父の日メモリアル
五年も前のことだ。息子がプロ野球選手になった。
そして現在では、チームに欠かせない選手になっている。豪快なホームランが売りの選手だ。
先日、「母の日」にも打った。逆転サヨナラ満塁ホームランだ。
そのホームランボールは今、この家にある。「母の日のプレゼント」だ。
で、今日は六月の第三日曜日。「父の日」だ。
父は密かに期待していた。息子は今日の試合、俺のためにホームランを打ってくれるに違いない。
そういうわけで、テレビで野球観戦だ。がんばれー、むすこー。
父のとなりには、母がいる。一緒に野球観戦だ。
すると、いきなり快音が飛び出す。その打球はまっすぐ外野スタンドへ。
しかし、息子ではない。打ったのは、別の選手だ。
とはいえ、味方が先制点。これは良いすべり出しだ。
このあとも味方が得点していく。
大量リードのまま、試合は終盤だ。まだ息子にホームランは出ていない。
父は焦り始めた。息子に打席が回ってくるとしたら、あと一回だろう。
母の日のプレゼントは、ホームランボールだった。それなら、父の日のプレゼントも当然・・・・・・。
最後の打席、あわやホームランかという「ファール」があった。そのあと息子は「四球」を選ぶ。
心の中で悔しがる父。なぜだ、なぜ、今日に限ってホームランが出ない!
その横で、こっそりガッツポーズをする母。これで、「父の日のプレゼント」に「ホームランボール」はなくなった。
で、ゲームセットを迎える。初回から得点を重ねての圧勝だ。
試合が終わって十五分後。父のスマホに、息子から電話がかかってきた。
「今日の試合見た? 初回のホームランを覚えている? あのボールを、打った選手からもらったんだけど」
実家に送ろうか、と聞いてきた。
父は苦い表情で考える。他の選手が打ったホームランボールが、「父の日のプレゼント」か・・・・・・。
その横で、聞き耳を立てていた母。こっそりガッツポーズをする。心の中では、サンバのカーニバルだ。
次回は「春季キャンプ」でのお話です。




