力を疑いたくはないのですが……しかし、そ、それは、さすがに……」
「あくまでも推測だ。『絶対にそうだ』と言っているわけではない……が、『絶対にありえない』とは思っていない。ゆえに、あの犬が、クロッカ様と同等の力を持っている可能性も視野にいれた上で行動していくべきだ」
「ありえないと思います。ありえないと思いますが……もし、それが事実なら、夢のある話です。ガリオ様やパルカ様が上にいるよりも、クロッカ様が上に立った方が、我々としてはありがたい。クロッカ様は、エキセントリックな奇人を装っておりますが……実際のところは、とても心根の優しい方ですから」
「……ああ、そうだな……」
「しかし、そうなってくると……ガリオ様やパルカ様ではなく、クロッカ様にしっぽをふっておいた方がよいでしょうか? 正直、とても危険な行動ですが……もし、現当主であるガリオ様に『私がガリオ様やパルカ様よりクロッカ様を優先している』とバレたら……大変なことになるでしょう。下手したら不敬罪で殺されますよ」
「ゆえに、今はまだ動くべきではない。……両方に良い顔をしておけ。無意味なギャンブルをする必要はない。両方の顔色や趨勢や動向を注意深く観察し、もし、クロッカ様が明確に優勢になったと分かったその時は……一気に加勢して、現体制を破壊する。それまでは、ジっと構えて、見に徹するのだ」
「……しかし……本当に、クロッカ様が優勢になることなどあるのでしょうか……仮に……仮に、噂の犬が、父上の見立て通りの超人……クロッカ様と同等近く、あるいはそれ以上の怪物だとしても……それだけでは……『数』が……戦力が足りない気がするのですが……」




